【韓流20周年企画-チョン・ドンファン編】2022年は、日韓同時開催が話題となったFIFAサッカーワールドカップから20年を迎える年となる。振り返ると日本の韓流ブームの歩みも、同じようなタイミングだったのではないだろうか。そこで今回は韓流20周年、あの人気ドラマ『相続者たち』タンの父を熱演したチョン・ドンファンの近況とは。
韓国ドラマを語る上で欠かせない俳優、チョン・ドンファン。
日本の韓国ドラマファンにはお馴染みの俳優で、その代表作に2013年に放送されたイ・ミンホ主演ドラマ『相続者たち』がある。
チョン・ドンファンは劇中、イ・ミンホ扮する主人公キム・タンの父親キム・ナムユンを担当。帝国グループ会長という重厚なキャラクターを熱演し、強烈なインパクトを残した。
視聴者の心と記憶に刻まれた”名優”として日韓のドラマファンに愛されてきた彼は、これ以外にも数多くの人気作品に出演している。
2002年に放送され、日本の韓流ブームのきっかけとなった『冬のソナタ』をはじめ、『秋の童話(2000)』、『プラハの恋人(2005)』、『魔王(2007)』、『トンイ(2010)』、『Mine(2021)』、『ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です(2021)』など、1982年から現在まで、休むことなくドラマ作品に出演している。
はっきりした声と重厚なルックスから、腹黒い政治家や財閥といった社会的地位の高い悪役を多く演じてきた。見た目は優しく教養はあるが、よく見ると偽善者であり、主人公の敵役だったというキャラクターだ。これは彼の代表作でも多く演じられてきている。
もちろん、特有の慈愛に満ちた印象で優しい市民の役柄も多く担ってきた。相対的に悪役を演じることが多いだけで、演技の幅が非常に広い俳優だ。
しかし、偶然にも多くの作品で、結果的には家族を苦しめる悪い父親の役割を演じた。特に娘を傷つけるといった設定が多く、”悪いパパ専門俳優”と呼ばれたこともあるそうだ。
あらゆるドラマで期待以上の”ゾワゾワ”する黒幕を演じてきたチョン・ドンファン。現在72歳(日本年齢)で舞台歴50年を誇る彼だが、その半生は波乱万丈であった。
高校在学時代、演劇班で活動しながら韓国学生競演大会で最優秀賞を受賞し、ソウル芸術大学の前身であるソウル演劇アカデミーに入学。
しかし、演劇だけでは学費と生活費が手に負えなくなり、自ら志願してベトナム戦に従軍したという。
1969年に演劇『見知らぬ男』で舞台デビューを果たしたチョン・ドンファンは、1973年に1000倍の競争率を勝ち抜いて東亜放送の声優に選ばれたが、演劇との両立に悩み1年ほどで退職を決意。
翌年の1974年、日本の沖縄県にある演劇学校に行くため、日本に渡り、サトウキビ農場で働きながら演劇舞台に立った。1975年に韓国に戻り、『麻衣太子』などの演劇に出演して興行に成功したが、依然として生活苦に悩まされ、再び沖縄県で労働に従事する生活を送っていた。
苦労と努力を重ね、俳優として活動を続けた彼は、ドラマ界にも顔を覗かせるようになる。
1978年、KBS『鵞鳥』に出演した彼は、その演技力が認められ、『第15回韓国演劇映画テレビ芸術大賞』のテレビ番組部門新人演技賞を受賞した。
その後も精力的にドラマ作品で活動し、順調に俳優人生を辿っていたチョン・ドンファン。
しかし、1982年に女優のキム・ユンミとの関係がスキャンダルへと発展、KBSから「社会通念に反する」という理由で無期限の出演停止処分が下されてしまった。
1985年3月に解禁されるまで、彼はアメリカ・ニューヨークに渡り、昼は演技学校で勉強し、夜はビル清掃の仕事をこなしていたそうだ。
波乱万丈な人生を歩み、70歳を超えたチョン・ドンファン。数多くのドラマに出演しながらも、毎年少なくとも1-2本の大規模な演劇に参加する多作俳優でもある。
彼の活躍ぶりは今も健在で、昨年は70歳を超えながらも、ロシアの文学者であるフョードル・ドストエフスキーの代表作『カラマーゾフの兄弟』の舞台に出演。2017年の出演時同様、今回も熱い演技を披露している。
そして1日6時間も舞台の上に立ち、渾身の演技を見せるチョン・ドンファン。その姿からは、役者としての強い執念がうかがえる。
“信頼できる名優”として大衆から愛されるチョン・ドンファン。舞台を愛し、舞台がよく似合う俳優として、この先もきっと輝き続けることだろう。
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