2022年は、日韓同時開催が話題となったFIFAサッカーワールドカップから20年を迎える年となる。振り返ると日本の韓流ブームの歩みも、同じようなタイミングだったのではないだろうか。今回は、韓流ブームをリードしてきた『冬のソナタ』が、新大久保を”韓流ファンの聖地”へと導いた瞬間を振り返ってみよう。
2002年に放送されたKBS2ドラマ『冬のソナタ(以下、冬ソナ)』。韓国ドラマ史上、初めて日本の地上波で放映された作品で、日本での”韓流ブーム”のきっかけを作ったとも言われている。
『冬ソナ』は、ドラマを制作した韓国よりも、日本での人気が高く、特に主婦層をメインにファンを獲得。遂には社会現象を巻き起こすまでに。この状況には日本中が(メディアも含めて)興味を持ち、その行方を見守っていた。
この成功についてのさまざまな分析を目にするが、当時のメディアではこのような考えがあったようだ。
2000年代初め、日本の若い世代はトレンディードラマに夢中、男性視聴者はジャンルものや大河ドラマ(時代劇)を好んでいた。そのため、テレビ局もこれらをメインに編成することがほとんどだったという。
つまり、主婦層が楽しめる恋愛ドラマはあまりなく、物足りない状況にあった。
そんな時に『冬ソナ』が日本で放送され、悲しくも美しい純愛物語に女性たちは熱狂。社会現象となる”冬ソナブーム”を巻き起こしていく。
ある人は、『冬ソナ』がこれほどまでにヒットして見せたのは、日本の家庭にはいまだ“家父長制”が根強く残っていたからだと分析。主婦たちは、権威主義や男尊女卑、大和撫子という言葉に疲れていた。
そこに『冬ソナ』が、慈雨のような満足感を与えたからではというのだ。また純愛ストーリーが心の琴線に触れ、自身の欲求が満たされたこともあり、レジェンドドラマへと昇華したと推測されている。
しかしドラマ放映後、韓国ドラマに夢中になった主婦層に対して、「家事が疎かになった」との指摘や「年甲斐もなく‥」といった皮肉めいた視線が向けられることに。 韓流ファンを”別種”と、否定的に見る傾向もこの時に生まれてしまった。
ネガティブな視線が送られる一方で、同時に”韓国”という国を再発見するというポジティブなきっかけもできた。
以前まで、日本における韓国への印象は、植民地の歴史や戦争、そして北朝鮮という否定的なイメージによって、あまり好感度は高くなかった。だが、『冬のソナタ』を境に、「これほど美しい恋物語を作る国だとは知らなかった」と、韓国に対するイメージが急上昇したのだ。
それとともに『冬のソナタ』を撮影した韓国の各地域は、日本のドラマファンにとって一種の聖地となった。ここには、日本をはじめとする『冬のソナタ』が放送された多くの国から、”聖地巡礼”に来るファンで賑わっている。
韓国旅行と並んで注目を浴び、進化を遂げたのが、東京都新宿区にある”新大久保エリア”だ。
韓流ブーム以前、新大久保には韓国人をはじめ外国籍の人々が多く、歌舞伎町からも近いことで“治安が悪い”というイメージを持たれていた。加えて韓国に対するネガティブな印象も手伝い、新大久保は怖い街として認識されていたようだ。
しかし、『冬のソナタ』の放映以降、韓国に興味を持ち、好意的になる人が増加。
ドラマや映画、音楽といった韓流コンテンツはもちろん、料理など韓国文化に興味を持つ韓流ファンが訪れるようになり、新大久保という街自体がオープンな雰囲気へと変化していく。
新大久保エリアは、韓流ブームをきっかけに、発展を遂げることに。今では、ドラマだけでなくK-POP人気の後押しもあり、若者にとっても新大久保がホットスポットであり、聖地と化した。
たった20年前までは、ダークなイメージのある街が、ドラマ人気によりそれを一掃。現在は、新たな文化交流の場であり、中高生を中心とした若者の憧れのエリアにまで発展している。
(構成:星野沙)
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