今月2日に幕を閉じたtvN(Netflix)ドラマ『ヴィンチェンツォ』。ソン・ジュンギは本作で非情なマフィアを演じ、新たな魅力を視聴者に見せて作品人気も上昇させた。ドラマが終了し、ソン・ジュンギがスポーツ韓国のインタビューでヴィンチェンツォを演じた心境を明かしている。
映画やドラマで得る喜びの種類はいろいろあるが、中でも俳優の新たな顔を発見する楽しみは、特に強烈な印象を残す。
それは、すでに出来上がっているイメージを崩し、さらに多くの可能性を見せてくれる俳優の努力が、目に見える瞬間のためではないだろうか。その面で、うれしい発見となったのが『ヴィンチェンツォ』と俳優のソン・ジュンギだ。
5月2日に放送された、tvN(Netflix)ドラマ『ヴィンチェンツォ』(演出 キム・ヒウォン、脚本 パク・ジェボム、企画 スタジオドラゴン、制作 ロゴスフィルム)の最終回は、首都圏基準平均16.6%、最高18.4%、全国基準平均14.6%、最高16.3%の視聴率を記録し、自己ベストを更新。地上波を含む全チャンネル同時間帯1位を席巻、有終の美を飾った(ケーブル、IPTV、衛星を総合した有料プラットフォーム基準 / ニールセンコリア提供)。
ソン・ジュンギは、本作で甘いビジュアルながら、殺伐としたマフィアという本性を持つヴィンチェンツォを熱演した。
「馴染みがなく、不慣れでしたが新鮮でうれしい作品でした。初めは『こんな設定で受け入れられるだろうか? オーバーすぎやしないだろうか?』という思いがよぎったんです。ですが、ドラマの設定自体には共感する魅力があり、社会批判的なメッセージを残すには、最高に適切なテーマだったと思います」
ヴィンチェンツォは、冷徹な戦略家であり徹底的な復讐主義者である。韓国に来て、バリエーション豊かな変わり者と向き合い、悪の方式で悪を制する”ダークヒーロー”に変貌した。彼は、弱者に弱く、強者に強い先人の姿と、悪にはさらに大きな悪で対抗する悪党の一面まで兼ね備えた人物だ。
クムガ・プラザの人々と交流する時は、かわいらしくちょっと抜けている感じの雰囲気で笑いを誘い、悪を懲らしめる時は、誰よりも冷徹な顔を見せる。
「悪を悪で断ずるということが、正当化されることはないと思います。それでも混乱しましたね。しかしヴィンチェンツォは、弁明したり自己都合に理解を求めたりはしません。だからファンタジーなんです。ヴィンチェンツォは、成長したと思いますか? 正直よくわかりません。極悪非道な悪人と、同じ変わり者です。それでも、住職との会話、教えを通して、少しだけ内的な成長はあったような気がします。序盤は、ここまで極悪非道な人物だとは知りませんでした。1話撮影の時、5話程度の台本が届いたのですが、僕が思っているよりもはるかに悪人でした。それで、序盤に考えていた基準を捨てて、方向性を変えようと。その時から、敢えて減量したんです」
自身の役名が入った作品は、俳優へのプレッシャーが大きい。ソン・ジュンギにとって『ヴィンチェンツォ』は、2019年のtvN『アスダル年代記』以来、約2年ぶりのドラマ復帰作だっただけに、『ヴィンチェンツォ』は彼がさらに飛躍するステージとなった。これまでに見た事のない、陰気でセクシーな顔、精巧なアクション、豊かな表現、演技でファンの期待に応えることとなる。
しかしソン・ジュンギは「共演者とスタッフの皆さんが、一つになったおかげです」と、ヴィンチェンツォに関わった人々を労う。
「”ワントップ作”というタイトルは、気にしませんでした。でも放送が始まった時に、『あ、僕の役名がドラマタイトルだった!』と、その時は意識しましたね。もし、最初から”ワントップ作”だと思っていたら、むしろこの作品を選ばなかったと思います。主演俳優としての責任感はありましたが、僕一人が力を集めて出すというつもりはなかったです。みんなで一緒に頑張る部分が大半でしたよ。クムガ・プラザのメンバーが、一緒に頑張る過程が、シノプシス(映画やドラマのあらすじ)からはっきり明記されていたし、実際にも俳優陣と密にやりました。僕はとても幸せで、満足して、人々との共同作業がどれだけ重要であるか、改めて感じた撮影現場でした」
劇中、クムガ・プラザの主たち全員が、あふれる個性で大きな愛を受けたが、特にヴィンチェンツォとホン・チャヨン(チョン・ヨビン)の呼吸は、作品興業の核心となった。ソン・ジュンギとチョン・ヨビンは、メイキング映像まで話題を振りまき、温かなやりとりを見せている。
「『ヴィンチェンツォ』が、どうしてもブラックに近いブラックコメディーなので、ラブラインについては意見が分かれたようです。が、僕個人的には満足しています。ヴィンチェンツォが韓国に来て、最も多く一緒にいた人がホン・チャヨンだったので、慰め合って地獄も味わって、助けてあげたいという気持ちが生まれたんですよ。それはごく自然に、あふれてくる感情だと思いません? 共感した部分も適切な分量だったと思います。チョン・ヨビンさんは、全俳優をひっくるめて、最高に情がたくさん湧きました。呼吸は毎日、言う事なしでした。心根が良くて、思慮深い人なんです。ヨビンさんの情熱は、今回とても強く感じました。彼女が、とてつもない俳優となるであろう一歩をご一緒できて、光栄ですね」
ジャンル的に、ブラックコメディーと掲げたドラマ『ヴィンチェンツォ』は、タイトルと強烈に合致する作品だった。洗練された演出とスピード感ある展開、興味を誘うアクションが確実な見どころとして提供され、重いテーマを扱いながらも随所にユーモアを差し込んで、没入感を与えた。
ソン・ジュンギは本作で、コミック、アクション、ロマンスなど、多様な姿を完璧に演じ、唯一無二の存在感を見せつけている。
「コミカルな演技をする時は、新鮮でした。新しい僕の姿を発見したというより、僕が思ってもみなかった演技が生み出されたという気分です。コミカルな演技をやったことがないので心配だったんですが、現場では手練れな先輩がすごく多かったんです。その方たちを見ながら、たくさん学びました。『コミカルだからって笑わせようとしてはダメで、むしろ真剣にやらなければならない』と、知りました。いつも見ている自身の顔なのに、新たな感じがしたことは確かです」
悪を悪で断ずるという”ダークヒーロー”は、もう役を超えて一つのジャンルとして位置付けられている雰囲気だ。多少過激な展開で、非現実的なやり方であっても、もどかしい現実に疲れた視聴者は、カタルシスを感じたのだ。それが、『ヴィンチェンツォ』が最後まで愛された理由でもある。
「勧善懲悪というコードはたくさんありますが、悪人が悪党を打ち破るという内容は、混乱するじゃないですか。やってはいけない事をするのに、また視聴者たちを説得するんですから。ヴィンチェンツォも、価値判断がダメな人物なんです。なので、答えを出さなかったエンディングにはとても満足です。ヒーローという言葉を使ってほしくありません。善人では決してありませんから。それでも痛快であれば、現実に悪人が存在するからなんでしょうね。昨夜のニュースだけ見ても、悪い人はたくさんいましたよ。『ヴィンチェンツォ』で快感を得てしまう方が、たくさんいらっしゃるというのは、ある意味寂しい現実なんだと思います」
今年『ヴィンチェンツォ』でお茶の間に成功的に復帰を果たしたソン・ジュンギは、忙しい日々が続く。昨年、新型コロナウイルスの余波で、撮影が中断されてしまった映画『ボゴタ』を仕上げるという活動が続いているのだ。
「僕は”人は簡単には変わらない”という言葉を、すごく信じています。それでももし、僕が変わってしまったと感じたのなら、とても共感できる台本に出合ったおかげだと思います。心から共感できる台本に、出合うか出合わないかで、演技に天地の差が出ます。パク・ジェボム作家の台本に本当に共感し、またキム・ヒウォン監督に、役がよく表現できるように効率的に演出していただきました。それで、完全に変わったと感じたんです。『ヴィンチェンツォ』で8カ月もの間走って来て、少し休みたいですが、すでに次回作で悩んでいます。逃したくない作品に出合ったら、休まないつもりです!」
本記事は韓国MEDIA NETWORKが運営するスポーツ韓国の記事内容の一部あるいは全部 及び写真や編集物の提供により作成されております。Danmeeは読者様からフィードバックを大切にします。記事に関するご意見や情報提供はこちらのフォームをご利用ください。
ソン・ジュンギ
HISTORY D&C所属の俳優ソン・ジュンギ(ハングル 송중기)。1985年9月19日生まれ。
2008年ドラマ『霜花店 運命、その愛』でデビュー。
2010年に出演したドラマ『トキメキ 成均館スキャンダル』で一躍名を広め大ブレイクしたソン・ジュンギは以降、映画『私のオオカミ少年』、ドラマ『太陽の末裔』などに出演し人気を博した。
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