- 韓国放送局には、キャスティングが終わっても、いまだ編成枠が決まらず、保留となっているドラマが“100本”あるという。
- この状況は、韓国のトップ俳優が出演する作品も例外ではない。
- 韓国メディアのスポーツ東亜は、徐々に深まる韓国ドラマ界の“危機”を報じている。
去る5月、韓国メディアの日刊スポーツ(isplus.com)は「危機のKコンテンツ – 編成が決まっていないドラマが80本・・」という見出しで、最近の韓国ドラマ界が抱える状況を報じた。
それは、韓国の放送局には編成枠が決まらず、放送や配信が保留となっているドラマが約80本もある、という現状を伝える内容だった。
そして7月に入り、今度は同国メディアのスポーツ東亜(sports.donga.com)が「ドラマの危機‥キャスティング・企画を終えたが、プラットフォームを決められなかったドラマが100本」と、さらに深まった韓国ドラマ界の“危機”を伝えている。
記事によると、最近は、スター俳優をキャスティングしたドラマでさえ、公開するチャンネルやOTT(オンライン動画サービス)を確保できずにいるため、放送界内外で危機感が増幅しているのだという。
その理由は、放送局やOTTがそれぞれ深刻な財政難に陥り、“月火ドラマ”や“水木ドラマ”枠の廃止や、オリジナルシリーズを減らすなど、視聴者に作品を披露する機会自体が減ってしまっているからである。
そして、俳優のキャスティングまで終えたにもかかわらず、公開プラットフォームが決まらずにいるドラマは、すでに100本に達していることが分かった。
その中には、韓国のトップスターが主演を務める作品も含まれている。
例えば、最近はSBSの人気シリーズドラマ『浪漫ドクターキム・サブ』で知られるハン・ソッキュ主演の『朝が明けるまで』や、米ドラマをリメイクしたパク・シフ主演の『メンタリスト』。そして、日本ではそこまで知名度は高くないものの、韓国では大物俳優であるチャ・インピョが出演する『青瓦台の人々』などは、すでに撮影を終えて1年近く経った現在でも、編成が保留になったまま‥。
有名な俳優らが出演する作品だからといって、すぐに放送日や配信が決まる訳ではないのだ。
前出のスポーツ東亜は「供給が需要をはるかに越えた“ドラマ過飽和”の副作用がすでに随所に出ている」と分析する。
制作会社側では「来年のドラマ制作本数が、今年の3分の1程度に減るだろう」との予測も出ているという。
すでに俳優のオーディション回数の減少は明らかで、あるエージェンシーの関係者は「演技で生計を立てる脇役や端役の間で、“このままでは働き口が無くなりそう”という不安感が大きくなっている」と話す。
ドラマ放送界に色濃く影を落とす編成不安のせいで、ユニークな素材を発掘したり、新人を起用する試みも減っているようだ。
あるドラマ制作会社の関係者は「最近は1話当たり平均15億ウォン(約1億5千万円)まで制作費が急騰している。ドラマを作っても公開可否自体を保証できない状況が続き、ロマンス、スリラーなど人気素材とスターだけにこだわるしかなくなった」と打ち明ける。
コロナ禍以降、Netflix(ネットフリックス)などグローバルVOD企業の登場により、ドラマの制作費が一気に高騰した。
そのため、広告収入が減っている放送局側は、高い制作費をかけても高い視聴率を獲れないドラマ枠の編成を減らしたり、低予算のドラマを量産するような対応を始めている。
安東大学融合コンテンツ学科のキム・ゴンスク教授は「今後ますます、興行が保証された作品以外は良いクオリティーを出すのが難しい環境になれば、韓国ドラマでこれ以上の発展を期待するのは難しい」とし、「ドラマ市場全般で既存にあった方式を破り、新しい収益構造や素材、企画などを戦略的に開発しなければならない」と今のドラマ界が抱える問題を強調している。
韓国トップ俳優の出演作であっても、放送や配信がすぐに決定する訳ではないという状況は、韓国ドラマ界に迫る“危機”の深刻さを、よりリアルに想像させる。
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