パク・ユチョンの麻薬所持及び投薬容疑に対する自白に不信とどよめきが広まるなか、捜査当局の拘束捜査の在り方が再度注目を集めている。

パク・ユチョンが、自身へ向けられた麻薬投薬の容疑をすべて認めた。
本人の自白により、捜査は波に乗り先日(5月10日)警察はパク・ユチョンを起訴意見で検察に送致した。

パク・ユチョン

麻薬に関する自身の容疑を認めたパク・ユチョン(画像提供:©スポーツ韓国)

元婚約者のファン・ハナの供述で浮上した疑惑にパク・ユチョンは緊急記者会見を開き無実を主張したが、拘束3日目の4月29日に「罪」を認めたのだ。
韓国の優れた(?)捜査機関の「手柄」で、もう一人の男性芸能人の明白な罪が立証された…..と思う専門家は多くないようだ。
一部の司法専門家は、パク・ユチョンの自白は警察の「手柄」ではなく、拘束捜査の「手柄」だという意見を呈している。

自白、生きられる道

「그만 인정해. 그게 니가 살길이야..(いい加減認めろよ。それがお前が生きられる道だ。)」

韓国ドラマが好きな人はよく耳にするセリフだろう。
軍事政権下(1960-1980年後半)の韓国は政権維持のために国を挙げて「赤狩り」を行った。

※赤狩り:共産主義者を国外に追放したり、刑罰を科し収監すること

当時を描くドラマでは、捜査機関が無実な人を拘束し肉体的な苦痛を与えて白状を強制する、いわゆる「拷問」を行うシーンがよく登場する。

堅く口を閉ざしていた主人公は、苦痛に耐えられず嘘の自白をしてしまう。
このような捜査当局の「手」の犠牲になった一般市民は数えきれないほど多い。

日本に住んでいた在日韓国人も、軍事政権により「北朝鮮のスパイ」というでっち上げに遭い、間諜罪(日本でいう外患罪)で長年収監されるという犠牲を強いられた。

しかし、今は違う。
1987年民主化を果たした韓国は、それまでなかった人権に対する意識の変化が現れ、捜査当局は自白よりは証拠に基づいて「有罪」を立証しなければならなくなった。

捜査機関が容疑者を逮捕する時に告げる言葉がある。

「ご自身に不利な供述はしなくてもよい権利があります。」

まさに1987年以降、現れた変化の断面だと言える。

拘束捜査の怖さ

しかし、まだ捜査過程における人権の確保はほど遠いようだ。
一部の刑事専門弁護士によると、拘束捜査が行われる限り無罪推定の原則は崩される恐れがあると口を揃える。

韓国の刑事訴訟法70条には、拘束捜査の事由についてこう明記されている。

「一定の住居がない者、証拠隠滅の恐れがある者、逃亡を図る恐れがある者に限て(被疑者を)拘束捜査ができる」

問題は、被疑者は身柄の拘束により自分が無実であることを立証できる証拠を集めることができなくなるなど、法廷で検察と戦う万全な準備に支障を来す恐れがある点だ。

それだけではない。
人権団体によると、被疑者は収監当日から社会と隔離されたという恐怖感とショックを受けるという。
パク・ユチョンが、警察による拘束捜査期間中に収監された水原南部警察署の留置場には、一人部屋がない。
見知らぬ人々と一緒に数日間暮らしていたパク・ユチョンは、それまで味わったことのない羞恥心(しゅうちしん)を覚えていたかも知れない。

拘束捜査が被疑者に与えるとされる多大な恐怖とショック、羞恥心を味わったパク・ユチョン..彼は「ここを早く出なきゃ」という思いで身を震わせていたかも知れない。

先日、日産自動車のゴーン会長の逮捕や保釈に巡り、拘束捜査の在り方について日本国内外から改めて注目された。
ゴーン会長の母国であるフランスからは「人質司法」と批判も受けていた。

拘束捜査には賛否両論がある。賛成派は「人権だけを考えると、正しい司法判断の機会を失う可能性がある」と主張する一方、反対派は「拘束捜査=有罪という誤解を招く..裁判で明らかになってないのに犯人扱いされ、後に社会復帰ができなくなる」と主張する。

拘束捜査による自白でないことを..

パク・ユチョンは自白した。
ただ「反省」の意を表した自白なのか、恐怖と羞恥心による自白なのかは分からない。
検察に送致され、検察による捜査が始まり起訴猶予処分を受けるか、裁判が行われ罪を問われる羽目になる。

彼の自白が、拘束捜査という拘束捜査反対派の言う「非常に非人道的捜査方式」による自白でないことを祈る。
もし、そうだったらその自白が、法廷では認められないことを祈る。パク・ユチョンのファンとしてはではなく、人権の確立を望む一人の市民として…

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