Netflixを通じて到来した韓国ドラマブーム。その人気の秘密は、視聴者を引き込むストーリーや映像美はもちろん、”韓国社会”が抱える問題を映し出していることも理由のひとつだ。ここではドラマから見えた”韓国社会”を紐解いていく。

思わず見入ってしまう韓国発のドラマに映画。

日本をはじめ、世界でも多くの人気を得た作品には、ラブロマンスや受験戦争など人種を越えた共感テーマのほか、風刺をきかせた社会問題が映し出されている。

ここでは日本でヒットした作品を例に、ドラマや映画から見えた韓国社会の問題を見ていきたい。

『梨泰院クラス』

『梨泰院クラス』

『梨泰院クラス』(写真提供:©スポーツ韓国、画像出典:JTBC)

『梨泰院クラス』は、妥協を許さない情熱的な青年パク・セロイ(パク・ソジュン)が、飲食業界の大手企業である長家(チャンガ)グループを倒すべく、仲間とともに奮闘する姿を描いた青春劇だ。

高校3年生のパク・セロイは転校先で、長家グループの御曹司チャン・グンウォン(アン・ボヒョン)と出会う。教室でいじめを繰り返すグンウォンだが、それを黙認する教師とクラスメートたち。これを見た正義感の強いセロイは、思わず彼を殴ってしまう。これによりセロイは退学処分を受け、チャンガグループで働いていたセロイの父親は会社を辞めることに。

『梨泰院クラス』

『梨泰院クラス』(画像出典:梨泰院クラス 公式HP)

その後、グンウォンが起こした交通事故で父を亡くしたセロイは、長家グループを倒すために梨泰院で店を開き、チャン会長と激しく対立することになる。

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本作では、富と権力を手に入れた大企業の父子が、どこまでも傍若無人に振る舞う様子が描かれている。

チャン会長は社会において横暴な態度を続け、その御曹司である息子は父親の権力を盾にいじめを繰り返しても、誰からも咎められない。

『梨泰院クラス』は、韓国だけでなく、どの先進国でも起こりうる、不平等で公平さに欠ける理不尽な世界を描いている。

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『青春記録』

『青春記録』

『青春記録』(画像出典:tvN DRAMA公式Twitter)

現実の壁に絶望せず、愛と夢を叶えるために努力する”青春たち”の成長記録を描いたドラマ『青春記録』では、”若者の不安”や”親子の葛藤”、”学歴社会”といったテーマが盛り込まれている。

パク・ボゴム演じる主人公のサ・ヘジュンの世界を見ればお分かりになるだろう。

彼は俳優になる夢に向かって奮闘する20代半ばのモデルだ。

だが、本業のモデルだけでは食べて行けず、アルバイトを掛け持ちしている。

自宅では一流大学を卒業し、大手企業に就職が決まった偉そうな兄と比べられ、父親からは「真面目に働け」と怒鳴られる毎日。祖父と母以外は自身の夢を応援しておらず、”家族の悩みの種”とまでいわれたヘジュンはやり場のない思いを抱いていた。

『青春記録』

パク・ボゴム演じるサ・ヘジュン(画像出典:tvNdドラマFaceBook)

ヘジュンからすれば、鳴かず飛ばずの状況に不安を覚えながらも、夢を諦めるという選択肢はない。それだけに「なぜ、大人たちは生きたい道に進ませてくれないのだろうか?」「夢を見ることに年齢制限はあるのだろうか?」と苛立ちを覚えるのだった。

親からすれば、できることなら好きなように幸せに生きてもらいたい。だが、そこに生活の安定がなければ、やりたいことが幸せとは限らず、心配する気持ちからつい声を荒立ててしまう。

しかし、その心配はあくまで親の気持ちでしかない。それゆえ、互いの言い分は平行線をたどったまま、ヘジュンが俳優としてライジングスターとなるまで、その思いが交わることがないのだ。

確信が持てないまま、自分を信じて努力する若者。夢を叶えて欲しい一方で、子どもの将来が不安でたまらない、若者の親たち。家族内で見られる学歴の差‥。『青春記録』では、埋めようのない溝が、ハッキリと描かれている。

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映画『パラサイト 半地下の家族』

『パラサイト 半地下の家族』

『パラサイト 半地下の家族』(写真提供:©スポーツ韓国)

第92回アカデミー賞で、外国語映画として史上初となる作品賞をはじめ、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4冠に輝き、世界中から注目を集めた作品。

巨匠ポン・ジュノ監督が描いたのは、世界的に深刻な問題となっている”格差社会”だ。

家族全員が無職であるキム一家は、しがない内職で日銭を稼ぐ”半地下住宅”暮らしの貧しい4人家族だ。

ある日、長男のギウ(チェ・ウシク)がひょんなことから、IT企業の社長パク家で家庭教師をすることになった。そこでパク一家の心を掴んだギウは、妹のギジョン(パク・ソダム)を家庭教師として紹介し、父ギテク(ソン・ガンホ)がパク社長(イ・ソンギュン)の専属ドライバーに、母チュンスク(チャン・ヘジン)が家政婦と、遂に家族全員がパク一家に寄生していく。

『パラサイト』

“半地下”で暮らす貧困家庭のキム一家(画像出典:movie.naver)

『パラサイト』

“高台の豪邸”で暮らす裕福なパク一家(画像出典:movie.naver)

“半地下”で暮らす貧困家庭のキム一家と、”高台の豪邸”で暮らす裕福なパク一家。正反対の2つの家族が交差した時、どのような悲劇が起こってしまうのか。

表面上では和やかに振る舞うパク一家が、時折見せる見下した視線を薄々と感じていたギテク(ソン・ガンホ)。それが頭の片隅から離れないギテクは、言いようのない気持ちでいっぱいになる。

『パラサイト』は貧富の差だけでなく、互いの礼儀や人間の尊厳に関する問題も多く盛り込まれている。

『サイコだけど大丈夫』

『サイコだけど大丈夫』

『サイコだけど大丈夫』(画像出典:サイコだけど大丈夫 公式ホームページ)

韓国における現代人の精神疾患やトラウマなど、目に見えない病に対する理解が深まるドラマ『サイコだけど大丈夫』。

同作の予告概要として発表されていたのは、以下のような一文だった。

「つらい人生の重さで愛を拒否する精神病棟の介護士ムン・ガンテ(キム・スヒョン)と、生まれつきの欠陥で愛を知らない童話作家コ・ムニョン(ソ・イェジ)がお互いの傷を癒していく、一編のファンタジー童話のようなロマンチック・コメディー」

タフなメンタルを強いるあまり、人が持つ不安や恐怖に対する関心や、心のケアの不在が浮き彫りとなっている韓国社会に、メンタルヘルスの重要さについて考える機会を与えた作品である。

トラウマに向き合うための、”大人の童話”という別称が、非常に心に響く秀作である。

また育児放棄や自閉症スペクトラム、反社会的な行動、ADHD(注意欠如・多動症)など、様々な社会問題も登場する。

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映画『82年生まれ、キム・ジヨン』

『82年生まれ、キム・ジヨン』

『82年生まれ、キム・ジヨン』(写真提供:©スポーツ韓国 画像出典:ロッテエンターテインメント)

俳優コン・ユと女優チョン・ユミが3度目の共演で初の夫婦役となった『82年生まれ、キム・ジヨン』。

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韓国のジェンダー意識に関わる社会問題を織り交ぜながら、平凡な女性の人生のおける重圧や生きづらさを丁寧に描いた作品。130万部のベストセラーとなった同名小説が原作で、韓国では昨年公開され、社会現象を巻き起こすほど大きな話題を集めた。

女性という”ジェンダー”に基づく偏見や不平等に焦点が当てられており、妊娠と出産を経験した女性のみならず、すべての女性が共感するポイントの多い作品だ。しかし男性目線で見ると、この作品は男性が加害者、女性は一方的な被害者としてのみ描写されていると指摘され、問題作だと批判する声も噴出した。

そんな声に加え、ジェンダーの葛藤を助長するような”問題作”と捉える人も出ており、映画の話で終わることなく、韓国社会においてジェンダー意識の埋まらない溝を浮き彫りにする形となった。

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