- 毎年、大きな話題となる『百想(ペクサン)芸術大賞』。しかし今年のノミネート作品は、別の意味で注目を集めている。
- 今回、Netflix(ネットフリックス)やケーブルチャンネルの作品が多く、なんと地上波ドラマは候補ゼロ‥。
- VOD作品が強さを見せ、地上波作品の影響力の低下が顕著に表れる結果となっている。
「ドラマと言えば地上波」と言われた時代は、もう過去のことのようだ。
4月28日に韓国で開催される『第59回 百想(ペクサン)芸術大賞』の最終ノミネート作品が発表された。
『百想芸術大賞』は韓国で年に1度行われ、“韓国のゴールデングローブ賞”とも呼ばれるほど、高い権威を誇る授賞式として知られている。
しかし、今年(2023年)はなんと地上波ドラマからのノミネートは、“ゼロ”。地上波作品の影響力の低下が、浮き彫りになってしまった。
世界に“韓流ブーム”を巻き起こす、きっかけとなった名作『冬のソナタ』は、韓国の公共放送局KBSで放送されたドラマ。
当時の韓国は、KBS、MBC、SBSといった地上波テレビ局のドラマが主流で、2010年代前半頃まで優位を占める存在となっていた。
日本のNHKがこれまでに放送した韓国時代劇も、韓国の地上波で放送されたドラマが多く、どれもクオリティーの高さが評価された名作ばかり。
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しかし、2010年代中盤にから後半にかけては、tvN、JTBCを筆頭に、ケーブルチャンネルが台頭し始める。
2010年後半には、好きな時間に好きなドラマを視聴できる動画配信サービスが始まり、Netflix(ネットフリックス)やDisney+(ディズニープラス)、TVINGなどが人気を見せている。
『百想芸術大賞』は、TV部門(ドラマ、芸能、教養)、映画部門、演劇部門があり、過去1年間に放映、上映、公演された作品の出演者と制作スタッフが表彰される。
ドラマは、2022年4月1日から2023年3月31日まで、地上波、総合編成、ケーブルチャンネル、OTTサービス、ウェブなどに提供されたコンテンツなどが審査対象。
以前は、地上波やケーブルチャンネルが主となっていたが、プラットフォームが多様化したことで、OTTサービスの作品も追加となり、Netflixなどで世界的な人気を集めた話題作もノミネートされるようになった。
昨年は、地上波のMBCドラマ『赤い袖先(原題/袖先赤いクットン)』に主演した2PM(トゥーピーエム)のイ・ジュノが“男性最優秀演技賞”を受賞。
また惜しくも受賞できなかったが、“女性最優秀演技賞”には、KBS2『恋慕』に出演したパク・ウンビンがノミネートされていた。
しかし今年は、地上波ドラマがノミネート段階で全滅、という残念な結果に‥。
どうして地上波ドラマが選ばれなかったのか、その理由には、2つの要因が考えられる。
まずは、地上波テレビ局の“制作費の不足”。たとえば、公共放送であるKBSは、国民からの受信料で制作費を捻出している為、企業と組み、スポンサー料でまかなうことが難しい。
地上波テレビ局の制作費は国からの制限があるため、ケーブルチャンネルのように莫大な金額を投資することができないのだ。
昨年日本で大ヒットしたドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、ENAというケーブルチャンネルから誕生したが、その制作費は150億~200億ウォンとも言われている。
(関連記事)韓流スターと海外ロケもないのに・・「太陽の末裔」よりも制作費が高い「ウ・ヨンウ」
また、ソン・ジュンギが出演し、最終回が20%を超える高視聴率を叩き出した『財閥家の末息子』も、ケーブルチャンネルのJTBCで放送されたが、もともとは地上波の局が放映権を購入しようと動いていたという。しかし、高い制作費が大きな壁となった。
地上波のテレビ局は、お金を持っているように思えるが、年々広告収入は減り、赤字続きとも言われている。
そして2つ目の理由は、“表現の制限”。
韓国ドラマでは、過激なシーンや教育上よくないとされる演出が含まれる場合、年齢制限の“R指定”が設けられることがよくあるが、地上波テレビ局の場合、政府傘下の監視機関や市民団体が厳しく目を光らせているという。
一方で、Netflixやケーブルチャンネルは、最近大きな話題となった『ザ・グローリー』のように“復讐”や“いじめ”といったテーマの作品や、暴力シーンなどでもリアルな描写が多い。
そういった作品と比べると、表現に制限がある地上波のドラマには、どうしても物足りなさを感じる視聴者が増え、「内容が薄い」といった反応を呼んでいる。
今回、地上波ドラマの『百想芸術大賞』ノミネートゼロという状況は、これら2つの理由が人気の低迷につながっていると見られている。
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