- 世界中に多くのファンを抱える韓国ドラマ、その制作費が天井知らずの上昇を続けている。
- 最近は、韓国での視聴率が1桁という作品も多いが、なぜ巨額の制作費をつぎ込むことができるのだろうか?
- 本記事では、海外で好評を受けているドラマ『無駄なウソ-誰にも言えない秘密-』を事例に取り上げ、その理由を紐解く。
今夏、韓国だけでなく、海外でも大人気となったDisney+(ディズニープラス)オリジナルの『ムービング』。その制作費は、約650億ウォン(約65億円)と言われている。
韓国ドラマは、日本のドラマとは桁違いの制作費がかけられており、その額はここ数年でぐんぐんと跳ね上がっている。
今や世界が注目するKコンテンツは、求められるクオリティーが高く、ストーリー設定や映像美など強いこだわりのもとに制作される。
制作費の急騰要因は、俳優の出演料の高騰や、労働環境改善による撮影スタッフ人件費の値上げ、CGなどの強化による作業費など様々だが、コロナ禍以降のグローバルVOD企業の成長も影響し、一気に高騰した。
しかし、日本同様、韓国でもテレビ離れが加速中。ドラマはVODで楽しむという人も多いため、視聴率は1桁というドラマが大半で、2桁の壁を突破すれば”大成功”、”ヒット作”と評価されるようになっている。
ここで一つの疑問が湧いた。韓国国内で1%や2%といった低視聴率の作品も多い中、なぜ韓国ドラマは高額な制作費をかけることができるのだろうか?
そこで本記事では、あるドラマを事例に取り上げ、韓国ドラマが1桁視聴率でも巨額の制作費をつぎ込む理由を紐解いてみたい。
11月13日、韓国メディアの韓国経済が、韓国を代表するドラマ制作会社「スタジオドラゴン」が、驚くべき実績を出したと報じた。
今年第3四半期の売上は2174億ウォン(約217億4千万円)、営業利益は219億ウォン(約21億9千万円)と、第2四半期よりもそれぞれ33%と34.4%アップしたというのだ。
「スタジオドラゴン」といえば、斬新なストーリーやスケールの大きい作品を数多く輩出し、韓国ドラマの世界的人気を牽引する存在として知られている。
他社と共同制作しているドラマも多いが、『愛の不時着(tvN/2019)』『ザ・キング:永遠の君主(SBS/2020)』『二十五、二十一(tvN/2022)』『ザ・グローリー(Netflix/2022)』『イルタ・スキャンダル(tvN/2023)』など、その年を代表する作品を多数手掛けている。
しかし、「スタジオドラゴン」が制作に携わった全作品がヒットした訳ではない。では、多くの費用をどこから捻出しているのか。
韓国経済では、その秘密を語るのに、9月に放送を終えたtvNドラマ『無駄なウソ-誰にも言えない秘密-(以下、無駄なウソ)』を例に挙げている。
本ドラマは、俳優キム・ソヒョンとファン・ミニョンというある程度ネームバリューのある役者が主演を務めている。
ストーリーは、嘘を言う時の声を区別することのできる特殊な能力を持つ女性と、過去に殺人事件の容疑者になった売れっ子作家が真実を暴いていくロマンティック・コメディーという人気ジャンルもの。
しかし、韓国での視聴率は2~3%を行ったり来たりで、残念ながら4%の壁を打ち破ることはできなかった。
ところが、配信された海外の141カ国で、視聴占有率1位を占める「大当たり」を記録したのである。
さらにすごいのは、配信されたのがNetflixやDisney+など代表的なグローバルVODではないという点。
北米・欧州などは「Rakuten Viki」、東南アジアは「Viu」、日本は「U-NEXT」、台湾は「friDay影音」など、ローカルOTTで配信されている。
『無駄なウソ』の場合、地域ローカルOTTを新しい収益源として確保したのが功を奏したのである。
「スタジオドラゴン」によると、第3四半期基準で全体売上の76.6%は海外での売上であり、その理由は、地域別のローカルOTTに販売するドラマ契約単価が高くなったおかげだという。
関係者は「新作ドラマの平均販売単価が、最近の3年間で3倍以上も上がった」と明かしている。
さらに「東南アジアでは、“韓国ロマンスコメディーは信じて見る”という認識がある」とし、「このようなジャンルを東南アジアローカルOTTに供給すれば、他のプラットフォームよりさらに高い価格で販売できる」と説明する。
その良い例が、今回海外で人気を集めている『無駄なウソ』であり、ドラマのジャンル別にターゲット市場を見極めて細分化すれば、より収益性を高めることができるのだ。
ドラマ制作の業界関係者は「ローカルOTTでサプライチェーンを多角化すれば、特定OTTに対する依存度を低くして収益安定性を追求でき、グッズなどの2次創作物などを通じた追加収益も期待できる」と話す。
実際に、韓国での評価はイマイチでも、海外では好評を博したドラマも多い。つまり、海外市場で活躍し高い実績が残せれば、巨額の高い制作費をつぎこんでも、採算がとれる状態に持ち込めるという訳だ。
韓国ドラマを評価する上では、どうしても韓国での視聴率に目が行きがち。
しかし「韓国での視聴率は1桁? 2桁?」と本国での成績だけでヒット作かどうかを判断する時代は、もう終わりを迎えるようだ。
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