日本でも愛されている韓国ドラマ。最近ではケーブル局が制作した作品が日韓で高い人気を得ており、局側もドラマ制作に力を注いでいるようだ。しかし、ケーブル局のJTBCで放送されるドラマは、良質な作品であるものの国内での視聴率は不振に終わっている。果たしてその理由とは。
日本でも多くのファンを持つ韓国ドラマ。最近では、韓国のケーブル局である”JTBC”や”tvN”が放送する作品に人気が集まっている。
その中でも、特に人気を得ているのが、毎週金曜日と土曜日に放送する”週末ドラマ”という放送枠だ。
平日を終える金曜日の夜は、休日前夜とあって心身共にリラックスした時間だ。開放感に包まれ、夜更かしもはかどる。つまり、ゆっくりとドラマを視聴するにはもってこいの時間帯なのだ。
これまで”週末ドラマ”と言えば、土曜日と日曜日に放送することが定番だった。
地上波では現在でもこのパターンで放送している局が多く、これに対抗すべく、ケーブル局が前倒しの”金土ドラマ”を作り上げた。
韓国も日本と同じく週休二日制になったことで、金曜日の夜は開放感に包まれる人も少なくない。そんな国民の気持ちに合った編成スケジュールとなっているようだ。
各放送局はそれを見込んで、視聴者を取り込みやすい”週末ドラマ”に力を入れている。そのため、この時間帯に放送されるドラマはキャストもストーリーも優れた作品が多い。
週末ドラマがはじき出す残念な視聴率
しかし、なぜかJTBCが放送する作品がことごとく視聴率不振に陥っている。
2021年に放送されたドラマで見てみると、まず、大物映画俳優のファン・ジョンミンと少女時代(SNSD)のユナがW主演した『ハッシュ~沈黙注意報~』。
ドラマになかなか顔を見せない銀幕スターのファン・ジョンミンが主演とあって、その期待は大きかった。ユナも韓国だけでなく世界にファンを持つトップアイドル、少女時代のメンバーだ。トップスター同士の共演という点でも話題をさらった作品だった。
だが、いざ放送スタートするも、平均視聴率は2.4%と寂しい数字で終わってしまった。
(関連記事)大スターも救えなかった? ドラマ『ハッシュ』が韓国で大コケした理由
この後続番組が、シン・ハギュン主演の『怪物』。
“韓国のゴールデングローブ賞”と呼ばれる『第57回百想芸術大賞』で、”作品賞”、”男性最優秀演技賞”、”脚本賞”と3冠に輝いた作品ではあるが、視聴率は大台に乗ることができず、平均4.7%という記録で終わった。
(関連記事)‘百想’ 3冠達成! シン・ハギュン 主演 『怪物』が韓国の視聴者を魅了した理由
その後、放送された英BBCの同名ドラマを原作にした『アンダーカバー』も、その面白さは視聴率に反映できず、平均視聴率は5.2%。続いて放送となった『わかっていても』は、視聴率1%を下回った日もあった。
そして現在放送中の新ドラマ『人間失格』。今月4日よりスタートした本作は、初回放送こそ視聴率4%をマークしたものの、その数字は下落し、現在は2%台となっている。
視聴率低迷の理由とは
今年放送された週末ドラマの視聴率がどれも寂しい数字をはじき出してしまい、局側は頭を抱えているようだ。
一体、視聴率が伸びなかった理由は何だろうか。
韓国のネットユーザーたちは「今年は本当に『怪物』に夢中だった。もちろん今も」、「『怪物』だけ見たけど、私にとって今年最高のドラマ」、「『怪物』と『アンダーカバー』がすごく良かった」、「『わかっていても』の視聴率を見て驚いた」など、作品への称賛と、視聴率低迷への驚きが多く見られている。
この反応通り、いずれの作品も出演俳優をはじめ、ストーリーの描写や展開と、隙の無い完璧さを見せている。
ではなぜ、視聴率が低迷してしまったのだろうか。
それは、どの作品も”クオリティーが高すぎる”という点が挙げられる。
韓国ドラマは1話が60分以上と長い作品が多い。それを視聴者が飽きずに見入ってしまうストーリー展開にするには、細かな伏線が敷かれたり、登場人物の心情やそれぞれの人生も描かれて‥と盛りだくさんな内容が詰め込まれている。
つまりドラマの1話が、放送時間も含め、まるで映画を見ているようなボリュームなのだ。
だが、韓国視聴者の多くはドラマを”ながら見”するタイプが多いよう。飲食しながら、スマホをいじりながらというように、何かをしながら視聴しているという。
例えば、韓国で絶大な人気を誇る『ペントハウス』シリーズ。このドラマは、話題性と高い視聴率を獲得した作品だ。
このドラマはストーリーを見失っても、劇中の雰囲気を見れば理解できるといった分かりやすさがあり、さらにドラマの中に仕掛けも多く盛り込まれている。このことから、また続きが見たくなる心理に繋がるよう。
“ながら見”をしたことでストーリーを見失っても、すぐに背景を把握できたり、逆に回収せずとも、その後の展開も見続けられる気楽さがあったりもするのだ。
一方、JTBCの名作ドラマは映画レベルで制作されていることから、”ドラマを見る態勢を整えて”から視聴するのが相応しい作品となっている。つまり、かなりの集中力も必要となってくるのだ。
作品のクオリティーが高すぎるため気軽に見るにはハードルが高い。よって、お茶の間のドラマファンには向いていないのでは、という声も聞かれている。
映画のようなボリュームと内容で届けているJTBCの週末ドラマは、どれも名作が揃っている。視聴者の心の中に”何か”を残す作品ばかりだ。
しかし、優秀すぎるがゆえに人気の指針である視聴率に反映できないという、何とも皮肉な背景が理由であるようだ。
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