ナム・ジュヒョクは、これまでも様々なドラマでその実力は認められていたが、『二十五、二十一』の繊細な演技が評価され、いよいよ本格的にスター俳優のレールに乗り出した。そんな彼の映画出演2作目となった、リメイク版『ジョゼと虎と魚たち』を紹介する。

俳優のナム・ジュヒョクが、tvN(Netflix)ドラマ『二十五、二十一』の出演をきっかけに、人気と知名度が急上昇している。

"旬の俳優"として注目を浴びているナム・ジュヒョク

現在”旬の俳優”として注目を浴びている俳優のナム・ジュヒョク。(写真提供:ⓒ TOPSTAR NEWS)

これまでも様々なドラマでその実力は認められていたが、『二十五、二十一』の繊細な演技が評価され、いよいよ本格的にスター俳優のレールに乗ったと見てもよいのではないだろうか。

そこで今回は、モデルを経て人気俳優へと進化したナム・ジュヒョクが主演を務めた映画『ジョゼと虎と魚たち(2020)』を紹介したい。この独特な深い世界観にハマること間違いなしだ。

本作は、小説家の田辺聖子氏の1985年に発表された小説で、平凡な大学生と、足に障害を抱える孤独な女性の恋を描いたラブストーリーである。生々しい生活感の中に、ファンタジックな演出を散りばめた作風が多くの人を魅了し、韓国でもファンが多いと言われている。

日本では、2003年に妻夫木聡、池脇千鶴のダブル主演により映画化された。

そして韓国版は、映像美で知られるキム・ジョングァン監督によりリメイクされたのだが(2000年12月韓国公開)、リメイクというよりも“新解釈版”としての呼び声も高く、作品に新たな息を吹き込んだとして好評を得る。

“新解釈版”としての呼び声の高い『ジョゼと虎と魚たち』韓国版

“新解釈版”としての呼び声の高い韓国版『ジョゼと虎と魚たち』。(Original Film (C) 2003 “Josee, the Tiger and the Fish” Film Partners. All Rights Reserved.
(C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved)

韓国版のジョゼ役にはドラマ『知ってるワイフ(2018/tvN)』などで知られる、女優のハン・ジミンを起用。そしてもう一人の主人公であり、ジョゼと出会う平凡な大学生ヨンソクには、本作が映画出演2作目となるナム・ジュヒョクを抜擢した。

2人は、公開前年に放送されたドラマ『まぶしくて-私たちの輝く時間-(2019/JTBC)』に続く共演とあり、大きな注目を集めた。

本作が支持され続けているポイントは、”障害者と健常者の恋と苦難”という点だけにフォーカスせず、平凡な大学生のモラトリアムを描いたほろ苦い青春ストーリーとしても楽しめる点だろう。韓国版も、大筋は日本版と一致しているので、少しずつ近付いていく2人の距離に胸が締め付けられるはず。

ジョゼと虎と魚たち

韓国版『ジョゼと虎と魚たち』Original Film © 2003 “Josee, the Tiger and the Fish” Film Partners. All Rights Reserved.
© 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

家の匂い、食卓の料理の味まで伝わるような生活感に満ち溢れていた日本版は、生身の男女が求め合う様子が印象的に映る作風であった。対する韓国版はセリフを抑え目にし、映像美を全面に打ち出したしっとりとした雰囲気に包まれている。

幼い頃から本に囲まれて育ったジョゼ(ハン・ジミン扮)は、豊かな想像力を持つ聡明な女性として描かれ、日本版とは異なる魅力が与えられた。その凛とした佇まいは、孤独に生きることを受け入れている強さのようでもあり、ハン・ジミンのイメージにふさわしい役柄だ。

対するヨンソク(ナム・ジュヒョク扮)は、将来に不安を抱く一方で、女性関係には少々だらしない今時の若者。将来に漠然とした不安を抱く日々の中、ジョゼという非日常的な存在と出会い、大切な事のシンプルさに気付いていく。だがその関係は永遠に続くものなのか‥。

『ジョゼと虎と魚たち』

韓国版『ジョゼと虎と魚たち』Original Film © 2003 “Josee, the Tiger and the Fish” Film Partners. All Rights Reserved.
© 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

優しく正直なだけでは生き残れない、厳しい韓国社会に飛び込んでいく一歩手前の若者の心情を、ナム・ジュヒョクは本作で見事に表現している。ドラマ『スタートアップ:夢の扉(tvN/2020)』で演じたナム・ドサン同様、不器用で平凡な青年に完璧になりきる彼の憑依力に、俳優としての高いポテンシャルを感じざるを得ない。

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水族館のシーン、ジョゼが「水槽に入れられた魚たちのことを不自由だと思うけど、魚から見たら人間の世界の方が不自由に見えるのかも」といったセリフ呟く。何気ないセリフだが、このセリフこそが韓国版における2人の関係の本質にも思える。

“私は水槽の中で孤独で不自由に生きているわけではない。不自由なのはヨンソク、あなたの方ではないの?”そんなメッセージにも受け取れるセリフが胸に響く。

日本版とは異なる、韓国版オリジナルのクライマックスにもご注目を。

より叙情的に、見る者に解釈を委ねるような韓国版『ジョゼと虎と魚たち』。美しい四季折々の映像美と、主演2人のみずみずしい愛を、ぜひ受け取って欲しい。

韓国版『ジョゼと虎と魚たち』予告編(動画出典:YouTube シネマカフェ)





ナム・ジュヒョク

モデルとして活動後、2014年ドラマ『インヨ姫』で俳優デビュー。

以降、ドラマ『恋はチーズ・イン・ザ・トラップ』(2016)『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』(2016)でバイプレーヤーとして活躍して頭角を現し、同年『恋のゴールドメダル〜僕が恋したキム・ボクジュ』では女優のイ・ソンギョンとダブル主演を務め、人気を博す。

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