昨年末発表された『男女平等ランキング2020』で、韓国は108位、日本は121位という結果で史上最低だったということをご存じだろうか。日本ではネット上でも日々、働く女性や主婦からのジェンダーに関する悲痛な叫びが相次いでいる。そんな中、公開された映画『82年生まれ、キム・ジヨン』は、人々にどんな影響を与えているだろうか。

映画『トガニ 幼き瞳の告発』(2011)、観客動員数1000万人を超えたメガヒット作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)など、ヒット作での共演が続く実力派人気俳優コン・ユと女優チョン・ユミが、3度目の共演で初の夫婦役となった『82年生まれ、キム・ジヨン』。

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『82年生まれ、キム・ジヨン』

『82年生まれ、キム・ジヨン』(写真提供:©スポーツ韓国、画像出典:ロッテエンターテインメント)

一児の母キム・ジヨン(チョン・ユミ)は、中堅企業に勤める夫(コン・ユ)と3人仲睦まじく暮らしていたように見えたが、突然彼女の人格に、自分の母親や友人が憑依し、不可解な言動を繰り返すようになる。しかし、このことを彼女は覚えていない。彼女の心にいったいどんな変化が起こり、このような言動を起こすようになってしまったのだろうか――。

平凡な女性の人生における女性が抱える生きづらさを丁寧に描いた130万部のベストセラー同名小説が原作で、韓国では昨年公開され、社会現象を巻き起こすほど大きな話題を集めた。日本では今月9日に全国公開されてから、この1週間ですでに多くのメディアに取り上げられ話題を呼んでいる。

チョン・ユミ

キム・ジヨン役を演じたチョン・ユミ(画像出典:movie.naver)

映画『パラサイト 半地下の家族』(2019)とともに韓国の社会問題について訴える作品だが、女性というジェンダーにもとづく偏見や不平等に焦点が当てられいる点で、妊娠と出産を経験した女性のみならず、すべての女性が共感するポイントの多い作品だ。

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しかし、男性目線で見ると、この作品は男性が加害者、女性は一方的な被害者としてのみ描写されているという理由で、問題作だと批判する人たちもいた。その批判は、出演者のSNSにまで及び、主人公キム・ジヨンを演じたチョン・ユミは、公開前からこの作品に対する悪質コメントに悩まされた。

またガールズグループRed Velvet(レッドベルベット)のアイリーンが小説『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んだと発言しただけで、一部の男性ファンがこれを”フェミニスト宣言”と捉え、彼女のグッズや写真を燃やしネットに投稿するという事件も起きた。

さらに、大統領府の国民請願サイトに、この映画の製作中止を求める訴えも書き込まれたほどだった。加えて、政治家がこの映画について批判的な発言をし炎上したり、逆に国会議員が文在寅大統領の就任記念に「女性が平等な夢を見られる世界を作ってほしい」とプレゼントしたりと、社会問題の葛藤として政治にまで影響した。

しかし、この映画は本当にジェンダーの葛藤を助長するような”問題作”なのだろうか。

韓国では、”評点テロ”という行為が存在する。映画など、ネット上で感想を書き込み評価できるものに対し、実際の評価ではなくむやみに低い点数をつけ評価をさげるというものだ。

この映画は、韓国で昨年10月23日に公開されたが、その2日後の25日、ポータルサイトNAVER(ネイバー)の映画コンテンツでの評価では、映画を見ていない観客まで含めたネットユーザーの点数が、男性は10点満点中1.91点だった。しかし、実際映画を見た人のみ残せる観覧客の男性の点数は、9.58点だったことが確認できた。

そして公開から約1年経った今は367万人を動員し、映画の評価点は全体で9.13という高評価を維持している。

コン・ユとチョン・ユミ

『82年生まれ、キム・ジヨン』スチールカット(画像出典:movie.naver)

映画の感想について、映画を見ていない男性の批判的な意見が目立って伝えられていたが、実際の観客は女性だけでなく、若いカップルや男性同士で劇場に足を運んでいる姿もあった。映画の内容自体も実際目にすれば、女性としての権利を一方的に主張するような内容ではなく、女性として生きる平凡な日常を描いた作品だということがわかるはずだ。

結局、映画を見ていない人が上辺だけで判断し、批判している状況が伺えた。小説や映画の内容を理解して批判しているのではなく、この作品が象徴する”女性嫌悪”や”男女差別”に対し、強い反感を抱く一部の男性の意見が目立っているということだろう。

日本でも似たように、”女性優遇”や男性に対する”逆差別”を主張する一部男性が存在する。例えば電車の”女性専用車両”については定期的に議論の的となり、意見の相違でぶつかり合って炎上している光景が目に入ることがある。

日本と韓国、国は違えど男女間で抱えている問題は共通だ。もしかすると、この映画が日本でリメイクされる日が来るかも知れない。そのとき、日本でどのような反応が見られるのか、単なる想像でしかないが、おそらく韓国と似たような反応が見られるのではないだろうか。

今はコロナ禍で劇場に足を運ぶことがなかなか難しいかもしれないが、韓国で生きる女性がどのように描かれているか、ぜひ自分の目で確かめてみて欲しい。



コン・ユ

マネジメントSOOP所属の俳優コン・ユ(ハングル 공유)。1979年7月10日生まれ。

“コン・ユ”という芸名は両親の苗字から付けられたもので、本名は、コン・ジチョル。

2000年、Mnet VJ 7期として芸能界にデビューしたコン・ユは、2001年KBSドラマ『学校4』を通じて演技者としてデビュー。

2007年、日本でも人気を博したドラマ『コーヒープリンス1号店』が大ヒットし、この年MBC演技大賞で優秀賞を受賞。当ドラマは、コン・ユの出世作となった。

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