東京2020オリンピックの正式種目、アーチェリーの強豪国と言われる韓国に、新たなスポーツの英雄が生まれた。今大会3冠を達成したアン・サン選手だ。”国威宣揚の英雄”としての人生が、彼女を待っているかのように見えたが、予期せぬ議論に巻き込まれている。
東京2020オリンピックで、3冠に輝いたアーチェリー選手、アン・サン。
今大会の韓国代表選手の中で、唯一3冠を達成した金メダリストとなった彼女に、”国威宣揚の英雄”としての人生が待っているかのように見えた。
しかし、ヘアスタイル(ショートカット)や、SNSの書き込みに使用した言葉などから、彼女を”フェミニスト”と断定したネットユーザーから、誹謗中傷を浴びてしまう。

東京2020オリンピックで、3冠に輝いたアン・サン選手(画像出典:サン・サンInstagram)
イギリスのBBCニュースは「アン選手が、”オンライン虐待”を受けている」と報じ、アメリカの日刊新聞紙であるニューヨーク・タイムズは「ショートカットにすると、フェミニスト認定を受ける国」として「女性アイドルもショートカットにすると、ネット上で議論が巻き起こる」と伝えた。
同騒動を扱った、他複数メディアも「フェミニストが”汚いもの”扱いされている」「素直に従わない女性に対する、男性たちからの仕置き」など、韓国社会が抱えている根強い”男尊女卑”の深刻さを伝播している。
韓国社会における”ジェンダーの葛藤”は、今に始まったことではない。数年前から、ネットを中心に”女性”という理由だけで甘受しなければならない事--育児、キャリア制限、セクハラ、DVなどを訴える女性が急増している。
彼女たちの鬱憤(うっぷん)は、やがて”男性嫌悪”へと発展し、フェミニズムを提唱するオンラインコミュニティーが相次いで創設されることに。
そんな女性の動きに影響を受け、”ジェンダーの平等”に賛同する男性も多く現れたが、「被害妄想だ!」と反発する男性たちが、反フェミニズムコミュニティーを作って抗戦(?)の構えを見せると、支離滅裂な男女争いが激化。
女性が「女性は妊娠して子供を産む。だからと言って、何故育児責任まで女性だけが背負わなければならないのか」と訴えれば、男性は「韓国男性は兵役の義務を果たし、家庭ができれば家族を養うために外で一生懸命働く。それに比べて女性は、家の中で家事と育児をするだけなのに、愚痴を言うなんて言語道断だ」といった具合だ。
互いへの愚弄は著名人にまで及び、少しでも目立つ行動や言動をすれば、「〇〇はフェミ」「〇〇は反フェミ」呼ばわりされるケースが急増。一度”認定”を受けてしまった著名人は、前出のオンラインコミュニティーの”餌食”となり、度々猛攻の対象となる。
その1人が、人気ガールズグループTWICE(トゥワイス)のメンバー、ジヒョである。

9人組ガールズグループTWICEのメンバーでリーダーを務めるジヒョ(画像出典:TWICE公式FaceBook)
ジヒョは過去(2019年)、TWICEメンバーに対して悪意を持って議論を煽るようなネットユーザーに言及し「”웅앵웅(ウンエンウン)”している」と、公式SNSに書き込みをしたことがある。
“웅앵웅(ウンエンウン)”とは、日本語で訳すると”ぶつぶつ言う”、”むにゃむにゃ言う”という意味の俗語で、韓国の若者の間で広く使われる言葉だ。
しかし、女性ユーザーの多いオンラインコミュニティーで多く使われていた俗語のため、男性ユーザーはこの言葉をフェミニストが使う”男性嫌悪俗語”に認定。以降、自身のSNSなどに”웅앵웅(ウンエンウン)”という言葉を使う女性ユーザーはフェミニストと断定され、反フェミニストから攻撃を受けることに。
特に、誰もが知る女性アイドルというステータスを持つジヒョへの攻撃は、度を越えるレベルまでに達し、所属事務所であるJYPエンターテインメントが”善処なし”の強硬な法的対応に踏み切ったものの、悪質ユーザーは攻撃の手を緩めていない。
(関連記事)TWICE ジヒョ、昨年MAMAステージに立てなかった理由を説明.. 論議の‘웅앵웅’の意味とは
これは男性ファンの多い女性アイドルが、”男性嫌悪”を主張するフェミニストであるということに対する、ある種の”裏切られた気持ち”が働いたと見られる。
ジヒョを攻撃した悪質ユーザーの大多数は、男性だ。普段から、女性アイドルの”売り”である、セクシーコンセプトやかわいいイメージをSNSで披露していた女性アイドルが「裏ではフェミニストとして、”男性嫌悪”を抱いていたとは」と、”勝手に”怒り出したのである。
アン選手のヘアスタイルのように、ジヒョはイマドキの俗語を使っただけで、今もなお反フェミニストのネットユーザーによる攻撃に泣かされている。
フェミニズムの本来の意味は、平等な権利は性別に関係なく重要とする思想であり、男女平等をなす根幹である。
社会の変化にモメンタムをもたらすための健全な議論は消え、ヘアスタイルだけで、言葉だけで、フェミニスト/反フェミニスト認定を行い、”狩り”のターゲットにされる昨今の韓国社会に、真の意味でのフェミニズムは存在していないように見える。
(関連記事)モモと破局、韓国ネットに広まるヒチョルへの中傷と反フェミニズム、その真相とは
TWICE
TWICE (トゥワイス / ハングル 트와이스)は、2015年に韓国の音楽専門チャンネルMnetで放送されたサバイバルオーディション番組「SIXTEEN」を通して選ばれた9人のメンバーによって結成された。
グループ名の「TWICE(トゥワイス)」には、「良い音楽で一度、素敵なパフォーマンスでもう一度感動をプレゼントする」という意味が込められている。
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