- 近年日韓両国では、互いの国で支持を得たドラマや小説、漫画などの作品をリメイクまたは影響を受けて制作するケースが目立っている。
- しかし、原作が人気作なだけに比較され、視聴者から酷評を受けることもしばしばだ。
- 自国の文化に合うように作り替えたことで、不発に終わる作品がいまだ多い中、約15年前に韓国版・日本版ともにヒットした『魔王』をご紹介。

映画『スマホを落としただけなのに』(左)、ENAドラマ『紙の月』(画像出典:Netflix、ENA)
韓国ドラマは、いまや日本で絶大なる支持を得るコンテンツに成長した。
高い人気ぶりから、日本リメイク版が制作されるほどだ。ドラマのみならず、ウェブ漫画やウェブ小説などを原作とした作品も増えつつある。
それは韓ドラ界も同じこと。今年2月には、志駕晃のベストセラー小説『スマホを落としただけなのに』と同名のタイトルでイム・シワン主演の映画が公開。
原田知世主演でドラマ化、宮沢りえ主演で映画化されたことがある角田光代の柴田錬三郎賞受賞小説『紙の月』も、4月から韓国版の放送がスタートした。キム・ソヒョンが主人公を演じ注目を浴びている。
両国は互いに、各分野で好評を得た作品をリメイク、またはインスピレーションを受けるなどして刺激し合い、エンターテインメント界を盛り上げているようだ。
しかし残念ながら、不発に終わったり酷評を受けたりするケースが比較的多いのも事実。最近では『六本木クラス』(テレビ朝日/2022)がその好例だ。
『梨泰院クラス』(JTBC/2020)の世界観を大切にしながらも、日本で受け入れられやすいよういくつかの設定を変更したところ、賛否両論が巻き起こったのを覚えている人は多いだろう。
人気作が原作となっているだけにどうしても比較され、期待したほどの評価が得られないケースもある。
しかし約15年前、韓国版・日本版ともに評判が良くヒットした作品が。生田斗真と嵐のメンバー大野智がW主演を務めた『魔王』(TBS系/2008)だ。
本作は、オム・テウンとチュ・ジフンが主人公に扮し、同名のタイトルで2007年に韓国で放送され好評を得たドラマのリメイク版。

日本でリメイク版が放送されたKBSドラマ『魔王』(画像出典:韓国オンラインコミュニティー)
当時日本では韓ドラを見るのは主婦層に偏り、わざわざDVDを借りてきて視聴していた時代であったにも関わらず、大きな話題となるほど注目された。
『第12回日刊スポーツ・ドラマグランプリ』では優秀作品賞をはじめとする全4部門でトロフィーを獲得、『第12回2008年度日刊スポーツ・ドラマグランプリ』や、『第5回月刊TVnavi』、『ドラマ・オブ・ザ・イヤー2008』などでも、栄誉ある賞を複数受賞している。
物語は、芹沢直人(生田斗真扮)が起こした過去の殺人事件に対する、成瀬領(大野智扮)の復讐を描いたストーリーで、大筋は韓国オリジナル版と変わらない。
しかし年齢や文化、設定、人間関係などが変更または簡素化、削除された部分が。
原作で生田斗真の役は、17歳頃に事件を起こしたとされていたが15歳に変わっており、一部の間では、1997年の酒鬼薔薇聖斗事件を意識したのではないかと推測されている。
このため、日本人に馴染みのある要素を盛り込んだようだとの見解を示す人も。
その他、大野智の役が弟を殺された兄で、兄弟関係が逆に。彼の母の死因が事件のショックに起因する交通事故だったのに対し、日本版では心臓発作が原因とされた。
また最後に主演2人が対峙するシーンでは、成瀬領に呼び出された芹沢直人がその真意を知っていたのか否かという点も異なっている。
それに加え、原作が全20話だったのに対し11話で構成、短縮されたことで登場人物のドロドロとした関係性が比較的あっさりしていたとの声もあった。
これ以外にも本作には複数の相違点が。しかし、前出で紹介したように数多くの賞を獲得し日本人視聴者からも絶賛されている。
『魔王』はオリジナルを上手くリメイクし、見事成功を収めた作品と言えるだろう。
『魔王』主題歌 嵐 – truth [Official Music Video]
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