ステイタスにこだわらず、果敢にも様々なキャラクターに挑んできた俳優のヒョンビン。彼の演技へのストイックさにはただ感服するばかりだ。常に”今”が最高に輝いている、そんなヒョンビンの素晴らしさを再確認できる作品がある。

ドラマ『愛の不時着』で3度目のブレイクを果たし、世界的な俳優として熱い視線を集める俳優のヒョンビン。

彼の最初のブレイクは、2005年に放送されたドラマ『私の名前はキム・サムスン』。ヒロインの相手役である青年実業家役を演じ、ハンサムなビジュアルでありながら非常識というギャップのあるキャラクターで視聴者を一気に魅了した。

『私の名前はキム・サムスン』

最初のブレイクとなったドラマ『私の名前はキム・サムスン』(画像出典:mbc)

そしてヒョンビンが”俳優として新たなスタートを切った”と言われている、2011年。
この年は、ヒョンビンという俳優が持つ魅力的な瞬間をすべて詰め込んだと称された、ドラマ『シークレット・ガーデン』が爆発的な人気を博し、ヒョンビンは2度目のブレイクを果たしている。

『シークレット・ガーデン』

2度目のブレイクとなったドラマ『シークレット・ガーデン』(画像出典:SBS)

この作品をきっかけにヒョンビンはあらゆるものを自身の手で輝かせ、そして蘇らせていた。

まず、女性視聴者たちが心の中に抱いていた”シンデレラストーリー”への情熱を復活させた。これに続き、ドラマの成功を受け、封切りが延期されていた2本の映画が息を吹き返している。さらに訓練が最も厳しいとされる海兵隊への志願入隊を果たし、兵役を終えた男性の自負心も得ることが約束された。これに加え、ヒョンビンの人気を追い風に封切られた映画2本が、同時に『第61回ベルリン国際映画祭』に招待されるという快挙も成し遂げている。

このような輝かしい功績を築いたヒョンビンが”俳優として新たなスタートを切った”と言われている映画が、前述した”息を吹き返した”作品である、『レイトオータム(2010)』と『愛してる、愛してない(2011)』だ。

『レイトオータム(2011)』

映画『レイトオータム』

映画『レイトオータム』 (©2011 CJE&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED)

『レイトオータム』は、母親の葬儀に向かうため3日間だけ外出が許された囚人女性と、女性たちに”エスコートサービス”をしている韓国人男性が偶然乗り合わせたバスで出会い、短くも濃密な愛を描いた作品だ。

1966年に公開された往年の名作『晩秋』をキム・テヨン監督がリメイクしたもので、原作とは違い、国際的な俳優のキャスティングを考慮してアメリカ・シアトルでのオールロケで撮影された。すべてのセリフが英語で展開されており、本作ではヒョンビンの優れた演技とともに英語の実力を確認することもできるだろう。

キム・テヨン監督は、年齢に合わない大人っぽさとなぜか寂し気な雰囲気に惹かれてヒョンビンをキャスティングしたと話している。実際、明るい性格に見えるが軽さはなく、どこか寂し気であるが淡白さも持ち合わせたキャラクターを演じるにあたり、ヒョンビンより適している俳優はいなかったそうだ。

また、映画の最後に2人が披露するキスシーンは、韓国映画史上最長時間記録を持っている。主演俳優らの感情の高まりが切なくも美しい愛を描いた結果だろう。

(関連記事)2010年2度目のブレークを迎えたヒョンビンが魅せた’史上最長キスシーン’

『愛してる、愛してない』(2011)

映画『愛してる、愛してない』

映画『愛してる、愛してない』(画像出典:movie.naver)

直木賞作家・井上荒野の短編小説『帰れない猫』を原作とした本作は、別れを控えた結婚5年目の夫婦の揺れる感情をリアルタイムで描いた大人のラブストーリーだ。

劇中でヒョンビンは、妻から一方的な別れを告げられ、妻が家を出る日に黙々と荷造りを手伝う夫役を引き受けた。いつも愚直なほど芯のある役を演じてきたヒョンビンだが、感情を隠して黙々と荷造りをする夫の役はとても新鮮に映る。

また、2011年のベルリン国際映画祭においてアジア映画としては唯一、世界中の作品の中から20本だけを選ぶという”コンペティション部門”に招待された作品でもある。

俳優ヒョンビン

飾らずとも、内面から醸し出される美しさを持つヒョンビン(画像出典:VASTエンターテイメント)

『レイトオータム』と『愛してる、愛してない』、どちらもエキサイティングな描写は少ないが、ともに穏やかに、そして淡々とした流れの中で人間の繊細な感情が映し出されており、登場人物が抱える悩みや葛藤、細やかな感情の動きなど内面の演技が際立つ作品だ。
視覚的な派手さや分かりやすさは少ないものの、その分、ヒョンビンがこれまで挑戦し積み重ねてきた集大成とも言える”魅せる演技”をじっくりと堪能することができる。彼の確かな演技がシンプルなストーリーにしっとりとした深みと濃厚な味わいを添えているのだ。

多様な役柄とステイタスにこだわらず無数の挑戦で築いたキャリア、それにふさわしい幅広い演技力を兼ね備えたヒョンビンだからこそ、演じ切れた作品ではないだろうか。

年を重ねる度に増してゆく、気高く美しいビジュアルと深みのある演技力。”俳優”という天職に忠実に、そして自身の持つビジョンを明確にし、突き進んでいるヒョンビン。

今回紹介した映画は、彼が現在もなお、俳優として輝かしい進化を遂げている理由が隠されていると感じてならない。



ヒョンビン

韓国の人気俳優ヒョンビン(ハングル 현빈)。1982年9月25日生まれ。

2003年にKBSのテレビドラマ『ボディガード』(2003)でデビュー。

2005年にMBCドラマ『私の名前はキム・サムスン』(2005)で大ブレイク。韓流スターとして、韓国や日本、中国をはじめアジア全域で人気を博している。

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