- 韓国映画は独特の世界観があり、本国のみならず海外の映画ファンからも支持されている。
- 世界的に認められるようになるのに尽力したのは、韓国が誇る映画監督のパク・チャヌクとポン・ジュノだ。
- 本記事では、両者を天秤にかけ共通点と相違点を紹介、それぞれの魅力を韓国映画初心者に伝える。
映画ファンから高い支持を得ている韓国映画。
アメリカ映画やフランス映画、インド映画などそれぞれ独自のカラーがあるが、韓国が作る作品にも独特の世界観があり、一度ハマると抜け出せない魅力が。
そんな映画界を先頭に立って牽引し韓国映画の世界的地位を向上させてきたのが、本国を代表する映画監督パク・チャヌクとポン・ジュノだ。
巨匠と言われる2人は、作品を通して映画界を盛り上げ長きに渡って活躍、世界に名を轟かせている人物だ。
本記事ではそんな両者を天秤にかけ、これまで彼らが手掛けた作品を例に挙げながらその共通点と相違点を紹介。韓国映画初心者なら、まず両者の作品からご覧になってはいかがだろうか。人により好みは分かれるが、観たことを後悔しない作品揃いだ。
共通点
冒頭で触れたとおり両監督は、韓国映画に対する世界の意識に変革をもたらし、ステータスアップに貢献してきた存在。常に新しいものを作り出している。
事実それが評価され、パク・チャヌク監督は多くの人を震撼させた復讐サスペンス『オールド・ボーイ』(2003)が、『第57回カンヌ国際映画祭』でグランプリを受賞、韓国映画史上初の快挙を成し遂げた。
その後も、『渇き』(2009)が同映画祭で審査員賞を、昨年は『別れる決心』(2022)が監督賞に輝き、『お嬢さん』(2016)は『第71回英国アカデミー賞』で外国語作品賞を受賞した。
一方ポン・ジュノ監督は、貧困層と富裕層の格差社会を描いたブラックコメディー『パラサイト 半地下の家族』(2019)が爆発的大ヒット。
『第72回カンヌ国際映画祭』でパルムドールに輝き、『第92回アカデミー賞』では、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4冠を達成、外国語映画が作品賞を受賞するのは初めてのことだったのだとか。
その他、各映画祭で賞という賞を手にしており、その数は目を疑うほど。彼の受賞歴を超える監督は今後そう簡単には現れないことが予想される。
『殺人の追憶』(2003)、『グエムル -漢江の怪物-』(2006)、『母なる証明』(2009)、『スノーピアサー』(2014)なども国内はもちろん海外の授賞式でも高い評価を得た。
素材とテーマ
韓国の映画界における先駆者的存在の2人だが、両者には決定的な違いが。その1つが作品の素材やテーマだ。
パク・チャヌク監督は、人間の内面に対する探究・復讐・愛・欲望のような人の本性に対する考察を物語のメインにしている傾向がある。
例えば『オールド・ボーイ』は、理由を告げられないまま約15年間も監禁されていた男が、突然解放されて復讐を繰り広げる物語なのだが、犯人への強い復讐心から平凡だった男が暴走する様が強烈に描かれていた。金槌を振り回し、敵の歯まで抜いてしまうほど変貌を遂げた姿が印象的だ。
また、同作と合わせて彼の”復讐三部作”と言われる作品の1つ『親切なクムジャさん』(2005)でも、美しい外見からは想像もできないほど壮絶な復讐作戦を実行しようとする主人公が観る者を驚かせた。
一方ポン・ジュノ監督は、パク・チャヌク監督同様に人間の本質的な部分に着目した作品もあるが、どちらかといえば社会に対する批判や政治・経済など社会問題を主に取り上げる。
韓国で実際に起こり国民を震撼させた” イ・ヒョンホ君誘拐殺害事件”を忠実に描いた『殺人の追憶』は、事件を追う刑事たちのふがいなさなどが描かれており、初動時の捜査ミスや証拠の捏造、誤認逮捕といった韓国警察の体制や問題点を指摘するものだった。
また『グエムル -漢江の怪物-』は、在韓米軍がホルムアルデヒドを漢江に流した事件をモチーフにした作品で、これが原因となり川が汚染され怪物が誕生するというストーリー。環境破壊をテーマに世情を風刺した内容になっている。
演出スタイル
演出方法の面でも両者は異なっていると言われている。
まずパク・チャヌク監督は、華やかでスタイリッシュなものが目立つ。特に『オールド・ボーイ』と『渇き』(2010)は、独特の映像美と演出で韓国映画の新たな可能性を見出したと評価されたほど。
また『お嬢さん』は、R指定されるほど強烈な暴力シーンや露出シーンが含まれるが、物語に違和感なく溶け込んでいるのが特徴で、一部からは芸術作品であるとの声が上がった。過激な描写は時としてそこだけが注目されがちなもの。しかし見事に美しい世界観を作り出している。
それに対しポン・ジュノ監督は、どこまでもリアリティーを追求した見せ方が観る者の目を引く。
すでに紹介したとおり、作品の素材とテーマを社会に当てている作品が多いだけに、リアルさを大切にしているようだ。
その極みが『パラサイト 半地下の家族』。半地下の家に住んでいるという主人公一家の設定は、映画のために作られたネタではなく韓国では実際に存在する。貧困層を象徴するものとして登場し、特に劇序盤でその生活ぶりを詳細に取り上げ、裕福な暮らしをする一家との対比を明確に示した。
また『殺人の記憶』や『グエムル -漢江の怪物-』なども、韓国社会のダークな一面をリアリティーたっぷりに描き出して大きな反響を得た。
役者の活かし方
2人は、役者を作品にどう活かすのかという点においても大きく異なる。
まずパク・チャヌク監督の場合、演技者の潜在能力を最大限引き出すことで有名だ。
代表例は、まだ日本に第1次韓流ブームが訪れる前に大きな話題を呼んだ『JSA』。ソン・ガンホをはじめイ・ビョンホン、キム・ユジンが実力を存分に発揮、本作をきかっけに役者としてさらにステータスアップしたことで知られる。
しかしポン・ジュノ監督は、俳優の演技よりもキャラクターと物語に集中するタイプと言われており、役柄に役者を当てはめていくスタイルなのだとか。
『パラサイト 半地下の家族』で、ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダムなど、個性あふれる俳優陣の演技をうまく調整、完璧なアンサンブルを作り出したとの評価を得ている。
*****
作品の題材から演出スタイル、役者との関わり方まで異なるパク・チャヌク監督とポン・ジュノ監督。相違点があるからこそ、今日の韓国映画界が多彩な魅力を放っているのかもしれない。
次期作がすでに決定している2人、引き続き彼らの活躍に注目しているファンは多いだろう。
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