北朝鮮の将校と韓国の財閥令嬢が描く、スリリングな極秘ロマンス『愛の不時着』。Netflixを通じて世界で配信され、日本を含めた海外でも社会現象になるほどの人気ドラマだ。本作で主演を務め世界的な女優となったソン・イェジンだが、実は15年前にも日本で社会現象を巻き起こしていた。絶大な人気を博した彼女の出演作とは。

北朝鮮の将校と韓国の財閥令嬢が許されない南北の恋に落ちてしまう、tvNドラマ『愛の不時着』。

『愛の不時着』メインポスター(写真提供:©スポーツ韓国、画像出典:tvN)

動画配信サービスNetflixを通じて世界へと配信された本作は、ラブストーリーでありながら、国家情勢を背景にした緊張感溢れるシーン、コミカルで微笑ましい仲間とのやりとり、複雑な家族模様など、さまざまな要素を盛り込んだ見ごたえのある展開で世界中の視聴者を魅了した。

主演を務めたヒョンビンとソン・イェジンは、本作でその名を世界中に知らせ、一躍、韓国を代表するグローバル俳優となった。

俳優ヒョンビンとソン・イェジン(画像出典:tvN)

このように『愛の不時着』により知名度を上げたと思われているソン・イェジンだが、実は日本において15年前から”人気を誇る韓国女優”として位置づけられている。

そのキッカケとなったのは、2005年10月に公開された映画『私の頭の中の消しゴム』だ。
本作でアルツハイマー病に侵されたヒロインを演じ、日本中を涙で包んだあの女優こそが「ソン・イェジン」である。

2005年公開作『私の頭の中の消しゴム』。繊細な演技は多くの称賛を得た(写真提供:©スポーツ韓国)

映画『私の頭の中の消しゴム』は、 日本のドラマ『Pure Soul~君が僕を忘れても~』(2001)を原作に、若くしてアルツハイマー病になった女性スジンと建築家チョルスの純愛を描いた作品だ。

建設現場で現場監督として働くチョルス(チョン・ウソン)と社長令嬢であるスジン(ソン・イェジン)は、ひょんなことから知り合い、互いに惹かれ合っていく。現場監督から建築家へと転身したチョルスは、晴れてスジンと夫婦となり、公私ともに幸せな日々を送っていた。
だが、スジンが若年性アルツハイマー病に侵されしまう。徐々に記憶障害が進行し、日々失われていくスジンの記憶。遂には夫であるチョルスのことも記憶から消されてしまう。悲しみと葛藤に暮れるチョルスであったが、チョルスは再びスジンと生きていこうと決意する。

主演のチョン・ウソンとソン・イェジン(写真提供:©スポーツ韓国)

スジン役を演じたソン・イェジンは、若い女優として消化しにくい演技を完璧なまでに演じ、実力派の清純女優とともに”メロクイーン”の名を欲しいままにした。

一方、反抗的な雰囲気を醸し出す”青春アイコン”であったチョン・ウソンは、建設現場で働く青年チョルスに扮し、ワイルドで男臭いキャラクターを完璧に演じたことや、ラブストーリーというジャンルに挑戦したことでも話題を集めた。

美男美女のお似合いカップルとしても話題に(写真提供:©スポーツ韓国)

現実と隣り合わせにある病と切ない純愛物語に加え、このような俳優たちの要素、さらに海外メディアや作品にちなんだターゲットを絞った試写会の開催など、さまざまな話題から多くの注目を浴びることとなった。

言葉にならないほどの切ない純愛物語は、瞬く間に観客の心を掴み、韓国では公開後3週連続で第1位となり、当時メロ映画史上最多である観客動員数256万人を記録した。
また、日本では公開後、4週連続で第1位に輝き、30億円以上の興行収入(累計)を上げる大ヒットを記録している。これは日本で公開された韓国映画史上第1位であり、公開後、15年間も韓国映画史上最高の興行記録を維持している。

余談であるが、2020年2月、ポン・ジュノ監督作『パラサイト 半地下の家族』(2019)がこの記録を超えることになる。

世界で活躍して欲しい女優、それがソン・イェジン!(画像出典:ソン・イェジンInstagram)

アカデミーを賑わせた作品が登場するまで、日本の映画界で記録を保持し続けた『私の頭の中の消しゴム』。

『愛の不時着』でさらなるブレイクを果たしたソン・イェジンだが、15年も前から日本の映画ファンの心に住み続け、純愛物語のヒロインとして親しまれてきた。ソン・イェジンのハリウッド進出が噂されている中、このような日本での長い人気が後押しとなって新境地での活躍を披露してくれたら‥と願うファンも多いことだろう。

本作は、『愛の不時着』で見せた演技の原点とも言える表情が多く披露されており、まだあどけなさが残るソン・イェジンが演じるヒロインは15年経った今でも色褪せず印象深く心に刻まれる。ドラマでファンになった方々にもぜひ観ていただきたい作品である。


私の頭の中の消しゴム(字幕版) – Trailer(動画出典:Youtube)



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