10月に日本公開される韓国映画『82年生まれ、キム・ジヨン』。劇中で主人公ジヨンの夫役に扮した俳優コン・ユの魅力を、作品を通じて分析してみよう。
女優チョン・ユミと俳優コン・ユが夫婦役で共演する韓国映画『82年生まれ、キム・ジヨン』。
韓国では、原作となる小説は130万部を突破する大ベストセラーとなり、映画に至っては公開後1か月で350万人を動員するという大ヒットを記録した作品だ。
主人公のジヨンは1歳になる娘を持つ主婦だ。3歳年上の夫デヒョンとともにソウル郊外で暮らしている。
韓国の82年生まれの女性で最も多い名前を持つ彼女は、パッと見は平凡な女性だ。だが、誕生から学生時代、就職、結婚、出産に至るまで、人生において様々な女性差別に苦しみながらも必死に生きてきた。
そして彼女はある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したように振る舞い始める。一体何が彼女を抑圧し続け、ついには精神を崩壊させたのか。
ジヨンの半生を振り返りながら、韓国のジェンダー意識に関わる社会問題を織り交ぜ、女性が負う重圧や生きづらさを映し出した作品だ。
『82年生まれ、キム・ジヨン』の日本公開を10月に控え、韓国SBS芸能ニュースが俳優コン・ユの演技を分析した2019年の記事があるので紹介したいと思う。
自然な日常演技を披露
シナリオを読んですぐに、本作への出演を決めたというコン・ユ。
韓国のトップスター俳優である彼の次回作は、業界からも大衆からも常に関心を寄せられていた。
映画『密偵』、『新感染 ファイナル・エクスプレス』で成功を収めてきた彼が選ぶ次回作は当然、主人公であり大作だろうと予想されていたが、コン・ユは『82年生まれ、キム・ジヨン』のデヒョン役を選んだ。これは多くの人が驚いた選択だった。
コン・ユは「自分の年齢に近い役柄の演技は入りやすいです。年齢が低かったり、逆に高い場合には人為的な要素が入るしかないのですが、そのような面でデヒョン役は良かったと感じています」としながらも、”韓国の最も平凡な夫”であるデヒョンを演じるために肩の力を抜いた芝居をし、見た目の緊張感をほぐすため体重を10キロ近く増やしたという。
このように密かに傾けた努力は自然な日常演技で滲み出ている。コン・ユは日常演技でも長所を見せてくれる俳優なのだ。
キャラクターを掴む努力
演技をする時にはどんな表情をしなければならないとは考えず、相手俳優との呼吸が重要だと話すコン・ユ。
今回のキャラクターについて「デヒョンは主に観察者の立場じゃないですか。ジヨンをずっと見つめる立場だったので、それを忠実にしようと思いました」と明かしている。
デヒョンは映画の中で”トーン&マナー”が掴みにくいキャラクターだ。小説よりは鮮明にキャラクターと役割を構築しながらも、キム・ジヨン中心の映画で”観察者”としての役割に忠実でなければならなかった。コン・ユは監督との長い対話の末、デヒョンのカラーを決めることができたそうだ。
コン・ユの持つ貫禄
コン・ユ扮する主人公の夫、デヒョンは妻のジヨンが育児や家事で苦しんでいることを知りながらも、積極的に手を差し伸べたり、環境そのものを改善する意志を示していないキャラクターだ。実家の保守的な空気と妻の精神的な苦痛の間で、彼もストレスを受けたはずだが、小説ではデヒョンの視線や声を特には見せてくれなかった。
一転、映画に生まれ変わった『82年生まれ、キム・ジヨン』では、デヒョンのキャラクターはより鮮明になった。
コン・ユという俳優のイメージを貫通したデヒョンは、演出や脚本が意図したかどうかに関係なく、それ自体に”第2の生命力”が与えられている。それこそがコン・ユの持つ俳優としての貫禄であろう。
まとめ
『82年生まれ、キム・ジヨン』に参加したコン・ユは、「私はこの作品の結末が、映画という特性によく合う選択だと思います。ある明確な解決策を提示するのではなく、”それでも大丈夫だ”という希望の結末です。小説と映画のジャンル的特性は確かに違いますから」とし「映画1本でいきなり全てが変わるわけではないでしょう。ただ、みんなで話し合おうということです」と語っている。
観客の心に何かを残すことが出来れば、その作品は成功だと言われるのが”映画”というものだ。
彼の言葉から察するに、コン・ユは本作でチョン・ユミとともに、観客の心に確かなものを残しているのは言うまでもないだろう。
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