ユ・アイン主演の映画『声もなく』が現在日本公開中である。昨年世界の話題を総なめしたNetflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』で若き教祖チョン・ジンスを演じたユ・アイン。『声もなく』では、聾唖(ろうあ)者の貧しい青年という難役に挑戦したが‥。

話題沸騰中のNetflixドラマ『地獄が呼んでいる』。

本作は地獄の使者に死を宣告された者たちの苦悩が描かれ、人間の負の感情を強烈に表現したダークな世界観が大きな話題を呼んでいる。

『地獄が呼んでいる』

『地獄が呼んでいる』(画像出典:韓国Netflix)

サスペンス、アクション、SFなど同居することが難しいジャンルを一気にまとめ上げた傑作だ。

中心人物が入れ替わる斬新な構成も話題を呼び、その中の一人、新興宗教の若き教祖チョン・ジンスを演じた俳優ユ・アインに改めてスポットが当たっている。

そこで今回は、現在日本公開中のユ・アイン最新主演映画『声もなく(2020)』を紹介しよう。

現在36歳(日本年齢)のユ・アインは、高校時代にスカウトされ2003年に俳優デビュー。青春ドラマなどライトな作品で人気を高め、少年のような不器用さを持つ役柄が定着した。

ユ・アイン

ユ・アイン(写真提供:ⓒ TOPSTAR NEWS)

30歳前後では時代劇ドラマ『六龍が飛ぶ(2015)』、『シカゴ・タイプライター~時を超えてきみを想う~(2017)』など重厚な作品に出演する傍ら、映画『ベテラン(2015)』の狂気を帯びた財閥後継者役の怪演で新境地を開拓。

それまでの爽やかなキャラクターから、一気に演技派俳優へと飛躍を遂げた。

『地獄が呼んでいる』のヒットの波に乗り、再注目されているユ・アインの最新主演映画が、現在日本公開中の『声もなく(2020)』だ。

出演作のジャンルにとらわれず、幅広い役柄に挑戦し続ける彼の本作の役柄は、聾唖(ろうあ)者の貧しい青年という難役だ。

ユ・アインが主人公を演じた映画『声もなく』

『声もなく』((C)2020 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEWIS PICTURES & BROEDMACHINE & BROCCOLI PICTURES. All Rights Reserved.)

聴覚障害を抱える設定のため、なんと彼は本作でセリフを一切発せず、表情、身振り手振りのみで主人公テインを熱演。

さらには田舎の冴えない若者の役作りのため増量し緩んだ風貌で撮影に挑み、そのビジュアルの変化も大きな話題を呼んだ。

貧しさから死体処理という闇稼業に加担しているテイン(ユ・アイン扮)と、テインの兄貴分であり保護者代わりのチャンボク(ユ・ジェミョン扮)。

ある日彼らは闇組織が誘拐した少女チョヒ(ムン・スンア扮)の世話を押し付けられてしまう。

彼らは身代金を受け取ることでチョヒの世話から解放されることとなり、奔走の日々が始まる。一方、テインの家で半監禁生活を余儀なくされるチョヒは、初めこそ自身の境遇を嘆くが、次第に生き残るためテインたちのペースに順応し脱出の機会を探り始めていく。

一見すると誘拐騒動を主軸とした単調なサスペンスに思える本作だが、貧困だけではなく、未だ男児が家庭内で厚遇されている韓国社会の家父長制を痛烈に批判するフェミニズムの視点を取り入れた傑作でもある。

幼いながらも弟の方が両親から愛されていると感じ、家庭で居心地の悪さを感じているチョヒは、両親が自分のために身代金を払ってくれないのではないかという不安に駆られている。

テインたちとの疑似家族のような緩やかな時間に安らぎを抱きつつ、自分の存在価値に苦悩する。実は少女チョヒこそがこの作品の中心にあり、見る者に様々なことを問いかける。

口がきけないテイン、裏稼業を請け負うチャンボク、男性優位の社会を憂う少女チョヒ。本作はこれまでのサスペンスやフェミニズムを描いた韓国映画とは違うアプローチで、韓国が抱える様々な皮肉的な現実に対し一石を投じた社会派ドラマでもある。

二転三転するコミカルな展開の数々と、胸が締め付けられるような冷遇された者たちの叫びを同居させた仕上がりは秀逸だ。

監督は長編作品初挑戦の女性監督ホン・ウィジョン。田舎の風景美を全面に打ち出した彼女の映像センスにも注目したい。

そして「声無き主人公」として作品の骨格を担うユ・アインの声無き叫びを見届けて欲しい。

ぜひ自身の目でこのセンス溢れる新人監督と、演技派俳優ユ・アインの化学反応を堪能して欲しい。韓国版『万引き家族』とも評され始めているが、両作の比較も面白そうだ。本作は現在全国で公開中。

『声もなく』予告編(動画出典:YouTube アット エンタテインメント公式)






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