【編集長コラム】12月18日より韓国で放送開始予定の新ドラマ『雪降花:snowdrop』。11月15日から、本作を放送するJTBCが予告ティーザーを公開し、ドラマファンの期待を集めた。そしてそのBGMから、本作を先読みのヒントを見つけたので、ぜひ紹介したい。
「ある日、女子大学の宿舎に血だらけの男性が駆け込んで来る。‥民主化運動に身を投じた名門大の学生スホと、彼を匿い懸命に治療するヨンロの切ないラブストーリー」
これは、チョン・ヘインとBLACKPINK(ブラックピンク)ジスがW主演を務める新作ドラマ、『雪降花:snowdrop(以下、雪降花)』(12月18日放送開始予定)のシノプシスだ。
11月15日からは、本作を放送するJTBCが予告ティーザーを公開し始め、ドラマファンを予熱している。
童話に登場するようなアンティークな部屋の中、気まずそうで甘いひと時を共にする2人の男女。
初めて手をつなぐことが、いかに難しいことなのかを如実に実感させてくれる短い映像には、ドラマの時代背景とストーリーが推測できる貴重なヒントが隠されている。
そのヒントとは、ティーザーでBGMとして流れている故ユ・ジェハさん(享年25歳/以下、ユ・ジェハ)の名曲『愛しているから』だ。
故ユ・ジェハさんの名曲『愛しているから』
まず、ユ・ジェハの生い立ちから説明する。
「歌手になったからお祝いしたいらしい。早く終わらせて帰るから」
1987年10月31日、ユ・ジェハは、そんな言葉を実兄に残し、滅多に足を運ぶことのなかった同窓会に参加する。
深夜まで続いた飲み会が終わり、泥酔状態の友人からの「家まで送る」という誘いに乗り乗車。道中、友人の車は中央線を越え、対向車と衝突。
翌日11月1日、ユ・ジェハは25年間という短い生涯を終え、この世を旅立った。
前出の言葉は、哀しくも彼の遺言となってしまう。
“韓国大衆歌謡史に、大きな足跡を残したミュージシャン”と評されるユ・ジェハが、生前残したアルバムは『愛しているから』1枚のみ。そんな同名のタイトル曲が、今回『雪降花』の予告ティーザーに使われたのである。
ユ・ジェハが持つ象徴性--若き才能の夭折は、日本の名アーティストである尾崎豊に例えられ、”韓国の尾崎豊”と呼ばれたりする。
たった1枚のアルバムで、彼が韓国のミュージシャンに仰がれるには理由がある。
それは彼の楽曲が、韓国人の情緖を最も上手に盛り込んでいるからだ。現在も多くのミュージシャンは、ユ・ジェハの楽曲『愛しているから』を”韓国バラードの古典”と称えているほど。
ダンス歌手として一世を風靡したパク・ジニョン(J.Y.Park)がリスペクトの気持ちを込めて、1998年にリメイクしたことでも有名な楽曲だ。
『雪降花』先読みのヒント
同楽曲が発表された年は、1987年。
韓国映画『1987、ある闘いの真実(邦題/2017)』を観た人なら知っている事だが、この年は韓国全土に民主化運動が激しく展開され、国民によって”大統領直接選挙”が勝ち取られた年である。
その激動の時代に発表された『愛しているから』は、愛する人との別れを惜しむ切ない心境が綴られており、国の将来を心配し、未来に不安を募らせていた多くの青春世代が、胸を打たれたという。
1987年の『愛しているから』--これがまさに『雪降花』を先読むヒントである。
同曲には、こんな歌詞がある。(一部 意訳)
初めて見た君のまなざしは、私だけの誤解でしょうか。
明るい笑顔で、私はばかになってしまいました。
昨日は、去った君を忘れられずにいる私が憎かった。
しかし、今気付きました。
君だけの私であることを
また戻ってくる君のため、私の全てを捧げます。
私たち、このまま永遠に別れることはない。
私は、君だけを 愛しているから。
激動の時代に咲いた”愛”という運命的な花。それを守っていく中で、幾度となく訪れる別れと再会が2人の運命を翻弄する・・『雪降花』が描いていく、愛と運命の物語の大筋が見えてきそうな気がしないだろうか。
“時代と愛、そして運命”
さらに、チョン・ヘインが履いているナイキ製のスニーカー(NIKE Cortez)にも注目しておきたい。
このスニーカーは、1995年に公開されたハリウッド映画『フォレスト・ガンプ/一期一会(以下、フォレスト・ガンプ)』で、トム・ハンクス演じるフォレスト・ガンプが履いていたスニーカーのデザインと非常に類似している。
本作ではエルヴィス・プレスリーの出現やベトナム戦争、米中国交正常化など、アメリカ現代史を代表する出来事を、フォレスト・ガンプという人物を通して語っている。
劇中で、愛する女性ジェニーとの別れと再会を回想するフォレスト・ガンプ。そして現代で、再びジェニーとの再会を果たし田舎で一緒に暮らすのだが、大きな病を患ったジェニーの死により、再び別れが襲う。
もし『雪降花』が、『フォレスト・ガンプ』から大きなインスピレーションを受けているとすれば、両作は”時代と愛、そして運命”というコードが相通じており、『フォレスト・ガンプ』のような、過去から現在まで続く、断ち切ることのできない”運命の糸”がストーリーテリングされることが予測できる。
どの時代でも、男女の愛には巨大な障壁が立ちはだかり、それに邪魔され翻弄されてきた。しかしだからこそ、それを乗り越えるラブストーリーという名作ドラマが生まれてきたのも事実。
特に、韓国ドラマは”時代と愛”を得意とするのだから‥そんな物語の放送開始まで、あと1カ月余りだ。
(投稿:Danmee編集長)
故ユ・ジェハさんの楽曲『愛しているから』(動画出典:Youtube JTBC Drama)
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