韓国だけでなく、日本のドラマファンの間でも話題を集めている、tvN『二十五、二十一』。ナム・ジュヒョクとキム・テリという若手スターが主演し、清涼感あふれる青春ストーリーを描いている。しかしながらその背景は、日本人には少々難しい風景が展開されているようだ。

日本の韓流ドラマファンの間で話題を集めている、tvN『二十五、二十一』とJTBC『気象庁の人々: 社内恋愛は予測不能?!』。

『二十五、二十一』の主演はキム・テリとナム・ジュヒョクが、『気象庁の人々: 社内恋愛は予測不能?!』はパク・ミニョンとソン・ガンが主演を務め、共に日本で高い人気を誇る俳優が出演中だ。

どちらもNetflix(ネットフリックス)で配信されており、日本のデイリーランキングのトップ10の常連となっている。ストーリーはもちろん、韓国での放送とほぼ同日、もしくは翌日に配信されていることから、海外ドラマでありながら本国と時を同じくして楽しめるのも人気の理由だろう。

Netflixランキングで接戦を繰り広げている両作品、現在はテンポの良い恋愛模様を描いた『気象庁の人々: 社内恋愛は予測不能?!』がやや優勢のようだ。

一方、韓国では、視聴率が1%弱という僅差で『二十五、二十一』が勝利している。おそらく『二十五、二十一』の世界観は、韓国国民でなければ共感しにくい時代背景がベースとなっているからだろう。

『二十五、二十一』が描く時代背景

tvN(Netflix)『二十五、二十一』は日韓で人気沸騰中

日韓で人気沸騰中、tvN(Netflix)『二十五、二十一』ポスター(画像出典:tvN)

『二十五、二十一』は、”IMF”と代弁され、建国以来類を見ない経済不況に陥っていた1998年の物語。そんな”時代”に夢を奪われた、若者たちの迷いや成長を描いている。

“IMF”とは、国際通貨基金(International Monetary Fund)のこと。その役割は、国際収支が著しく悪化した加盟国に対して融資の実施などがある。

韓国では、1997年に政府と金融当局が招いた通貨危機を阻止するため、IMFから経済救済を受けている。そのため、当時の経済不況の総称として使われる言葉となっている。

“IMF”によって、ここに登場する若者たち、ナ・ヒド(キム・テリ扮)やペク・イジン(ナム・ジュヒョク扮)の人生が、丸ごと揺れる影響を受けるため、本作でこの時代的背景はとても重要だ。

劇中に登場する、1998年を代表する数々の出来事

懐かしの風景がドラマ『二十五、二十一』に登場する

ドラマ『二十五、二十一』に登場する、懐かしの風景(画像出典:tvN)

劇中には、1998年を思い出させるような風景が多く描かれている。

“IMF”の状況もそうだが、韓国の少女漫画『フルハウス』が絶大な人気を博したことをはじめ、ハリウッド映画に対抗して*スクリーンクォータを要求する映画人のデモ、インターネットの普及により流行したパソコンでのチャットなど、当時を象徴するアイテムが登場する。

*スクリーンクォータ‥自国内で製作された映画の上映日数・スクリーン面数などの最低基準を設けて、国内の映画館に上映制限を義務付ける制度(出典:ウィキペデア)

さらに、VHSビデオプレーヤーや、”IMF”から脱却するために、国民が自宅にある金の宝飾品を集めて国に寄付する”金集め”キャンペーン、そして小規模経営の漫画レンタル店‥。『二十五、二十一』には、当時の記憶を呼び覚ます状況や風景がぎっしりと詰まっているのだ。

日本人が100%共感できないこと

ノスタルジックな映像美とストーリーに称賛が寄せられている

ストーリーに加え、ノスタルジックな映像美にも称賛が寄せられている(画像出典:tvN)

『二十五、二十一』は韓国国民にとって、これまで肌で感じてきた過去が描かれている。日本で言い換えれば、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の世界観のようなものではないだろうか。

つまり、自国の転換期に起きた様々な出来事で、国民が痛いほど感じてきたことが存分に盛り込まれている。これは、その時を生きた当人(国民)でなければ、感じることができないからだ。

ナ・ヒドの、もどかしい時代の雰囲気を投げかけるセリフがある。

「人は何かを失っていくようだ。でも私とは関係ない大人たちのこと。私は何かを失うにはあまりにも若い”18″だから。私が持っているものは失うことができない。例えば、夢、憧れ」

このセリフの重みも、当時の時代背景を知っていなければ感じることはできないもの。そういう意味で”日本人には共感できない”には理由がある、につながる。

しかしながら、この時代が与える重みとは裏腹に、『二十五、二十一』は青春ドラマが持つ初々しさやときめき、明るくて陽気な雰囲気がある。

登場人物たちが、時代の重さと真っ向勝負をすると宣言しているような、そんな溌剌さを見せてくれるからだ。

この想いや清涼感は万国共通のものだろう。それが存分に感じられる『二十五、二十一』が、日本のドラマファンを魅了しているのは当然かもしれない。





ナム・ジュヒョク

モデルとして活動後、2014年ドラマ『インヨ姫』で俳優デビュー。

以降、ドラマ『恋はチーズ・イン・ザ・トラップ』(2016)『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』(2016)でバイプレーヤーとして活躍して頭角を現し、同年『恋のゴールドメダル〜僕が恋したキム・ボクジュ』では女優のイ・ソンギョンとダブル主演を務め、人気を博す。

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