4月14日に配信されたNetflixオリジナルシリーズ『クイーンメーカー』(画像出典：Netflix Korea)

4月14日から配信されたNetflixオリジナルシリーズ『クイーンメーカー』が、視聴者の関心を集めている。

『クイーンメーカー』は財閥一家が巻き起こした都合の悪いスキャンダルや事件を隠し、対処する役割を担うフィクサーと、ある人権弁護士の姿を描いた作品だ。

主演を務める女優のキム・ヒエは、最高視聴率28.3%と大ヒットを記録した、JTBC『夫婦の世界(2020)』以後、3年ぶりの作品となる。

そんなキム・ヒエが演じる主人公のファン・ドヒは、財閥企業ウンソングループの未来戦略企画室の室長として、あらゆる手段を使いながら財閥一家を守ってきた人物。

しかし、ある出来事を機に退職し、女性労働者人権弁護人団の代表を務める弁護士のオ・ギョンスク(ムン・ソリ扮)をソウル市長にしようと奔走する。

劇中には実際に起きた政治問題や、財閥家の騒動などを彷彿とさせるシーンが散りばめられており、馴染みのあるエピソードが視聴者の興味関心を引き出しているという。

その中でも特に注目を浴びたのが、作品の冒頭で登場するウンソングループの娘が警察の調査のため、出頭するシーンだ。

『クイーンメーカー』の冒頭に登場する財閥の娘の出頭シーン(画像出典：韓国オンラインコミュニティー)

精神疾患を患っているウン・チェリョン(キム・セビョク扮)は、会長の娘で常務を務めている。しかし、会社では部下に暴言を吐き、時には暴行を振るうなど、パワハラが常習化していた。

そんな彼女のパワハラ被害を受けた従業員が、仕事中の様子を世間に公開し、ウン・チェリョンは暴行罪などの容疑にかけられることに。

出頭のシーンで彼女は、黒のコートとスカーフを着用し、記者の前に登場。その姿がまるで2014年に韓国を賑わせた、”ナッツ・リターン事件”のチョ・ヒョナを彷彿させると話題になっている。

2014年12月5日に起きたナッツ・リターン事件は、大韓航空グループの長女で副会長を務めていたチョ・ヒョナが、ニューヨーク発・仁川行きの大韓航空機内でナッツに関するクレームをつけ、動いていた機体を空港に引き返させたという前代未聞の事件だ。

当時、ファーストクラスを利用していた彼女は、ナッツが袋のまま提供されたことに激怒。他の乗客が搭乗する機内で声を荒げ、責任者を降ろし、最終的に仁川への到着を11分遅らせた。

ナッツ・リターン事件について謝罪するチョ・ヒョナ(画像出典：MBCNEWS YouTube キャプチャー)

この事件は韓国国内のみならず、日本や世界各国でも報道され、パワハラの象徴として大きなイシューとなった。事態を巻き起こしたチョ・ヒョナには世間から非難の声が殺到し、”ナッツ姫”と揶揄されるように。

財閥一家の傲慢さと横暴が明らかとなったこの事件で最高裁は、彼女に懲役10カ月、執行猶予2年の判決を下している。

『クイーンメーカー』で放送されたウン・チェリョンの出頭シーンの髪型や服装は、チョ・ヒョナが事件後初めてメディアの前に姿を現し、国民に謝罪をした際の姿にそっくりだ。

ヘアスタイルだけではなく、脱毛により髪が薄くなった状況までもがしっかりと再現されており、まさにナッツ姫の再臨と言えるだろう。

韓国ドラマではこのように、実際に巻き起こった事件や社会問題をベースに物語が展開していくことが多い。

2022年の年末に放送されたソン・ジュンギ主演のJTBC『財閥家の末息子』や、SBS『模範タクシー2』などの話題作にも、現実社会で発生した事件を想起させる演出が取り入れられている。

さらに劇中では、事件の加害者となる人物に制裁が与えられる場合が多いことから、現実社会ではなかなか晴らすことのできなかった怒りや鬱憤を解消できると、評価する視聴者も少なくない。

視聴者の過去の記憶や怒りを上手く引き出し、カタルシスを体験させる脚本やストーリー展開は、韓国ドラマの魅力であり、大きな強みの一つだ。

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