世界的な人気を誇るBTS(防弾少年団)の名が韓国政治家により無断使用されている。4月に行われる予定の韓国総選挙にBTSはどのように悪用されるのか。

今年4月に韓国では、総選挙が行われる。

韓国の国会

韓国の国会(画像出典:韓国慶北日報)

4年に1度の国会議員を選ぶ選挙だ。
今年の総選挙からは、投票できる年齢が18歳と低くなり関心を集めている。

韓国は、日本と政治システムが多少違い、国家の元首が大統領であり、’大統領選’と’国会議員選’といった大きな政治イベントが2つある。
国会議員の役割は日本と同じで、法律案の提出・審議・法律の制定である。
(一方大統領は、行政や外交、軍事などの実権を持つ)

三権分立を採択している韓国では、法を作る国会議員で構成された国会は、大統領に対抗できるため、大統領の仕事に対して幅広い助言や制約することができるほど’力’を持っている。

そんな国会議員の選挙という国家の大イベントにBTS(防弾少年団)の名が使われるのではと懸念の声が上がっている。

BTSの名を口にする韓国政治家

韓国の有名政治家の中では、BTSの名を’無断使用'(?)した人が何人かいる。

今や世界的な人気と影響力を誇るBTS

今や世界的な人気と影響力を誇るBTS(写真提供:©スポーツ韓国)

バルンミレ党(正しい未来党)所属のハ・テギョン議員がその一人だ。

2018年9月にハ議員は「バイオリンやピアノなどクラッシック音楽をする人が、海外の有名コンクールで優勝すると兵役免除となる。一方BTSのように大衆音楽をするアーティストが、米Billboardチャートで1位をしても兵役免除の対象にならない」と、現行兵役特例システムに問題を提起した。

もう一人同趣旨で問題提起をした政治家がいる。

民主党のアン・ミンソク議員だ。
2019年9月にアン議員は、とあるラジオ番組に出演し「BTSは十分国家のために貢献した。時代が変わった。五輪での金メダルよりBillboardでの1位がもっと大きな国威発揚だ。時代の変化に合わせて合理的な改善を急がないとならない」と、兵役特例の改善を呼びかけた。

アン議員は兵役特例だけではなく、意外なところでもBTSを口にしたことがある。
2019年1月に韓国連合ニュースとのインタビューで「9月に北朝鮮でBTSが出演するコンサートを推進しようと思っている」とし「昨年年末BTS側にコンサート出演を提案し、日程調整が可能か問合せした」と明かしたことで物議を醸した。

アン議員は、ムン・ジェイン大統領の側近の一人とされており、ムン政権の’切り込み隊長’の一人だ。

政治家は何故BTSを好むのか

他にも、BTSのジョングクの故郷・釜山市のある国会議員は、自身のツイッターに「私はジョングクを保有している(釜山の)国会議員!」とコメントを掲載し「無理やり結び付けるな」と批判を浴びたことがある。

選挙期間ではなくても、BTSの’無断使用’は横行していた。

そして、4年に1度の総選挙の選挙戦がいよいよ’開戦’を迎えようとしている。
今回の選挙戦では、どれだけの無断使用が見る人の眉をひそめさせるだろうか。

BTSを政治的に如何に活用するかによっては、得票数が変わる。
上述したが、今回の総選挙からは18歳も選挙権を持つようになるため、BTSの名を上手く使えば、BTSのファンの多い若年層から多くの票が集められる。

なお、BTSの名を使うと議員個人のメディア露出度がグーンと上がる効果がある。
BTSは、選挙区の住民らに自分の名前を覚えさせる’特効薬’になるかも知れない。

では、彼らはどのようにBTSの名を使用するか。
流石に「BTSと写真撮りました!」「メンバーのOOのお父さんと親交が深いです!」といった馬鹿げた自慢はしないだろう。
何か政策公約につながるような材料なしで、BTSの名を無断使用するのは難しい。

現時点で一番可能性が高いのは、上述したハ議員とアン議員が使った’手’のように、またしても’兵役ネタ’になる可能性が高い。

予定通りであれば、BTSのジンが今年入隊する。そして残りのメンバーが順次入隊する。
そうなると、当分の間完全体としてのBTSを見ることは難しくなる。それ故にBTSの兵役特例に期待を寄せる人も少なくない。

しかし兵役特例は、国会議員が制定する法律の下位規範の’施行令’であり、国会議員ではなく大統領や総理が制定できるため、必ずしも国会議員自らが進み出る事案ではない。

このような事実を知っているBTSファンは、国会議員のBTS無断使用を声を荒げなら批判しているのだ。

彼らの魂胆が見え見えだからだ。

BTS兵役特例の可能性は

2019年11月、韓国国防部は現行の兵役特例制度を維持するとの方針を固めた。

五輪やサッカーワールドカップなどの国際大会で良い成績をおさめたスポーツ選手らやクラッシック音楽界で著しい業績を残した音楽家が対象となるという制度である。
韓国国防部は、公正性に欠けるという意見を受け止め検討に入ったが、現段階では維持するとの立場を公式に発表したのだ。

当分の間は、BTSへの兵役特例は不可能である。

一部では条件付きの兵役特例の可能性も言及している。
例えば、国の行事などに参加することを条件に芸能活動や海外への渡航を制限的に認めるという案である。

これには反対意見もある。
政府の外交政策や方針にBTSのイメージを悪用する恐れがあるとの意見である。

昨年日韓関係が冷え切ったときに、歴史問題や領土問題の宣伝モデルにBTSを起用しようという意見を呈した韓国人だっている。
BTSメンバーら本人もファンも、長年築いてきた’BTS’というイメージが国の政策に振り回され穢されることは望んでいない。

なお、選定基準も曖昧である。
米Billboardのチャートを基準とするか、グラミー賞を基準とするか、日本のオリコンチャートを基準にするか..それぞれ由緒あるチャートであり賞であるのに、何を基準にして兵役特例の対象を選ぶのかは難しい問題と言わざるを得ない。

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昨年アメリカメディアとのインタビューで「(軍への入隊は)韓国人として自然なことであり、我々は招集を受けた時にはそれに応じ、最善を尽くす準備が出来ている」と語ったジン

もちろん、彼らもアイドルとして活躍できる限られた時間に入隊をしたくはないだろう。
しかし、国や国民のために避けては通らない道だという認識と意志を持っている彼らを、あらゆる美辞麗句を駆使し揺さぶる政治家らをみると苦々しい気持ちとなる。

韓国のことわざで「芸は熊が見せ、金は主人が取る(재주는 곰이 부리고 돈은 주인이 받는다)」という言葉がある。
苦労した人は報酬をもらえず、第三者が横取りするという意味である。

昨今の政治家による’BTS無断使用’を見ていると、政治家の目にBTSは’芸の上手い熊’にしか映ってないという印象を受ける。

来る4月の選挙では、’熊の芸’ではなくちゃんとした制作公約を韓国の国会議員に期待してみたい。

BTS

BTS(防弾少年団)は2013年6月13日にデビューした韓国の7人組男性アーティストグループで、パン・シヒョクのプロデュースにより誕生した。

HYBE(旧Big Hitエンターテインメント)所属。

デビューアルバムは『2 COOL 4 SKOOL』、デビュー曲は『No More Dream』。グループ名の”防弾少年団”には、10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬくという意味が込められている。

ハングル表記は”방탄소년단(バンタンソニョンダン)”から”バンタン”と呼ばれることが多い。

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