Netflixオリジナルシリーズ『アンナラスマナラ -魔法の旋律-(邦題)』が、5月6日に世界一斉配信となり、それと共にグローバル人気がすさまじい。ミュージックドラマという、新カテゴリーで主演を務めたチ・チャンウクが、この作品への思いを語ってくれた。
「あなたは、魔術を信じますか?」

『アンナラスマナラ -魔法の旋律-』ビジュアル。(写真提供:ⓒ TOPSTAR NEWS、画像出典:Netflix)
Netflix(ネットフリックス)オリジナルシリーズ『アンナラスマナラ -魔法の旋律-(邦題/以下、アンナラスマナラ)』が、5月6日に世界一斉配信されてからというもの、その人気が尋常じゃない。
オンライン動画サービス(OTT)、統計サイトのフリックスパトロール(FlixPatrol)によると、5月11日基準でNetflixテレビプログラム部門で世界4位に浮上、韓国ドラマの底力を見せつけた。
魔術を題材にした“ミュージックドラマ”という、少し不慣れな魅力を持ったこの作品が、どのようにして世界の視聴者の心をつかんだのだろうか。
物語の”メッセージ”に焦点を合わせてほしい
『アンナラスマナラ』は、夢を失った少女ユン・アイ(チェ・ソンウン扮)と、夢を強要されている少年ナ・イルドゥン(ファン・イニョプ扮)の前に、ある日突然ミステリーな魔術師リウル(チ・チャンウク扮)が現れ、経験する物語を描いた、ファンタジーミュージックドラマだ。
本作は作家、ハ・イルグォン氏の同名原作で、夢と現実の間で揺れ動く若者たちの悩みを、“魔術”という幻想的な要素で解きほぐし、多くの若者たちの“人生作”と呼ばれている。

ミステリアスな魔術師リウルを演じたチ・チャンウク。(写真提供:©スポーツ韓国、画像出典:Netflix)
チ・チャンウクが演じたリウルは、大人になりたくない、ミステリアスな魔術師だ。閉演し、放置されたままの遊園地で生きている彼は、つらい現実に疲れているユン・アイに、特別な瞬間をプレゼントする。
しかし彼の周辺には、いつも不審な事件が付きまとっており、ありとあらゆるゾクゾクする噂が出回っている。それでいて、好奇心をそそったりもして‥。
「『アンナラスマナラ』は誰もが共感できる物語であり、貧困、お金、成績、夢、他の人々の視線についての話なんです。メッセージに焦点を合わせれば、とても温かく、面白く観られると思います」
チ・チャンウクは数カ月もの間、魔術と歌の練習にかじりつき、オリジナリティー溢れるリウルを作り上げた。イリュージョニストのイ・ウンギョルは、フリープロダクション段階から原作で表現される魔術の中で、実写で具現可能な魔術を選び、演出チームを構成して作品にふさわしい魔術コンセプトを完成させた。
「歌と魔術が必須なので、たくさんの方たちに助けてもらいました。魔術は3~4カ月くらい練習したんですが、魔術デザインを助けてくださった、イ・ウンギョルさんを完全に信じてやりました。相手側にバレずに、魔術師のように見せるスキルや、図々しさが必要で。それと、手の動作や視線、どんなタイミングで話をしなければいけないか、ディティールに神経を使うことが多かったです。カード魔術は、2つくらい完璧に習得しましたね。友達に見せたら、みんな不思議がってました(笑)」
今回の演技は、感情に”だけ”集中した
『アンナラスマナラ』は、傷ついた心と夢に対して、悩みを持って生きている全ての人々を、音楽と魔術で抱きしめる。オープニングから始まるミュージカル形式での展開、日常と幻想の境界を行ったり来たりする演出、神秘的な魔術など、物語全般を満たす要素は真新しいが、少し不慣れな感想も否めない。

「リウルが楽しければ楽しいままに、怒っていたら怒るままに演じました」(写真提供:©スポーツ韓国、画像出典:Netflix)
「難しい作品ですよね。リウルはある意味現実的なんですけど、時々精神が異常な感じもあるじゃないですか。面白いけど難しい人物なので、監督とたくさん話し合いを重ねました。普通は演技する時、“この人は、なんでこんな行動をするんだろう?”という疑問を持ちながら役に近づいていくんですけど、今回はなんの疑問もなくて、完全に感情にだけ集中しました。リウルが楽しければ楽しいままに、怒っていたら怒るままに、その状況に感じた気持ちを、その時に込めたんです。それと原作のリウルがとてもかっこ良くて、外見をどう構成すべきか悩みました。原作のように髪を短く切ろうか、色を染めようか、いろいろ意見を交わして、結局ドラマだけのキャラクターを作り上げようという結論になったんです」
つらかった幼少期が重なって見えた
本作は、大人たちからしっかり保護されていない子どもと、成功した人生だけが正解だと学んだ子どもが、無分別な大人に出会い互いの欠乏を治癒し満たしていくプロセスを中心に、物語が進んで行く。

リウルや子どもを見ると、僕の話と重なって応援したくなるんです。(写真提供:©スポーツ韓国、画像出典:Netflix)
この内容が、チ・チャンウクの心により大きく触れたのは、幼少期の記憶が重なって見えたからだ。おかげで、リウルと子どもの感情に共感することが難しくなかったという。
「これは、僕の物語かと思いました。(幼少期は)心理的につらい瞬間が、いつもありました。学生時代は勉強のストレスがひどかったし、お金のせいで悩んだこともありました。見方によっては平凡に育ちましたが、違う見方によっては、苦労して育ちました。父が少し早くこの世を去って、女手一つで育ったんですね。喪失感がすごくあって、現実は世知辛いものだと、子どもながら早く感じてしまったんです。子ども的な感覚で言えば、少し憂鬱感がありました。幸い、母の愛で克服できましたが。今僕を頼ってくれる母を見ると、大人になったんだなあと思います。だから、台本の中のリウルや子どもを見ると、僕の話と重なって応援したくなるんです。この作品に取り組んでいる時は、楽屋に入った瞬間から楽しかったですね。本当に遊園地に行ったような気分になって、胸がときめいて、撮影という作業そのものが癒しでした」
失敗に対する恐怖は、いつもある。
『アンナラスマナラ』は、大衆的なタイプの作品ではない。チ・チャンウクは俳優として、興行にプレッシャーを感じたが、それでもこの挑戦を、作品を選び、その結果、口コミで人気を集め続けている。

失敗や恐怖から逃げるのはやめようと決めたんです。(写真提供:©スポーツ韓国、画像出典:Netflix)
そして「興行成績のせいで、逃げようとは思わない」と心境を打ち明けた。
「失敗に対する恐怖は、いつもあるんですよ。それでも逃げないようにしようと思いました。出演作の中には、よくできた作品もありましたが、成績の悪い作品もありました。でもそれらの作品も、僕には大きな助けとなり、チャンスでした。だから成功だけを追うよりも、僕が好きだと思うもの、やりたいと思うものを選択することが最高なんだと考えるようになったんです。『アンナラスマナラ』は、僕を打ち破るための新しい試みだったんです。この作品は、俳優としてどんな姿が見せられるのかを悩みながら、体に刻み込むような感じで演じた気がします。僕を作ってくれた作品として、ずっと残ることになりそうです」
(スポーツ韓国 チョ・ウネ記者/翻訳 編集部)
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チ・チャンウク
グロリアル・エンターテインメント所属の俳優チ・チャンウク。1987年7月5日生まれ。
2008年、映画『スリーピングビューティー』で本格デビューを果たす。
その後2009年ドラマ『ソル薬局の息子たち』に末っ子として出演し注目を集めた。
2014年に出演したドラマ『ヒーラー~最高の恋人~』では主演を務め、視聴率はあまり振るわなかったが、この作品により韓国のみならず海外でも絶大な人気を得ることになる。
映画初主演作は2017年に公開された『操作された都市』。
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