韓国では、新型コロナウイルスによる1日の全国感染者数が300人を超え、政府は”ソーシャルディスタンス”のレベル引き上げに乗り出した。韓国芸能界に吹く”逆風”の損害は計り知れず、観客あってのビジネスである映画界は、特に酷い状態だ。
日本でも連日、新型コロナウイルス(COVID-19/以下、コロナ19)の感染が拡大しており、新規感染者は過去最多を記録している。
“第3波”の感染拡大に怯えているのは、日本だけではない。”防疫の成功”をアピールしてきた韓国でも、1日の全国感染者数が300人を超え、政府は”ソーシャルディスタンス”のレベル引き上げに乗り出した。
その内容(社会的距離を置く2段階)を見ると、
- クラブや大型居酒屋など、遊興施設の営業を禁止
- カフェ、レストランはテイクアウトや出前のみ可能
- 冠婚葬祭の入場人数は100名未満に制限
- 映画館や公演場は1席ずつ空けて着席
など、具体的な施策が記されている。
政府の方針に賛同すべく、今年のプロ野球王座を決める”韓国シリーズ”では、残り試合の規定座席は10%のみの観客を受け入れると、韓国プロ野球連盟が発表している。
もはや大人数が参加するイベントや公演、スポーツは観客縮小を強いられる見込みだ。
先行きが不透明な韓国映画界
中でも、韓国芸能界に吹く”逆風”の損害は計り知れず、観客あってのビジネスである映画界は、特に酷い状態だ。
大作と称される作品が、映画館での上映を断念し、VODでの公開に移行する動きを見せ始めている。
ソン・ジュンギ主演の『勝利号』は、今年の期待作として、制作前から話題となっていた作品だ。
同映画は、韓国映画として初めて宇宙を題材にしたSFブロックバスターを目指していたため、映画ファンだけでなく、映画界からも期待と声援を受けていた。
近年、『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞作品賞受賞など、海外における韓国映画の台頭を目の当たりにしただけに、『勝利号』にかかる期待は大きいものだった。
しかし、そんな期待作の足を引っ張ったのが、コロナ19の世界的な流行である。
『勝利号』は、今夏から今秋、今年の冬へと延期された結果、Netflixでの公開を決めた。
同作の損益分岐点は、600万人(観客動員数)と推定されており、交渉の内容によっては映画館での公開より、Netflixでの単独公開が収益面では有利な状況とも言われている。
制作費が高ければ高いほど、”映画館での公開”がギャンブルになり得るため、何とも皮肉な話である。
12月2日公開の『徐福(ソボク)』の行き先は?
そして、もう一つの期待作が、憂き目に直面している。
コン・ユとパク・ボゴムがW主演を務めた映画『徐福(ソボク)』である。
12月2日公開と、既に韓国での一般公開日が決まっている。
しかし11月24日0時、”ソーシャルディスタンスのレベルの引き上げ”が発令され、映画公開にも多少の影響が及ぶと予想される。
実は『徐福』は、今夏に公開される予定だった。しかし、コロナ19の余波により延期となってしまった。韓国を代表する大物俳優2人が出演しており、ファンの期待もより一層大きいだけに、何度も上映日をずらすことは容易ではない。
が、このまま上映を強行するとなれば、興行収益の大幅な減少を覚悟しなければならないとともに、映画館でのクラスター発生など、コロナ19にまつわるイシューからも自由になれないのだ。
先月22日、もう一人のスター俳優、ソ・ジソブが出演している新作映画『自白』側は、11月26日に予定していた制作発表会を突如キャンセル、すべてのスケジュールを保留にすると発表した。韓国映画界が、現在抱える”不確実性”を端的に示した例だと言えよう。
『徐福』の公開日はまだ変更されていないが、今後一週間、どのような事態が起きてもおかしくない。
『勝利号』のように、延期を繰り返した後、VOD公開という”カード”を出すという”シナリオ”も十分あり得るだろう。
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