ドラマ『冬のソナタ』『チャングムの誓い』『天国の階段』‥”第一次韓流ブーム”と呼ばれた2000年~2010年頃は、日本の地上波メディアで多くの韓国ドラマが放送されていた。”復讐、悲劇、すれ違う恋”など、ストーリー展開が予想できるのに、なぜだか心に突き刺さり、涙が止まらなくなる。”ヨン様ブーム”が日本を席巻してから、今年で16年が経ち、当時の主演や脇役、子役たちももちろん近況はそれぞれだろう。そんな当時活躍していたアイドルや俳優にスポットをあてる【韓ドラAgain】! 皆さんの気になっているあの人は、今どうしているのでしょう?
ドラマ『愛の不時着』で凛々しい北朝鮮将校を演じたヒョンビン。
韓国から不時着した財閥女性と恋に落ち、高くそびえた南北の壁というどうにもできない現実を前に、切ないラブストーリーを披露してきた。エリート軍人である彼が、逞しさと優しさで女性を守る姿には多くの女性が心をときめかせ、さらにヒョンビンの優しいまなざしの虜となっている。
ヒョンビンはこれまで、さまざまなキャラクターに扮して多彩なラブストーリーを届けてきた。
年下のイケメン御曹司、やさぐれたワイルドな青年、シャープでハンサムな会社経営者‥と、どのようなキャラクターもしっかりと消化し、女性たちの視線を離さない魅力あふれる男性像を演じている。
特に、”年下男子”として大ブレイクを果たした『私の名前はキム・サムスン』で一躍トップスターとなった彼は、続く出演作『雪の女王』で真逆のキャラクタ―に扮し、さらなる魅力を見せつけている。
ヒョンビン初の主演作といっても過言ではない、名作ドラマ『雪の女王』を紹介しよう。
『雪の女王』はどんなドラマ?
『雪の女王』はヒョンビン、ソン・ユリを主演に、2006年11月から2007年1月まで韓国のKBSで放送された。
![ドラマ『雪の女王』](https://danmee.jp/wp-content/uploads/2020/08/hyunbinkimi0818-1.jpg)
ドラマ『雪の女王』(画像出典:namu.wiki)
貧しい家庭に育ったハン・テウン(ヒョンビン)は、優れた頭脳を発揮し名門校である韓国科学高校に入学する。そこで天才少年として注目されていたキム・ジョンギュ(イ・ソンホ)と出会い、2人は親友となっていく。しかし、テウンが数学の天才的な才能で脚光を浴びたことが親友を追い込み、悲しい事故が起きてしまう。
悲劇的な事故により罪悪感にさいなまれたテウンは、学業を放棄し、さらに過去も自分の夢も捨て、”ハン・ドック”という名でボクシングジムのトレーナーとして生きることになる。
![ドラマ『雪の女王』](https://danmee.jp/wp-content/uploads/2020/08/hyunbinkimi0818-4.jpg)
ソン・ユリとヒョンビン(画像出典:KBS)
そんな彼の前に、ひとりの財閥令嬢キム・ボラ(ソン・ユリ)が現れる。美貌と裕福な家庭に恵まれながらも、我儘に振舞う彼女の心には暗く深い闇が潜んでいた。運命的な出会いをした2人は次第に惹かれ合っていくが、複雑に絡み合った過去の出来事が彼らの前に姿を現し、切ない運命に翻弄されていく‥。
アンデルセン童話『雪の女王』をモチーフに、絶望的な状況下で運命的な出会いをした2人が描く、悲しくも切ない極上ラブストーリーだ。
韓国版『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』と呼ばれるように、大学進学を諦めた貧しい数学の英才を主人公に、アンデルセン童話の持つ神秘さ、さらに映画のような美しい映像に乗せたドラマチックな展開、それを見せた俳優たちの熱演により、多くのマニアを生み出した名作ドラマとして現在でも愛されている作品だ。
ヒョンビンが演じた2つのキャラクター
前作『私の名前はキム・サムスン』で見せた御曹司キャラクターとは一転、『雪の女王』では下町育ちで天才的な数学脳の持ち主であり、さらにボクシングジムのトレーナーに扮し、常に影があり寂し気な表情を見せる青年を演じている。『キム・サムスン』でのヒョン・ジノン役は”*チャドナムの元祖”と呼ばれるほど反響を呼び、同役を引き受けたヒョンビンもしばらく”チャドナム”売りが無難な選択と思われた矢先、下町のワイルドなボクサーになって視聴者の前に帰ってきたのだ。
*チャドナム:차도남 冷たい都会の男という意味。洗練されたルックスと財力を持つも人に冷たい態度を取る男性。00年代韓国で流行した言葉
素直で優しい性格ゆえに悲惨な事故が自分のせいだと自責の念に駆られてしまった彼は、自身の夢を諦め無気力に日々を送る。
そんな彼の前に我儘なお嬢様が現れ、運命的な恋に落ちるのだが、とにかく気性が激しい彼女に対し、宇宙レベルの優しさを披露するヒョンビンの姿に心を打たれる視聴者も多かったようだ。
さらに、暗い過去を取っ払うかのように汗だくになるまでスパークリングをするボクサー姿と、水を得た魚のように頭の中にあふれ出す数式を書きまくる数学の天才という2つの青年像を熱演し、同一人物ながらも真逆のキャラクターでギャップを見せ、これまでのイメージとは異なる新しい演技を見せて高評価を得た。
また、今回のギャップあるキャラクターを経たことで、どのようなキャラクターにも扮せる演技派へと進化したヒョンビンは、ご存知の通りこの後の出演作でも視聴者の心を熱くさせている。
視聴率は?
このドラマは視聴率においては注目を浴びなかった。
同時期に放送されたライバル作品に、日本でも人気を博した史劇ファンタジー『朱蒙(チュモン)』があったことも関係しているだろう。
(関連記事)14年前、韓国人の半数が見た伝説の時代劇ドラマ ‘朱蒙’【韓ドラAgain】
しかし、視聴率がそれほど伸びなかったにもかかわらず絶大な人気を得た背景にはドラマの視聴方法があったようだ。
ドラマの本放送が終わった後、VOD視聴が最短期間で100万件余りに達している。これは過去のVODを無料で視聴できるといった点を含めたとしても少なくはない数字だ。
つまり、『朱蒙』が高い視聴率を記録したのはテレビを占有する層が中高年にあり、反して若年層はVODという代案があるために現れた珍現象とも言える。余談であるが、06年度KBS演技大賞でヒョビンとソン・ユリがベストカップル賞を受賞したことを考えると、若年層の好みが『雪の女王』にもあったことが分かる。
このような理由から高視聴率を得ることはできなかったが、美しい映像に乗せた俳優たちの熱演により、若い世代を中心に多くのマニアを生んだ究極のラブストーリー、『雪の女王』。
『愛の不時着』でヒョンビンに魅了された方にぜひ見ていただきたい作品のひとつである。
ヒョンビン
韓国の人気俳優ヒョンビン(ハングル 현빈)。1982年9月25日生まれ。
2003年にKBSのテレビドラマ『ボディガード』(2003)でデビュー。
2005年にMBCドラマ『私の名前はキム・サムスン』(2005)で大ブレイク。韓流スターとして、韓国や日本、中国をはじめアジア全域で人気を博している。
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