- かつて日本で韓流ドラマよりも先に人気を集めたのは、韓国映画『シュリ(1999)』だった。
- 2000年代始め、“チョナン・カン”として活躍した元SMAPの草彅剛も韓国映画の魅力にハマった一人。
- しかし、世界的な大ヒット作を生んだ監督は、その後、苦い経験をすることに‥。
日本で“韓流”という言葉が生まれる前、ある韓国映画が大きな話題となった。
2000年に公開された『シュリ(1999)』である。出演は、ハン・ソッキュ、キム・ユンジン、チェ・ミンシク、ソン・ガンホなど、名前を並べるだけでも豪華な顔ぶれが揃っていたことがわかる。
韓国でも、国内の観客動員数はソウルで245万人、全国で695万人という驚異的な興行を記録した作品。日本でも18億円の興行収入をあげている。
2000年代初頭の日本といえば、SMAP出身の草彅剛が流ちょうな韓国語を話し、“チョナン・カン”という芸名で活躍していた頃。
韓国ではSMAPというグループ名自体もあまり知られていなかったが、単身で韓国へ渡った彼は、自身の番組で日本に韓国の魅力を発信する。
番組は全編韓国語で進行されるスタイルだったため、猛勉強して韓国語をマスターしたという。そんな彼が韓国に興味をもったきっかけも韓国映画だった。
過去のインタビューでも、名優が勢揃いしている『シュリ』にとても感動したと伝えている。
この『シュリ』のヒットに続き、日本では2003年に公開された『猟奇的な彼女(2001)』も爆発的なヒットとなり、韓流ドラマよりも先に韓国映画人気が広まっていった。
日本で注目を集めた韓国映画『シュリ』は、これまでにないスケール感で、韓国でも大きな話題となった作品。
ハリウッド映画を意識した本格的なアクション大作を生み出そうと、製作費27億ウォン(約2億7000万円)という、当時としては規格外の予算で製作された。
出演は前出の通り、今やトップ俳優として知られるハン・ソッキュが主演を務め、国家秘密情報機関の特殊要員として、北朝鮮のスパイを追う主人公を演じている。
その相棒役には、『パラサイト 半地下の家族(2019)』の主演ソン・ガンホが務めている。
本作では、これまでエンターテインメントで大々的に描かれなかった”北朝鮮のスパイ”を大胆に取り入れ、分断された国の悲運をメロドラマとして描いた点で大きな話題を呼んだ。
韓国で一種の社会現象をも巻き起こした『シュリ』は、伝説の名作を取り上げるランキングではトップの常連。
脚本・演出を務めたカン・ジェギュ監督は、「韓国のスピルバーグ」とも言われた人物で、朝鮮戦争に翻弄された兄弟の絆を描いた映画『ブラザーフッド(2004)』の演出と脚本も担当している。
本作は、チャン・ドンゴンとウォンビンが出演。日本で韓流ブームが勃発し、“韓流四天王”として大人気となった2人の共演は大きな話題となり、日本での興行収入は15億円と大ヒット。韓国でも、1000万人超えの観客動員数を誇った。
カン・ジェギュ監督は、『シュリ』に続き、韓国映画界における歴史的な大ヒット作を2つ誕生させた。
しかし韓国ネットでは、彼のピークはここまでだったと言われているよう。理由は『ブラザーフッド』の後に監督を務めた作品が残念な結果となっているからだ。
それは、2011年公開の映画『マイウェイ 12,000キロの真実(邦題)』。
主演は、オダギリジョーとチャン・ドンゴンという日韓スター俳優の夢の共演が実現。スケールも大きく、超大作と前評判は高かった。
ところが、戦争モノとしては考証ミス、あまりにも安易な構成だという批評や酷評を受け、韓国の観客数は300万人も満たせず失敗‥。
悪い作品ではなかったものの、日本を含め海外でも思ったほどの成績を残せず、製作費の半分も回収できなかったという。
その後、2015年に監督を務めた映画『チャンス商会〜初恋を探して〜』も評価は良い方だったが、韓国での興行は3週目に全国100万観客をかろうじて超えた程度で、ヒットにはつながらなかった。
カン・ジェギュ監督は「当分、大作は製作しない」と、しばらく表舞台から姿を消してしまった。
しかし、今年(2023年)、監督が韓国映画界に戻って来る。2023年9月に韓国で公開予定の映画『1947 ボストン』で監督を務めているのだ。
この映画は、第2次世界大戦後に初めて開かれた、1947年のボストン国際マラソン大会に出場した選手たちを描くストーリー。
出演は、ハ・ジョンウ、ペ・ソンウ、イム・シワンといった俳優陣が顔を揃えており、どうやらスケールの大きい作品に再チェンレジするようだ。
かつて『シュリ』『ブラザーフッド』という大ヒット作を生み出しながらも、そこでピークが終わったと言われてしまったカン・ジェギュ監督。
日本の韓流ブームよりも先に脚光を浴びた監督は、新作で再び浮上できるだろうか。
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