現在、韓国ドラマ界の新トレンドとなっている”マーラー(麻辣)味ドラマ”。先ごろ放送を終えた『ペントハウス』もそう呼ばれる作品のひとつ。絶大な人気を支持し、続編までもが制作されることになった”マーラー(麻辣)味ドラマ”の魅力に迫る!

視聴方法が増えたことで、放送局の”視聴率”が低迷している韓国ドラマ。
そのようななかでも大健闘を見せたのが、今月5日に最終回を迎えたSBS『ペントハウス』だ。これ以前、同じく視聴率の1人勝ちを見せていたのがJTBC『夫婦の世界』で、ともに最高視聴率(首都圏)30%を記録し2020年を代表するドラマとなった。

韓国ではいま、この2作品のことを”マーラー(麻辣)味ドラマ(以下、マーラー味ドラマ)”と呼んでいる。
ひと言でいえば”ドロ沼劇”なのだが、それとひと味違うのは”マーラー味ドラマ”の方がよりスタイリッシュに仕上がっているという点だ。

ドラマ『ペントハウス』は3人の女性たちの歪んだ欲望と不動産の成功を描いている

3人の女性たちの歪んだ欲望と不動産の成功を描いたドラマ『ペントハウス』ポスター(画像出典:SBS)

最近の韓国ドラマ界でトレンドとなっている造語、”マーラー味ドラマ”。
その意味は、韓国で人気の高いメニュー、中国のマーラー鍋からきているよう。マーラー鍋は様々な香辛料と刺激的な辛さからくる独特の風味で人々を虜にしているが、その反面、持ち味である強めの味や香りが苦手と感じる人も少なくない。
そのような好き嫌いが出るものの、ついまた食べたくなってしまうという中毒性があることから、このような状況に陥ってしまうドラマを指すようになった。

つまり、独特で刺激的ゆえに好き嫌いがあり、批判もされてしまうがつい見てしまう‥といった作品だ。これを代表したのがまさに『ペントハウス』である。

本作の脚本を担当したのはキム・スンオク作家だ。彼女はこれまで、希代の悪役キャラクターを作り出し、俳優名よりもキャラクターの名前の方を有名にさせてきた。強烈な設定でクセになる辛さをとことん見せてくれる作家として知られている。

ドラマの見どころのひとつはオム・ギジュンやイ・ジア、キム・ソヨンら演技派俳優たちの熱演

オム・ギジュンやイ・ジア、キム・ソヨンら演技派俳優たちの熱演も見どころのひとつ(画像出典:SBS)

キム・スンオク作家が描く『ペントハウス』は、これまでのドロ沼劇と比べると、そのスタイリッシュさは歴然。ドラマの舞台や登場人物、テーマまでもが韓国の”いま”を映し出している。

本作は、江南(カンナム)に位置する高級マンション”ヘラパレス”を舞台に、3人の女性たちの果てしない欲望を描いたサスペンス劇だ。韓国社会において多くの関心を集める教育と不動産をキーワードに掲げ、富裕層の家族がそれそれの欲望に翻弄されていく様をリアルに描き出している。

さらに、韓国社会を風刺するストーリーに加え、映像の美しさも際立った。
舞台となるマンションにはスタイリッシュで高級なインテリアが揃えられており、彼らが身を包むファッションもトレンドを押さえている。誰もが想像するようなベタなキャラクターではなく、誰しもが憧れるようなキャラクターが描かれているのだ。

そんな彼らが自身と子どもの成功を得るためなら手段を選ばず、殺人さえも犯す。このような極端かつあり得ないシチュエーションで展開され、痺れるような刺激的描写が人気を得ているのだ。

マーラー味ドラマは身近なテーマであることから、主に主婦からの人気が高い

身近なテーマであることから、主に主婦からの人気が高いマーラー味ドラマ(画像出典:SBS)

『ペントハウス』をはじめ『夫婦の世界』、そして2018年に放送された『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』など、刺激的な設定で極限の感情爆発を見せることから論議の中心に立ってしまうものの、その人気は常に高い。このような挑発的で深刻な社会イシューを極度に描き、視聴者を釘付けにする刺激を醍醐味とする”マーラー味ドラマ”。

ファッション界と同様、ドラマのトレンドもその歴史は繰り返されており、韓ドラブームの先駆けとなったドロ沼劇の後には、シリアスな犯罪劇、ヒューマンロマンス、サイコ系、青春群像劇と順を追ってトレンドとなった。
そしていま、再びトレンドとして戻ってきたのが、ドロ沼劇だ。以前よりもスタイリッシュさを加味した2020年のドロ沼劇は、作品と同じく呼び名も進化し、”マーラー味ドラマ”として視聴者の心をしっかりと掴んでいる。







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