10月15日、スマートフォンメッセンジャーで有名なIT企業のKakao(カカオ)が、イ・スマン氏の保有しているSМエンターテインメント株の買収を断念したとの報道が出ており、CJグループが最も有力な交渉相手に浮上した。韓国のマスコミは、イ・スマンが何故、売却に乗り出したのか、その理由を探っている。
昨今、世界におけるK-POPの人気は、目を疑うほどのすさまじさを見せている。
BTS(防弾少年団)を筆頭に、BLACKPINK(ブラックピンク)やTWICE(トゥワイス)、SEVENTEEN(セブンティーン)など、もはや米ビルボードチャートの”常連アーティスト”になったアイドルグループに加え、TXT(トゥモロー・バイ・トゥギャザー)や、Stray Kids(ストレイキッズ)など、デビュー年数の浅い第4世代アイドルも、ビルボードチャートで頭角を現し始めた。
また欧米の主要メディアが、一斉に「K-POPの襲来が始まった」「メジャーカルチャーに定着したK-POP」と、その勢いを報じている。
最近では、現在活躍中の人気アーティストだけでなく、”源流”となった過去のアーティストやプロデューサーなど、いわばK-POP拡散に大きく貢献した”立役者”にも、スポットライトが当てられているほどだ。
中でも、多くの音楽ファンとマスコミが、声を1つに揃えて称える人物は、SMエンターテインメント(以下、SM)の創業者、イ・スマンである。
言わずもがな、1989年に設立したSMエンターテインメント(以下、SМ)の前身”SM企画”で、K-POPの根幹を成したと評される数々の”第1世代アイドル”を輩出した人物だ。
(関連記事) イ・スマン SM王国の土台は第一号歌手から食らった2度の’不意打ち’
現在は、SMの総括プロデューサーとして活動しており、第4世代女性アイドルの代表格と呼び声の高い、aespa(エスパ)のコンセプトやプロモーションを自ら手掛け、成功してみせた。
イ・スマンには、もう1つ肩書がある。
それは、SMの株18.7%を保有している”大株主”という肩書だ。
そして今、SMの経営全般を牛耳る事が可能な保有量を、売却しようとしている。よりシンプルに言うと、SM経営から退く決断をしたという事である。
まず、株の買収に名乗りを上げたのは、スマートフォンメッセンジャーで有名なIT企業のKakao(カカオ)と、MnetやtvNを擁する巨大エンターテインメント企業、CJグループだった。
しかし、10月15日に「Kakaoが買収を断念した」との報道が出され、CJグループが最も有力な交渉相手に浮上している。両者の交渉が順調に進めば、年内中にビッグニュース誕生を目の当たりにするかもしれない。
韓国のマスコミや財界は、K-POPの人気と影響力をさらにパワーアップさせるであろう、ビッグネーム誕生への期待を示す一方で「何故、自ら設立したSMを手放すのか? 世襲という手もあるのに」と、疑問を抱いている。
まず、マスコミが注目している点は、イ・スマンの年齢だ。
イ・スマンは、1952年生まれの69歳(日本年齢)。常に新しい感性やトレンドを取り入れ、アーティストという媒介を通して表現する音楽プロデューサー(もしくはエンターテインメント企業の経営者)にしては、高齢の部類に入る。
近年K-POP業界では、創業者であっても企業経営は専門家に一任して、クリエイティブ業に専念したり、音楽プロデューシングにおいても、センスある若手を起用するなどの動きが顕著になっている。その代表的な例が、HYBE創業者であり、現在総括プロデューサーという肩書を持つパン・シヒョクだ。
イ・スマンも、自ら設立し愛情を注いできたSMが、今後もその命脈を保つために「より手腕のある専門家に任せるという判断に至ったのでは?」と、韓国のマスコミと財界は分析している。
ここで、もう1つの疑問が浮上する。
実はイ・スマンには、かつてSMに籍を置き、作詞などを手掛けていたイ・ヒョンギュという息子がいる。経営権の承継を見据えて、息子を抜擢したという見方もあったのだが、結局イ・スマンは”売却”に乗り出すに至っている。
これについては、3つの理由があるという。
まず上述したように、常に最先端を走らなければならないエンターテインメント企業が、”世襲”という古い慣習に縛られてはならないという、イ・スマンの強い意志があるのではと見られる。
そして、2人の息子がエンターテインメント業界に、自身ほどの愛情と関心を持っていない点、巨額の承継費用(特に贈与税)の負担が、世襲を断念した理由として挙げられた。
では、SMの経営から退いた後、イ・スマンのポストはどうなるのだろうか?
韓国メディアのNewsis(ニューシス)は「知的財産権(IP)を重視するイ・スマンなだけに、経営権が売却されても、プロデューサーとしてのポストを維持しようとするだろう」と分析。
エンターテインメント企業のビジョンとミッションの方向性を大きく左右するのがプロデューサーであるため、売却交渉を難航させるイシューになるとの憂慮も聞こえている。
果たして2021年の間に、韓国エンターテインメント業界で新たな動きは見られるだろうか。
(関連記事)「センスは健在、中国は止めて」’70歳じいじ’ SM イ・スマンへの称賛と一喝
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