多くのドラマで扱っている”不倫”という題材。これまで泥沼化した醜い愛憎シーンで溢れていたが、その描写に大きな変化が見られているようだ。現代ドラマで描かれる新しい不倫劇とは。
その昔、「不倫は文化」や「ゲス不倫」なる言葉が流行語のように駆け巡っていた。
許されない恋であり、ひとつの家族を壊してしまう”不倫”という魔物。
現実世界では決して一線を越えてはならないものだが、架空の世界、つまりドラマの世界では必要不可欠な要素となっている。
近年では、シンドロームを巻き起こしたJTBCドラマ『夫婦の世界』や、現在放送中である『優雅な友達』など、醜い不倫劇を面白く描いているドラマが多く見られ、不倫描写の新しい幕開けを感じさせた。
不倫は文化‥なるフレーズが大手を振っていた時代、つまりひと昔前に描かれていた不倫劇と、現在の不倫劇では描き方もキャラクターも随分と変わってきている。
以前は、醜く、少々うんざりする愛憎劇が展開された”泥沼不倫”なる描き方が多くみられていた。
さらに不倫相手と言えば、派手な見た目、キツイ性格、徹底的に家庭を壊す‥といった”極悪”な印象を与える女性像で描かれ、不快で怒りを買うキャラクターばかりだった。
では、現代ではどうだろうか。
『夫婦の世界』では、主人公である女医チ・ソヌ(キム・ヒエ)の夫、イ・テオ(パク・ヘジュン)の不倫が描かれている。
夫の不倫により夫婦間に亀裂が入り、熾烈な争いが勃発。加えて、妻と不倫女性の間でも静かなる火花を散らす‥といった手に汗握る展開を見せていた。
よくある不倫劇に見えるが、これまでと決定的に違うのが”不倫女性のキャラクター”と、妻が自ら復讐するという”スリリングな要素”だ。
まず、不倫相手であるヨ・ダギョン(ハン・ソヒ)は、これまでとは打って変わって新しい不倫女性像を誕生させた。
見た目も性格もキツく同性から嫌われる‥といった忌まわしい不倫女性というキャラクターを、優雅で才色兼備という魅力的な女性へと昇華させている。
また、妻であるチ・ソヌも”現代的な妻”というキャラクターを確立させ、ストーリーにあらゆる要素を絡ませてくる。
女医であり、夫と一人息子に囲まれ、誰もが羨むような公私ともに完璧な人生を歩んでいる。このような自立した女性であるゆえ、夫の不倫に衝撃を受けながらも泣き寝入りすることなく、”復讐”という選択をする。
妻からの容赦ない熾烈な復讐は、目が離せないほどのスリリングさに包まれ、さらに先の読めない展開を導き、これまでに見たことのないような不倫劇を描くことに成功した。
現在、JTBCで放送中の『優雅な友達』もそうだ。
5組の中年夫婦のよくある日常を軸に、不倫を描きながらも、嵐のように押し寄せる殺人事件のサスペンス、20年間隠してきた真実を最後まで追いかけるミステリーなど、新しい要素が取り入れられている。
このように、最近のドラマでは”不倫”そのものにスポットを当てるのではなく、サスペンスをはじめとしたさまざまな要素を絡ませ、スリリングでモダンな雰囲気が際立つ展開で描かれているのが特徴だ。
あわせて、不倫相手役も、裕福な家庭で育ち、知性と美貌を持ちあわせ、何事にも冷静であり‥といった”完璧”で、魅力あふれる女性像であることが増えてきた。
逆に言えば、このような女性であるからこそ、一度ハマったら抜け出せないという究極の恐怖感も滲ませている。
この相乗効果がより刺激的な展開を見せ、不倫という要素をスタイリッシュに描いているようだ。
もちろん、新旧ドラマともに”不倫”の本質は何ら変わってはいない。不貞であり、裏切りであり、家庭をも壊す、あってはならないことだ。
厚かましさの象徴である”不倫”の本来の姿を変えることなく、スタイリッシュかつモダンに描く”不倫劇”へ変化を遂げている現代のドラマ。
斬新な描き方に加え、「ならば、その結末はいかに?」という伏線のような面白みも含ませていることが視聴者を魅了している理由のよう。
『夫婦の世界』も『優雅な友達』も共に”不倫+α”で描かれ、これこそが驚異的な視聴率を記録する大ヒットドラマへの近道かつトレンドであるようだ。
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