2008年に放送されたドラマ『彼らが生きる世界』の中のヒョンビンのナレーションが視聴者たちに感動を与えた。容姿だけでなく、声まで美しいヒョンビン。そっと寄り添いながら心を休ませてくれる、詩的なヒョンビンのナレーションを紹介する。

“新形式のドラマ”として話題になった、俳優ヒョンビン×女優ソン・ヘギョ主演のドラマ『彼らが生きる世界』(2008)。同作が名品ドラマとして好評受けた理由の中の1つが、他では見られない俳優のナレーションだ。

『彼らが生きる世界』は、放送局を舞台に、正義感が強く人間味あふれるドラマプロデューサーのチョン・ジオ(ヒョンビン)と、新人プロデューサーのチュ・ジュニョン(ソン・へギョ)を中心に繰り広げられる、仕事と友情そして愛をリアルに描いたドラマだ。

ドラマ『彼らが生きる世界』

ドラマ『彼らが生きる世界』(画像出典:KBS)

劇中ジオは、胸の内を直接表現することができず、ナレーションを通じてジュニョンに語りかける。

特に、視聴者の間でヒョンビンの声は”名品ボイス”と言われ、感情移入がしやすいとの声もあがり、”耳で見るドラマ”という愛称がつくほど、ヒョンビンのナレーションはドラマを輝かせて重厚感を与えた。

ここでは、視聴者の心に響く感動のナレーションをいくつか紹介する。

劇中、ヒョンビンのナレーションが話題に

劇中、ヒョンビンのナレーションが話題に(画像出典:KBS、naver drama)

「考えて見れば、僕は純情を強要する韓国ドラマに頭に来たのではなく、ただ一度も純情的でなかった僕が嫌いだった。なぜ、僕は相手が僕を愛するより、僕がもっと相手を愛してることにプライドが傷ついたのだろうか。僕がこうして駆けて来れば良いのに、走って来るあの男をそのまま信じればいいのに、何が怖かったのだろうか。その日、僕は初めて純情を約束した。その男が守れなくても、僕が守ればいい。ただそれだけのことではないのか」(第5話:僕にはあまりにも手に負えない純情)
「母がおっしゃった。生きるということは不意打ちを食らうことだと。人生はそもそも呆れるもので、絶対に僕たちが前もって分かるような前兆はないと。僕だけでなく誰もが不意打ちを食らうことだと。だから全て何でもないことだと。でも、それは60年の人生を生きた母の言葉で、まだ若い僕たちは全てのことが特別なことだ。畜生」(第6話:生きるということ)
「愛する人と別れる理由は様々だ。自分を責める心持ちが問題だったり、運命のいたずらが問題だったり、愛が足りないことが問題だったり、あまりにも愛しすぎたことが問題だったり、性格や価値観の問題とも言うけれど、どんなことも別れにふさわしい理由にはならない。すべて今の自分のように各自の限界であるだけ」(第11話:彼の限界)
「僕はかつて、初めは到底出来そうもないようなことも1度や2度ずっと繰り返せば必ず慣れると信じた。そう考えるだけでも、人生で怖いものは無かった。でも今は絶対に時間が経っても慣れないものがあるということが分かった。昔の恋人の裏切り、何百回、何千回見てもわびしい両親の後ろ姿がそうだ。僕ではない他の男と笑うジュニョンの姿がそうだ。 絶対に慣れることはない。だから、あまりに見慣れないこの瞬間を僕たちはどのように対処しなければならないのだろうか」(第14話:絶対に慣れない幾つかのこと)
「僕は決して人生が甘くないことを前もって知っていた。幸福と不幸、和解と葛藤、願望と懐かしさ、理想と現実、始まりと終わり、そのようなすべての反対語が決して整理されず、結局は一体に複雑に絡まることが人生ということぐらい、僕は本当に前もって知っていた。いや、知っていると勘違いしていた。その瞬間を耐えたが、このくらいなら人生も静かになるだろう。再び同じことは起きないだろう。僕はそんな生半可な期待をしたようだ」(第16話:ドラマのように生きろ)
ナレーションで視聴者を感動させたヒョンビン

ナレーションで視聴者を感動させたヒョンビン(画像出典:KBS、naver drama)

ドラマの中間や後半に流れるヒョンビンのナレーションには、ノ・ヒギョン作家のセリフらしく、極めてリアルで主人公の感情を溶かし出す力を持っている。現代社会で会社に通い、恋愛をして、様々な人間関係の中で生きている人なら、誰でも感じたような感情をジオを通じて淡々と、だが決して軽くない表現で描き出している。

単に、主人公の心を独り言のように語らせる形式ではないナレーションの存在が、名品ドラマとして高評価を導いている点だ。

最後に、このドラマでヒョンビンのラストメッセージを送りながら、この文を締めくくる。

「いくら僕たちが美しいドラマを作るといっても、今生きているこの世界ほど美しいドラマを作ることはできないということ。それでも僕たちは僕たちの同僚たちと諦めずに約束する。 僕が生きる世界のように美しいドラマを作るその日まで」(第16話:ハッピーエンドの力説)



ヒョンビン

韓国の人気俳優ヒョンビン(ハングル 현빈)。1982年9月25日生まれ。

2003年にKBSのテレビドラマ『ボディガード』(2003)でデビュー。

2005年にMBCドラマ『私の名前はキム・サムスン』(2005)で大ブレイク。韓流スターとして、韓国や日本、中国をはじめアジア全域で人気を博している。

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