ラジオDJであり、韓国大衆文化ジャーナリストであり、韓流ファンミーティングMCのパイオニアである古家正亨さんの連載コラム『古家正亨の韓々学々』!
第8回目のテーマは、新型コロナウイルスにより新たなスタイルとして開催されている”オンラインイベント”について。古家さんが実際にオンラインイベントに関わり、感じたことを綴っています。

7月以降、僕の仕事も少しずつ増え始めてきました。

2月以降、コロナ禍によってダメージを受けた代表的な産業の1つであるエンターテインメント。日本では段階的にイベントやコンサートも基準を設けて再開し始めていますが、世界的に見ればそのような国はごく限られており、コロナ禍前のような状況に戻るには、ワクチンや治療薬の開発を待たなければなりません。

新しいライブの形を披露し、無限の可能性を魅せた東方神起

新たなライブの形で無限の可能性を魅せた東方神起(画像出典:SMエンターテインメント公式サイト)

しかしエンターテインメント産業に関わる立場の者からすれば、それを待っているうちに、生活が脅かされ、生きていくこと自体難しくなってしまいます。ですから、そうなる前に全く違ったジャンルの仕事をするか、コロナ禍においても楽しめるエンターテインメントを生み出し、そこに光を見出すしかありません。

そして今エンターテインメントは、インターネットという武器を活用し、オンラインでのイベントやライブに活路を見出そうとしています。かくいう僕も、そんなオンラインイベントの恩恵にあずかり、少しずつ韓国と回線をつないだオンラインイベントの司会をさせていただくことが増え、仕事という意味では、本当に助かっています。

ただ、それを一視聴者の立場から楽しめるのだろうかと考えた時に、MCの立場からこの仕事を担う難しさを改めて感じています。

イベントやライブのMCを務める際、僕が一番気を付けているのは、広い会場のどこにいても、ステージに立つスターを間近に感じられるよう、観客の皆さんとスターとのパイプ役になることに徹するということ。そして、日本までわざわざ来てくれるスターたちの魅力を最大限に引き出し、そんなスターたちと同じ空気と時間を共有できる喜びを感じてもらえるように気を配っています。

どんなにステージが遠くてもその空間にいられることの幸せ。

どんなにステージが遠くても、その空間にいられることの幸せがある。(写真提供:pixabay)

東京ドームや大阪の長居スタジアムのような大きな会場では、ステージから遠く離れた席に座らざるを得ない状況もあると思いますが、それでも時間とお金をかけてまでその会場に行く理由は、自分が愛するスターと同じ瞬間を共にしたという充実感を味わいたいからだと思うんです。

オンラインの仕事をして改めて感じたのは、どんなに努力しても、その特有の感覚を届けられないという現実に早くも直面してしまったからなんです。もちろん僕をはじめ、主催者、スタッフは努力を怠ってはいません。

VR(仮想現実)システムや大型のスクリーンを使えば、それもまた少しはリアルに近づけるかもしれませんし、オンラインの場合、誰もが最前列でイベントやライブを楽しむ感覚に浸れるでしょう。しかも、自宅や外出先に居ながらにして、高い交通費や宿泊費をねん出することなく、世界中のファンが同時にその瞬間を共にできることも、オンラインのメリットと言えます。

Embed from Getty Images

ただ、そもそもイベントやライブに直接行く人たちは、そんな便利さとは引き換えにならない、苦労したその先にある喜びを得たいからこそ、その場に向かうはずなんです。その喜びは、どうしてもオンラインでは届けられないと、すでに悟っている関係者も少なくないはずです。

なぜそう感じたのかと言えば、僕自身が仕事で無観客ライブの現場に立つことがあったからです。

Mnetの番組『MタメBANG』でレギュラーと共にさせてもらっている、ジヌさん、ヨンウクさんが所属するボーイズグループApeace(エーピース)の東京・山野ホールで行われた無観客ライブにお仕事でお邪魔させてもらい、スタッフとしてそのオーディエンスのいない会場で、彼ら初の無観客ライブを最初から最後まで見ていたんですが、開演時間になり、会場の照明が暗くなった瞬間、もうすでに込みあげてくるものが‥。

今月、無観客ライブを配信したApeace

今月、東京から無観客ライブを配信したApeace(画像出典:Apeace 公式Instagram)

そして彼らが出てきた瞬間、自然に涙が出てきました。僕やスタッフ以外のファンの皆さんは、この様子をPCやスマホ、自宅のテレビでご覧になっていたと思いますが、観客のいないガランとした会場であっても、彼らがステージに立った瞬間、揺れるペンライトと大きな声援が聞こえてきたんです。そう、その忘れかけていた感覚が蘇ったんです。そしてその瞬間、この感覚は絶対オンラインでは伝えられないと実感したんです。

そして先日行われた、日韓交流おまつり。今年もYumiさんとMCとして参加させていただきましたが、今年は日比谷公園ではなくオンラインでの開催となり、多くのプログラムが収録で配信された中、生配信で梁邦彦さんと土屋玲子さんの2人によるピアノとバイオリンの生演奏が行われたのですが、無観客の中、素晴らしい演奏の後に自然に起こったスタッフからの“小さな”拍手。しかし、梁さんがそんな拍手を聞きステージ上で感動されていた姿を見て、いかにアーティストの皆さんにとって観客の声援、そして拍手が大きな力になるのかを改めて実感したんです。

この2つの現場を通じて、やっぱり自分もMCとして早くステージに立って、両者をつなげたいという想いが、ますます強くなりました。そして、どんなことがあっても、時間がかかっても、エンターテインメントに関わる人間の1人としてこの素晴らしい瞬間をもう一度多くのファンのために届けなくてはならないと感じたんです。

毎年東京・日比谷で行われていた日韓交流おまつりもオンラインで開催

毎年東京・日比谷で行われていた日韓交流おまつりもオンラインで開催された。(画像出典:韓国観光公社)

もちろん、オンラインを介したエンターテインメントを否定するつもりもありませんし、その恩恵を受けている1人として、ありがたい気持ちもあります。ただ、すべてのエンターテインメントを小さな画面に閉じ込め、それだけを楽しむ感覚に決して慣れてほしくないという想いが、このコロナ禍においてより強く、個人的には感じています。

ニューノーマルが謳われる中、アフターコロナの世界は、コロナ前の常識が通用しない世界になりつつあります。イベントやライブのあり方もまさにその1つでしょう。しかし、この文化と体験は、絶対的に守るべきものであり、完全体でなかったとしても何らかの形で、その体験を届けていく使命が、我々関係者にあるのではないかと思うのです。

僕自身も仕事面で厳しい状況は続いています。特に韓流、K-POP関連のイベントやライブは、コロナのため日韓両国の人的交流が阻まれている中、再開にはもうしばらく時間がかかりそうです。でもどうにか頑張って、もう一度ステージで韓流、K-POPファンの皆さんにお会いしたいです。もちろん、スター達もその瞬間を待っているはずです。幸運にも、再開のその瞬間に立ち会えるチャンスが得られたら、どうか、今まで以上の大きな声援とそして、拍手をステージ上のスターと、そして現場のスタッフ、関係者に贈っていただけませんか?

コラム『古家正亨の韓々学々』筆者-古家正亨

コラム『古家正亨の韓々学々』筆者-古家正亨

***

古家正亨(ふるやまさゆき)
ラジオDJ /テレビVJ /MC /韓国大衆文化ジャーナリスト
レギュラー:
NHKラジオ第1「古家正亨のPOP★A」(毎週水曜 21:05 – 21:55 生放送)
FM northwave「Colors Of Korea」(毎週土曜 11:00 – 11:30)
CROSS FM「深発見!Korea」(毎週土曜 18:30 – 19:00)
InterFM897「TALKIN’ ON SUNDAY」(毎週日曜 朝7:00 – 8:00)
Twitter:@furuyamasayuki0