これまで数多くの人気ドラマを誕生させた韓国の放送局JTBCだが、2021年下半期のドラマは苦戦を強いられている。韓国を代表するトップ女優を看板に掲げたものの、視聴率が不振。その背景には何があったのだろうか。
『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』、『夫婦の世界』、『梨泰院クラス』など、これまで数多くの人気ドラマを誕生させてきた韓国の放送局、JTBC。
輝かしい栄光は過去のものとなってしまったのか、秋にスタートした2021年下半期ドラマは苦戦を強いられているよう。
今期のJTBCドラマには韓国を代表する女優、チョン・ドヨン、コ・ヒョンジョン、イ・ヨンエらが顔を揃えている。しかし、彼女たちの華麗な帰還もJTBCドラマの視聴率に翼をつけることはできなかった。
まず、10月24日に終幕したチョン・ドヨン主演の土日ドラマ『人間失格』は、ドラマ全体を貫く暗い雰囲気のため、大衆性や視聴者の共感を失い、視聴率1%台という屈辱を味わった。
現在放送中の、コ・ヒョンジョン主演の水木ドラマ『あなたに似た人』も状況は同じだ。短編小説をドラマ化した本作は、不倫の叙事と共に、息の詰まるような人物間の心理戦や、存在についての深い洞察などを描いたが、視聴率は2%台を記録している。
イ・ヨンエ主演作に注目が集まるも、結果は苦戦
こうした状況の中、10月30日にイ・ヨンエ主演の土日ドラマ『調査官ク・ギョンイ』がスタートした。
オリジナルストーリーである本作は、「ゲームとお酒が世の中の全て」という警察出身の保険調査官が、完全犯罪に偽装された連続殺人事件を暴くコミック探偵劇。イ・ヨンエの約4年ぶりのドラマ復帰であることや、彼女が”コミック”に挑戦することでも大きな関心を集めた作品だ。
ベールを脱いだ『調査官ク・ギョンイ』は、想像以上にクオリティーの高い作品に仕上がっていた。何よりもトレンディーな演出が目立ち、適材適所に使われたBGMもストーリーへの没入感を高めるのに一役買っている。
しかし初回視聴率は、期待とは裏腹に低迷してしまった。
前作の『人間失格』も高くはない視聴率であったことや、午後10時30分という遅い時間帯からのスタートの影響も大きかったようだ。
最近、スタートしたtvN土日ドラマ『智異山』の場合、前作『海街チャチャチャ』が10%以上の視聴率を記録し、チョン・ジヒョンが主演というアピールから第1話が9.1%と好調な出だしを見せている。しかし、『調査官ク・ギョンイ』の場合は、これと反対の立場に立ってしまった。
地上波やtvNなどの固定視聴者が多いチャンネルとは違って、現在、JTBCは視聴層が多く抜けているため、視聴率が低くならざるを得ない限界も存在する。
トップ女優の主演にもかかわらず、視聴率低迷になった背景とは
JTBCをはじめ、韓国の放送局が制作するドラマには、それぞれのカラーが色濃く出ている。JTBCの場合、トップ女優たちが主演を務める作品には、”現実的なストーリー”が多いようだ。
『人間失格』、『あなたに似た人』は、現実に満足できないトラウマを持った女性や、苦しくもがくような日々を送るなど、ややダークなストーリーが展開されている。
『調査官ク・ギョンイ』こそネガティブさは少ないものの、現実を生きる女性が主人公であることから、視聴者にリアリティーを突きつけた。
ドラマの世界で”現実から解放”を感じたい視聴者も多い中、これらの作品は生々しいまでのネガティブな現実を描いてしまい、視聴者に疲労感を持たせてしまったとも考えられる。
制作側は、視聴者から共感を引き出そうと、あらゆる視点からドラマを生み出した。
しかし、それが裏目に出てしまったようだ。共感を得たいがばかりに、ドラマのカラーが偏り過ぎたことが視聴率不振の理由では、との意見も見られている。
一方で、『調査官ク・ギョンイ』には希望もある。
本作はNetflix(ネットフリックス)でも同時公開されているため、これを入り口に視聴者が増える可能性もある。コミックとスリラーが混在した大衆性に面白さまで感じれば、ドラマファンの口コミが広がり、視聴者を獲得することができるという具合だ。
寂しいスタートとなってしまった『調査官ク・ギョンイ』であるが、その行方はまだまだ分からない。本作が再び、JTBCにドラマ王国の名を掲げることができるのではと、期待と関心が寄せられている。
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