韓国のトライアスロン選手の自殺、K-POPガールズグループAOA元メンバーの暴露・・韓国社会に蔓延するいじめ問題の”原因”とは一体なんなのだろうか。

また一人、若い命がこの世を去った。
韓国スポーツ界(トライアスロン)の前途有望な22歳の女子選手が、自ら命を絶ったのだ。

故チェ・スクヒョン選手

自ら命を絶ったチェ・スクヒョン選手(画像出典:YouTube YTN NEWS動画キャプチャー)

慶州支庁の実業団に所属していた故チェ・スクヒョン選手(享年22)。
彼女は6月26日、家族宛に「私を虐めた人たちの罪を暴いてほしい」というメッセージを送った後、釜山市内の某所で遺体で発見された。
死因は飛び降り自殺とみられる。

“韓国トライアスロン界の未来を背負って立つ人材”と期待されていた若い選手の死に、韓国中が悲しみ激怒した。
そしてその1週間後、元AOAメンバーがチーム内の不和といじめを暴露している。

22歳‥無念の死を遂げた女子選手

チェ・スクヒョン選手が”死”という極端な選択をした理由..
まだ捜査中のため語れる要素は少ないが、韓国メディアの報道によると、実業団内での暴行と暴言を受けていたようだ。
今月9日、チェ選手に対するいじめ行為に加担したとされるA選手(男性)が、ハンギョレ新聞とのインタビューで「私の罪を認める。そして(慶州支庁の)監督とチェ選手の先輩であるB選手も日常的に暴行と暴言を行っていた」と証言した。

同新聞には”いじめの事例”も紹介されている。

「体重が増えたチェ選手に20万ウォン相当のパンを食べさせたあと、嘔吐させる。それを繰り返す‥」
「”トランスジェンダーのような顔付きで、色んな男性と会っている”とデマを流す」

他にも、靴で顔を殴るなどの日常的な暴行と暴言で苦痛を与え続けた時間は、なんと3年間にも及ぶ。
彼女は、自分の短い人生の大半を”トライアスロン”という競技スポーツのために生きていたと言っても過言ではない。そして彼女が送った人生最後の3年間は”いじめからの逃避”だけを考えていた時間だった。

メンバーの脱退、そしてイジメ問題-AOA

人気アイドルグループ AOAの元メンバー、クォン・ミナが、自身の脱退理由を“メンバージミンからのいじめ”のためだと暴露した。
ミナの暴露で始まった今回のいじめ騒動は、韓国芸能界はもちろん、韓国社会全体に大きな影を落とし、再び“K-POPの闇”に光を当てさせた。

クォン・ミナとジミン

ジミン(右)からいじめを受けたと暴露したクォン・ミナ(左)(写真提供:©スポーツ韓国)

クォン・ミナは、昨年5月にFNCと契約を終了してグループを脱退。その際、AOAの脱退と関連して一部のネットユーザーから悪質なコメントを受けていた。
相次ぐ悪質コメントに感情が込み上げたクォン・ミナは今年の7月3日、脱退した理由は「ジミンによるいじめだった」と暴露。ジミンのいじめのせいで、自ら極端な選択までしていたことを打ち明けた。

いじめの加害者だけでなく、同グループのメンバーも”傍観していた”との理由で批難を受けており、現在AOAはグループ存続危機に立たされている。

(関連記事)「傍観も重罪」AOA ジミンのいじめ騒動で他メンバーにも非難が飛び火

韓国社会に蔓延するいじめ問題-その原因

韓国は日本を上回る”序列社会”だ。
厳しい上下関係は、男性の”軍隊文化”から起因する。日本でも広く知られている韓国の徴兵制は、上官の命令に服従するという意味の”上命下服”の精神がその根幹にある。朝鮮戦争後、著しい経済発展を遂げた背景にも、このような企業における”上命下服”の精神が一役買っているとされる。

経済だけではない。スポーツ界や芸能界でも”上命下服”の精神は強調されてきた。
競技人口数が多くない韓国が、世界大会やオリンピックで好成績を残せたのも、華麗なパフォーマンスを一糸乱れず披露して世界的なポップスターを排出してきたのも、強い指揮官が組んだ過酷なスケジュールを素直に従う--いわゆる”上命下服”の精神の産物なのかも知れない。”上命下服”が成り立つためには”権威主義”は必要不可欠である。そう、韓国のイジメ問題の背景には、時が経っても風化しない慢性的な”韓国式権威主義”と、それによる”社会の幇助”があるのだ。

もう一つ、”生き残り”が強調される特有の文化が挙げられる。
それは、韓国社会では日本以上に”強いものが生き残る”という意識が強い。実力を磨いても強い精神力を持っていなければ、いずれ自分より強い者にやられるという危機的意識を幼い頃から植えつけられている。たとえ、自分の子供が学校でいじめに遭っても「それくらいで負けるな」「弱気になるな」と、親は平然と根性論を言い放つ。いじめや嫌がらせを受けて組織から逃げた者は、社会から“生存力の弱い落ちこぼれ”という烙印を押される。韓国社会で現在も強調される”生き残り”は、皮肉にも時として人を”死”に追い込むのだ。(韓国は36のOECD加盟国の中で自殺率が1位で、1日平均37.5人の人が命を落としている)

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故チェ選手の悲痛な叫びも、元AOAメンバー ミナの暴露も、韓国国民が自ら抱えている社会問題を紐解くためのきっかけになるだろう。国会や司法機関でも”いじめ根絶”のための法案や制度整備などが行われる見込みだ。しかし、上述した慢性的且つ根本的な問題を見直す努力をしない限り、変わるものはないだろう。今もどこかで”いじめ”や”嫌がらせ”に耐えながら、自分の”生存力”を試している人がいる‥そう考えると悲しくなる限りだ。

最近、日本では新型コロナウイルスの影響でドラマ撮影が休止状態となり、新ドラマの放送予定だった時間枠で様々なドラマが再放送されていた。中でも、再放送にも関わらず本放送当時とほぼ変わらぬ人気を見せた作品がある。TBSの『逃げるは恥だが役に立つ』だ。

劇中でも新垣結衣とともに主演を務めた星野源扮する平匡が、セリフとしてこのタイトルを口にしているが、この言葉はハンガリーのことわざで「恥ずかしい逃げ方だったとしても、生き抜くことが大切」という意味を持っている。

“死”の選択の前に、どうか“自分の戦う場所を選ぶ”という選択も視野に入れてほしい。







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