- 『The 8 Show~極限のマネーショー』(Netflix/2024)のバイオレンスなシーンが刺激的すぎるとして話題だ。
- 視聴者のなかには精神的な疲労を訴える人が現れており、制作・開発をしたNetflixに対し今後の課題として指摘する有識者やメディアまで登場している。
- 議論を呼んでいる点と視聴者の反応、有識者やメディアの主張を紹介する。
『The 8 Show~極限のマネーショー』(Netflix/2024/以下、The 8 Show)が刺激的すぎるとして韓国で話題だ。
一部視聴者が反応したのは、見るに堪えない過激な暴力・拷問シーン。これでもかというほどのバイオレンスな描写に精神的な疲労を訴える人も。
制作・開発したNetflixに対し、今後見直すべきポイントであると指摘する有識者まで登場している状況だ。
配信開始前までは“第2の『イカゲーム』”と大いに期待されていた本作だが、蓋を開けてみると反省会を開かなければならないほど議論を呼んでいる。
『The 8 Show』が議論を呼んでいる理由
物語は、マネーゲームに参加した8人が賞金をかけてバトルを繰り広げるストーリー。8階建てのビルの中で過ごした時間だけお金を獲得できるシステムで、参加者は面白いショーを披露してそれを観ている視聴者から時間を加算してもらおうとするようになる。
このため、ショーは放送回を追うごとに過激さを増していく。最初はリコーダーを鼻で演奏するなどほのぼのとした出し物が続くのだが、最終的には目をそらしてしまうほど残酷な暴力や身体毀損、拷問シーンのオンパレード。
例えば、足の爪を折られたり、歯を抜かれたり、まぶたを固定して目が閉じられないようにし、眠気で下を向くと水に顔が浸かるという精神的にも肉体的にも追い詰められる不眠拷問まで登場する。そしてこれらのビジュアルも最終話に近づくにつれ強烈さを増す。
人の欲や細かな心理描写、現代社会の縮図を見ているかのような人間関係といった見どころが高く評価されている作品ではあるが、バイオレンスなシーンに渋い顔をする人は多い。
視聴者の反応と監督の意図
事実、一部視聴者は斬新だと夢中になって楽しみ、シーズン2を心待ちにしている人も。
しかしなかには精神的に疲弊するとして、「拷問シーンはスキップした」や「過激さを増すことが予想できたので、観るのを途中でやめた」という人が。
また、「暴力と拷問シーンをあれほどまでに長く見せた理由が分からない」と、制作の意図に疑問を示す声もある。
本作は、刺激的なものを追い求めるメディアとそれを煽る今の社会を批判した作品。監督は「(視聴者の)暴力に対する不快感を誘発させるために、あえて暴力的に描いた」と語っている。
つまり目を背けたくなるようなシーンの度合いや残酷さが増していく様を細かくリアリティーたっぷりに盛り込むことで、観る者にメッセージを投げかける意図があったようだ。
有識者と韓国メディアの意見
しかし複数の韓国マスコミからは「暴力を暴力で批判するのは矛盾している」と、監督の表現方法に異論を唱えた。
ドラマ評論家の1人は、『The 8 Show』が『イカゲーム』(Netflix/2021)以上のバイオレンス作品である点と、本作によって韓ドラにおける暴力性のレベルが最高潮に達したとしたうえで、「過度な刺激や扇情的要素で関心を引くことに対して、倫理的な観点から考える時がきた」と、韓国ドラマの今後のあり方について考えを示している。
韓国メディアの韓国日報は、「暴力シーンに説得力を持たせられなかったのは、ドラマ前半部の完成度の低さによるものが理由の1つになっているのではないか」と『The 8 Show』を分析。
Netflixに対しては、「グローバルファンを獲得しているだけに、次のステージに進むべきだ」と、過激なシーンを盛り込むという古い感覚を脱ぎ捨てて韓国コンテンツの成長を念頭に置いたステップアップの必要性を述べた。
また、韓国日報の取材に答えた中源大学社会文化学科のキム・ホンシク教授も、「視覚的な刺激に頼ったコンテンツではなく、ステータスに即したものを作るべき」だと、グローバルコンテンツという自らの立場に合った作品の輩出をすべきであると主張している。
日本でも好評を得るなど、大成功に終わったかのようにみえた『The 8 Show』だったが、韓国の評価は反省会を開かないといけないほど、課題を残した作品となったようだ。
Netflixは公共の電波で視聴者に届けられるドラマとは異なり、過度な暴力シーンが制限されないため、扇情的な作品が増える傾向にあると言われている。
見方を変えれば、そういったエキセントリックさが同OTTの特徴で魅力だと言えるが、『The 8 Show』をきかっけに変わっていくのだろうか。
数々のヒット作を世に送り出してきたNetflixの今後が期待される。
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