韓国の人気アイドルグループBTS(防弾少年団)が、韓国アーテイストでは初のビルボード”HOT 100″で1位という快挙を達成した。韓国の文在寅大統領が、自身のSNSを通じて祝賀のメッセージを伝えており、メンバーのジンの兵役優遇も囁かれている。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が今月1日、ビルボード”HOT 100″で1位に輝いたBTS(防弾少年団)に対し「K-POPの自負心を高めた快挙」と称賛した。

BTSへメッセージを送ったムン・ジェイン大統領

SNSを通じてBTSへ祝福のメッセージを伝えたムン・ジェイン大統領(画像出典:ムン・ジェイン大統領Twitter)

文大統領はこの日、自身のSNSに「韓国歌手としては、初めてビルボードのメインチャート”HOT 100″で1位になり、K-POP界における新しい歴史を作った」と、BTSの快挙に賛辞を述べた。
続けて「メインアルバムチャート(ビルボード200)で、4回も1位になったことに加え、両チャートを席巻する記録を打ち立てた」とし「本当にすごい! 1位になった『Dynamite』は、新型コロナウイルスで苦しんでいる全世界の人々に、慰めと希望のメッセージを込めて作った曲だというのだから、さらに意味深い。 国難に苦しむ韓国国民の、大きな慰めになるだろう」と綴った。

文大統領の”BTS接点作り”

文大統領の”BTSとの接点作り”は、今回が初めてではない。

BTS

BTS(写真提供:©スポーツ韓国)

2018年5月、BTSがビルボード200で初めて1位となった時も、自身のSNSで「歌を愛する7人の少年と、彼らの翼”ARMY”おめでとうございます」と祝賀したことがある。

また同年9月には、米ニューヨークで開かれた国際連合の行事(Generation Unlimited)に、大統領夫人のキム・ジョンスク氏がBTSと同席し、彼らの演説を見守った。

(関連記事)韓大統領夫人からBTS(防弾少年団)へプレゼントされた「イニ時計」は一体なに?

さらにその年の10月、文大統領夫妻がフランスを国賓訪問した際、パリで行われた”韓-仏 友情コンサート”に参加したBTSの公演を観覧している。
BTSの公演が終わると、大統領夫妻はステージに上がり、BTSメンバーを激励するとともに、自ら手を伸ばして握手を求めた。再会(?)を果たしたキム夫人は、メンバーとハグを交わすシーンも見せた。
国賓訪問だけに、警護対策上ステージに上がることは容易ではないため、これは”大胆な激励”と言わざるを得ない


“韓-仏 友情コンサート”(動画出典:YTN korean)

その後、文大統領夫妻は”大統領グッズ”として、支持者の間で有名な腕時計をメンバーにプレゼントしている。

韓国の最高権力者である文大統領にとって、BTSとの”接点作り”は重要な仕事でもある。何故なら、文大統領には比較的若い支持者が多いためだ。
“若い大統領”という印象作りはもちろん、BTSが音楽に盛り込んできた世界観――”不安”と”未来”を理解する助力者を自任する、チャンスを手に入れられる。

日本とは違い、国民の直接投票で国家元首が選ばれるため、韓国の政治家は昔から国民と共感できる分野――芸能、スポーツ、宗教などに積極的に触れ合う機会を設けてきた。

BTSジンの入隊延期の可能性浮上

文大統領からの祝賀があったその翌日、BTSメンバーの兵役免除の請願が上がったと、複数の韓国メディアが報道。
2018年ビルボード200で1位となった時から「国のために著しく貢献したので免除するべき」という世論が形成されたのだ。このような動きには、一部の国会議員も肯定的な回答をしている。
バルンミレ党(正しい未来党)所属のハ・テギョン議員が、その一人だ。

2018年9月にハ議員は「バイオリンやピアノなど、クラッシック音楽をする人が、海外の有名コンクールで優勝すると兵役免除となる。一方で、BTSのように大衆的な音楽活動をしているアーティストが、米ビルボードチャートで1位を獲得しても、兵役免除の対象にならない」と、現行兵役特例システムに問題を提起した。

文大統領の側近の一人とされる、民主党のアン・ミンソク議員は、2019年9月にあるラジオ番組に出演し「BTSは国家の為に、十分貢献している。時代は変わった。五輪での金メダルより、ビルボードでの1位がもっと大きな国威発揚だ。時代の変化に合わせて、合理的な改善を急がなければならない」と、兵役特例の改善を呼びかけた。

2019年11月、韓国国防部は、現行の兵役特例制度を維持するとの方針を固めたため、BTSへの兵役特例は不可能である。

(関連記事)BTSと4月韓国総選挙を切り離せない理由.. 兵役特例も?

しかし現在、韓国政府と与党が入隊対象者の中で、”大衆文化分野で優秀な者、且つ文化体育部長官がその功績を認める者”は、入隊延期を認める兵役法改正案を立案すると伝えられており、この改正案が通過すれば、BTSメンバーはその恩恵を受ける”第1号”になる可能性が高い。周知のとおり、BTSの活躍によりK-POPと韓国に対し、海外からの関心は非常に高くなっている。長い間、スポーツやクラシック音楽、科学技術、司法研修性などに制限されている兵役特例対象者の範囲を広げるべきという議論に、終止符が打たれるかもしれない。

BTS(防弾少年団)

兵役法改正案が通過するのか、そしてBTSはその恩恵を受ける”第1号”になるのか‥(画像出典:BTS FaceBook)

このような動きのなかで、文大統領の祝賀メッセージは、示唆しているものが多い。国民的な合意を得るためにも、それなりの”前置き”は必要なのだ。政治権力を持つ集団の支持層を拡大するためのパフォーマンスなのか、K-POPのグローバル化を進めている韓国政府の苦肉の策なのかは不明だが、免除にはならなくとも、メンバーの入隊延期により、得られる価値は十分にあると思われる。



BTS

BTS(防弾少年団)は2013年6月13日にデビューした韓国の7人組男性アーティストグループで、パン・シヒョクのプロデュースにより誕生した。

HYBE(旧Big Hitエンターテインメント)所属。

デビューアルバムは『2 COOL 4 SKOOL』、デビュー曲は『No More Dream』。グループ名の”防弾少年団”には、10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬくという意味が込められている。

ハングル表記は”방탄소년단(バンタンソニョンダン)”から”バンタン”と呼ばれることが多い。

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