BoA、東方神起、少女時代、EXOを世に送り出し、芸能界の帝国とも呼ばれたSMエンターテインメントの創業者イ・スマン。ここではかつての彼が、相次ぐ試練に泣かされた初期SMエンターテインメントの状況が、詳しく記されているSSULを紹介したい。
【SSUL】SSULとは、韓国ネットコミュニティーやSNSで話題となっている様々な”説(썰)”を取りあげる記事のことです。日本のメディアでは、なかなか紹介されない”説”を、ここでご紹介してまいります。
“K-POPブーム”というワードがもはやブームではなくなり、ここ日本でもカルチャーとしてすっかり定着した。
近年はK-POP人気の秘訣だけでなく、ブームの始まりや日本アイドルのシステムとの比較を追いかける記事をよく目にする。
K-POPブームの立役者と言えば、昨年『虹プロジェクト』で日本を熱狂させたパク・ジニョン(J.Y.Park/JYPエンターテインメント)や、音楽性と大衆性を持ち合わせたスーパースターBIGBANG(ビッグバン)を世に送り出したヤン・ヒョンソク(YGエンターテインメント)の名前を浮かべる人が多いのではないだろうか。
しかし、”元祖”貢献者を選ぶとしたら(批判を恐れずに言うと)、断然SMエンターテインメント(以下、SM)のイ・スマンだろう。
BoA、東方神起(TVXQ)、少女時代(SNSD)、SHINee(シャイニー)、EXO(エクソ)を擁し、アジア市場で爆発的人気を牽引したイ・スマン。生まれながらにして持つ、卓越した頭脳やセンスも抜群だが、実は知られざるところで試練に泣かされ、強いメンタルを手に入れてSM王国を今日まで育て上げたのである。
9月26日、韓国有名オンラインコミュニティーには、そんなイ・スマンの相次ぐ試練=初期のSMの状況が詳しく記された投稿が登場した。
日本のK-POPファンや、SMアーティストを応援するファンには、ぜひとも知ってほしい”SSUL”なので紹介したい。
コンピューター工学を学ぶため渡米した29歳のイ・スマン
韓国の超名門大学、ソウル大学を卒業したイ・スマンは、1981年(29歳)の時、コンピューター工学を学ぶためにアメリカへ留学。
この時、アメリカのケーブルチャンネルであるMTVや、音楽産業を目にした青年イ・スマンは、音楽プロデューサーになることを夢見るようになる。
留学を終え、1985年に韓国へ帰国したイ・スマンは、ブラックミュージック(ヒップホップやR&B)を取り入れたアーティストを作ると決心。当時、すでに世界的な人気を博していたアメリカのR&B歌手、ボビー・ブラウンを真似して、アーティスト1人とパフォーマー2人という三角ラインのチームを構想する。
1988年、人材を求めてソウル市内の有名ナイトクラブを転々としていた彼に、友人が当時16歳のヒョン・ジニョンを紹介。スターとしての可能性を感じたイ・スマンは、彼にアメリカ人の専門トレーナーを付け、ヒップホップやR&Bを徹底的に叩きこんだ。
そして1989年、ヒョン・ジニョンの成長に手ごたえを感じたイ・スマンは、SMの前身であるSM企画を設立し、”第1号ダンス歌手”としてヒョン・ジニョンをデビュー(1990)させるのだった。
『色気の女』『悲しいマネキン』などがヒットし、成功するだろうと予感していたのだが、その矢先に初めての試練が訪れる。
1度目の成功‥そして訪れた試練
1991年、釜山の野外ステージで公演中だったヒョン・ジニョンを、数人の男性が急襲するという前代未聞の出来事が起こる。実は、その男性たちは警察で、ヒョン・ジニョンを大麻吸引の疑いで逮捕したのだった。
この時、イ・スマンをはじめSMのスタッフは、連日のように警察に呼び出され、厳しい尋問を受けていたという。もちろん会社の業務は全て停止、最悪な状態となった。
それでもイ・スマンは、自身が育てた”第1号ダンス歌手”を守ることを決意。服役期間を短くするため、あらゆる手を尽くしていたと知られている。結局ヒョン・ジニョンは、1年で服役を終え出所。
しかし、麻薬に手を染めた歌手に対する世間の目は、冷ややかなまま。しばらく活動を休止する。
年は変わり、1992年になると、ラップを基調とした本格的なアメリカン・ヒップホップを取り入れたスタイルとジャンルが、空前のブームを巻き起こす。
YGエンターテインメントの元代表、ヤン・ヒョンソクが所属していた”ソ・テジと子供たち”という3人グループの人気に刺激を受けたイ・スマンは、すぐさまヒョン・ジニョンの出撃準備に入った。
2ndアルバム『New Dance 2』で歌謡界に還って来たヒョン・ジニョンは、当時アメリカで流行っていたヒップホップスタイルを徹底的に取り入れ、これがズバリ的中! この年、彼は大ヒットを飛ばす。
そして”ヒョン・ジニョン全盛期到来”という成功に、とてつもなく酔っていたイ・スマンを待っていた悲劇の不意打ちは、他ならぬヒョン・ジニョンが召喚する。
信じていた愛弟子から2度の裏切り
1993年、3rdアルバムの発表と同時にカムバックを果たしたヒョン・ジニョンは、再び麻薬吸引(ヒロポン)で警察に逮捕されてしまう。
初版として制作された40万枚のアルバムは、警察により全量廃棄処分に。莫大な損失を被ったSMは、会社の資産を売却したことで、辛うじて倒産を逃れたという。もし、この時SMが倒産していたら、K-POPのグローバル化に大きく貢献したイ・スマンの存在も、今の未来もなかったかもしれない。
そんなイ・スマンを、2度にわたり泣かせたヒョン・ジニョンは、自身の回顧録でこう振り返る。
刑務所を出た後、自由の身になるも大きな不安が襲い掛かった。社会的物議を醸した私を、先生(イ・スマン)は見捨てるのではないかと‥。
「先生、本当に申し訳ございません!」と、頭を下げて必死に謝った。すると先生は「大丈夫。君が本気で反省しているのなら、それでいい。過ぎた事だし、2度とこのような事がないようにするんだ。再起するためには、今よりもっと血を流す覚悟で努力するんだ。(刑務所で)疲れただろう? 今日は早く家に帰って休んで」と‥。
自身の期待を2度も裏切った弟子に、器の大きさを見せつけたイ・スマン。
この時食らった所属アーティストからの不意打ちは、良くも悪くもK-POP王国、SMエンターテインメントの礎となっているに違いない。
1992年大ヒット曲 ヒョン・ジニョン『かすかな記憶の中にいる君』
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