2021年、コロナ禍が続く中、ここ日本で大ブームを巻き起こしたドラマ『愛の不時着』。本作で主演を務めたヒョンビンの次期作が、映画『ハルビン』に決定したとの報道が出たが、彼を応援する一部の日本ファンは、複雑な心境を抱いているようだ。
昨年、日韓で一番ホットなドラマを選ぶとしたら、断然『愛の不時着』だろう。
終わりの見えない、コロナ禍の恩恵を受けたと言っても過言ではない本作。もちろん、主演を務めたヒョンビンとソン・イェジンの人気も上昇した。
特に、放送終了後に2人の交際の事実が明らかになり、ドラマをこよなく愛するファンの間では、”愛の不時着フィーバー”が再燃する現象も巻き起こった。
2人の一挙一動は連日のように報じられ、自ずと次期作の情報や、ファンの期待も手厚く取り上げられている。
ヒョンビン 最新出演映画は”抗日映画”?
そして先日、ヒョンビンの次期作映画が明らかになったのだが、どうやら日本ファンの心境は複雑である様子。
なぜなら、ヒョンビンが出演を確定したとされる映画の時代背景が、日本統治時代の20世紀初期だからだ。
韓国メディアによると、ヒョンビンは同作で「当時日本に抵抗し、中国北部の都市、*ハルビン(哈爾浜)で独立運動を展開した人物を演じる」という。
*映画タイトルも『ハルビン』。
この短い映画のシノプシスから、ヒョンビンを応援する多くの日本のファンは「抗日映画なのかも‥」という不安が、頭をよぎったに違いない。
実際、日本の有名ポータルサイトが、彼の次期作の詳細を報じるニュースを掲載しており、そこには「日本のファンが動揺している」「気持ちが複雑」「よりによってなぜ?」というコメントが付けられている。
物事に対して、抗議などを滅多にせず大人しいとされる日本ファンからは、やはり「さらなる作品の詳細が出るまで見守ろう」というスタンスが垣間見える。しかし、それでも隠し切れない”動揺”はある。
中には「まさか安重根(アン・ジュングン)役を?」というようなコメントも‥。
ヒョンビン、安重根役を演じる?
周知の通り、安重根(1879-1910)は1909年10月26日、初代韓国統監だった伊藤博文(1841-1909)をハルビン駅構内で襲撃・暗殺した”テロリスト”である。
韓国では、国内中で仰がれる”独立闘士”であるが、日韓両国で評価する彼の行為は、完全に相反するものだ。
安重根の生涯を描いたドラマや映画は多く存在するが、残念ながらそこで描かれる日本人は常に”極悪非道”そのもの。そのため『ハルビン』というタイトルに、日本ファンが不安を抱くのも無理はない。
しかし、ヒョンビンが新作映画で務める役は、安重根でない可能性が非常に高いとされている。
現時点で韓国メディアには、ヒョンビンが安重根役を演じるという内容はどこにも記載されていない。「祖国を失った者の孤独感と、命懸けで挑んだ戦闘への不安と責任感、複雑な感情とアクションを演じる」という設定が公表されているのみだ。
また、映画『国際市場で逢いましょう(2015)』で有名な、ユン・ジェギュン監督が演出したミュージカル映画『英雄(原題)』の公開が控えているが、この映画は安重根の一代記を描いており、『ハルビン』の制作側が同一人物を僅かな時間差で映画化することは考えにくい(本来『英雄』は昨夏公開予定だったがコロナの影響で今年公開へ)。
それは先に公開された映画への評判が、良い悪いに関わらず本作の興行に影響を及ぼすからだ。
それにもし、映画の話題性を集めたいならば、”ヒョンビン=安重根”だった場合、その事実をわざわざ隠す必要がない。
ヒョンビン、ソン・ジュンギの二の舞になる?
それでも、気になるキーワードは散在している。
“独立運動”、”ハルビン”、”戦闘”といったキーワードだ。
独立運動が素材であれば、戦闘に臨む相手は必然的に”旧日本軍”であり、多くの抗日映画で描かれてきたような”日本=絶対的な悪”という構図が、映画ファンの頭には自ずと浮かび上がるだろう。
いくらヒョンビンを応援するファンであっても、”抗日映画”というタイトルが付いた作品を選んだ彼に対して、慈悲あるフォローは中々に厳しい。だからなのか、ファンからは「ソン・ジュンギの二の舞になる」と危惧する声も聞こえている。
ソン・ジュンギは、2017年に公開された映画『軍艦島』に出演、独立軍の将校役を演じたがゆえに、残念ながらここ日本では、あまり好意的ではないレッテルが貼られている。
しかも『軍艦島』は、韓国国内でも「歴史を歪曲した」という批判に遭っており、当時朝鮮人を搾取する人間が、同じ朝鮮人であるという映画の設定を巡って、ソン・ジュンギの「良い朝鮮人もいたが、悪い朝鮮人もいた」という発言が、炎上騒ぎを招いてしまう。
皮肉にも、日韓の国民から”ダブルパンチ”を食らった格好になったのだ。
(関連記事)「ソン・ジュンギは軽率だ」日本での婚約パーティーも取り出し批判する韓マスコミ
『ハルビン』の演出を務めるウ・ミンホ監督は、前作『南山の部長たち(2020)』で、1979年の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺事件を取り上げていたが、その暗殺を巡り「独裁政権の暴走を食い止めるための、勇気ある行為 vs 権力闘争で負けた者の腹いせ」という議論を巻き起こしている。
デリケートすぎる歴史的な事件を、どのような視点で描くかによって、ヒョンビンも韓国国内で”歴史歪曲”という議論に巻き込まれる可能性がある。おまけに、日本からは”抗日映画に出演した俳優”とバッシングを受けることにもなるだろう。
まだまだ多くの部分が、ベールに包まれている映画『ハルビン』。果たしてデリケートなキーワード――”独立運動”、”ハルビン”、”戦闘”をどのようにストーリーとして紐づけていくのだろうか。
その詳細に感心が集まっている。
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