【韓流20周年企画-俳優イム・ヒョンシク編】2022年は、日韓同時開催が話題となったFIFAサッカーワールドカップから20年を迎える年となる。振り返ると日本の韓流ブームの歩みも、同じようなタイミングだったのではないだろうか‥。今回は、そんな時代の大ヒット作『宮廷女官チャングムの誓い(2003/MBC)』に出演していた、イム・ヒョンシクの切ないエピソードを紹介する。

最愛の人との別れは、言葉で表現できないほどの悲しみをもたらし、人によっては何も手につかなくなってしまうことがあるのではないだろうか。

しかしそのような状況下でも、役者として最後までその勤めを果たした人物がいる。

大ヒット作『宮廷女官チャングムの誓い(2003/MBC)』に出演していた、俳優のイム・ヒョンシクだ。

俳優のイム・ヒョンシクは、『宮廷女官チャングムの誓い(2003/MBC)』に出演した。

『宮廷女官チャングムの誓い(2003/MBC)』に出演した、俳優のイム・ヒョンシク。(写真提供:ⓒ TOPSTAR NEWS)

名前までは知らなくても同作を見た人なら、“ドックおじさん”と聞けば、ピンとくる人も多いのではないだろうか。

宮中の宴会料理を作る専門料理人として登場し、チャングムの養父でもあった彼は、彼女をわが子のようにかわいがり、窮地の際には救いの手を差し伸べようと奔走する。

イム・ヒョンシクは、『宮廷女官チャングムの誓い』でドックおじさん役を演じていた。

『宮廷女官チャングムの誓い』でドックおじさん役を演じていたイム・ヒョンシク。(画像出典:MBN『かまど』映像キャプチャー)

また、お酒好きで少々いい加減な部分もあるが、お調子者な性格で、どこか憎めないキャラクターを見事に描き出し、視聴者の中には、コミカルなドックおじさんの存在に癒された人もいたほど。

ちなみに、そんな三枚目的な要素のある演技は、ほぼアドリブであったというから驚きだ。

こうして彼は、緊張感の漂うシーンが多い本作で、見る者を笑顔にしホッとさせるスパイス的な役割を務めた。

ところが、その裏では悲しい出来事を経験していたという。同作の撮影期間中に、闘病の末、胸膜炎と肺がんが原因で最愛の妻を亡くしてしまったのだ。まだ50代という若さだったそうだ。愛妻家であったというから、尚更その悲しみには計り知れないものがある。

イム・ヒョンシクは後に、TV CHOSUNの番組で当時を振り返り、「妻が病気で入院している状況で、毎週(撮影に)行き、演技するべきなのかと思いました」「撮影に行きたくなかったです」「“行かないでおこうか”とも考えましたが、できませんでした」と、妻が闘病中に抱いた思いを吐露。

そして、この世を去って以降は、「本当に何もしたくなかった」と悲痛な思いを告白した。

イム・ヒョンシクは、TV CHOSUN『人生ドキュメンタリーマイウェイ』に出演し、撮影当時を振り返った。

TV CHOSUN『人生ドキュメンタリーマイウェイ』に出演し、撮影当時を振り返るイム・ヒョンシク。(画像出典:TV CHOSUN『人生ドキュメンタリーマイウェイ』映像キャプチャー)

彼は、『宮廷女官チャングムの誓い』を降板することなく、最後までその役割を全うしている。

キャスティングの段階で、出演を断るという選択があったのではないかと思われるが、どうやらそれは本人の役者としての決意が多少なりとも関係していたのかもしれない。

イム・ヒョンシクは、1969年にMBCの第1期公開採用タレントとしてデビュー後、「主役にはなれないが、脇役としてドラマの全話に出演できるような役者になろう」と決めたという。以降、仕事のオファーが入ってくるようになり、俳優としての地位を確立した過去がある。

そんな彼にとって、撮影途中での降板はもちろん、配役を断るという決断は難しかったのではないだろうか。また、そもそも、妻の病が重篤化するまで、周囲にはその事実を伏せていたそうだ。

加えて、前出の番組でも「どんなことがあっても、舞台の上で死ぬのが俳優の運命だ」と語り、役者としての覚悟を語っている。

ところが残念ながら2017年以降、現在までドラマに出演していない。

2020年12月に放送されたあるバラエティー番組で、実はカメラを向けられると緊張するあがり症であることを告白し、アドリブの達人とは思えない一面を披露。彼が表舞台に現れた最後の姿となった。

果たして、再びイム・ヒョンシクがお茶の間を賑わせる日は来るだろうか。

(構成:西谷瀬里)






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