- 2024年2月7日にSM側が「将来売上計画」を発表したが、1年前の数字と比べて半減している事がわかる。
- SMの改革を掲げた新経営陣は、先代からの不透明な経営を踏襲しているという疑惑を向けられている。
- 韓国の経営、投資専門家は「経営哲学を持っていないアマチュアリズムが呼んだ災い」と舌を打つ。
SMエンターテインメント(以下、SM)の新経営陣は、2025年を“約束の年”と位置付けていた。
ちょうど1年前、SMの経営権を巡る創業者のイ・スマン氏と、2人の元共同代表(イ・ソンス氏、タク・ヨンジュン氏)の対立がエスカレートしていた。
SMの改革を謳っていた共同代表2人は、経営権争いで優位を占めるため「SM改革が成功すれば、2024年の営業利益4000億ウォン、2024年の営業利益5000億ウォンに上る」と宣言してしまう。(※1億ウォン=約1000万円)
これが株主とマスコミの心を動かしたのか。イ・スマン氏体制のSMは古臭いものになり、株式会社カカオによる新経営体制が幕を上げた。
(関連記事)SM株は煮ても焼いても食えぬもの・・HYBEとKakaoの「不快な同居」が始まるのか
半減してしまったSMの業績予想
もちろん、イ・スマン氏から株を取得したHYBEがSM買収を諦めたのが、第一原因ではあるが、2人の共同代表による改革案『SM3.0』も一役買っていると評価される。
それから1年が経った2024年2月7日。SM側は、将来売上計画を修正し、公示した。
そこに記されている営業利益は「2024年1600億ウォン、2024年2400億ウォン」と、1年前の数字と比べて半減している事がわかる。
これには、韓国のエンターテインメント投資専門家も「2023年の宣言は、異例的な行為であり、多少無理した感が否めない。市場に混乱を招かざるを得ない事案だったと思う」と語る。
また、SMの改革を掲げた新経営陣は、プラットフォーム高度化戦略の一環として果敢な投資を行うと宣言したが、実際は、側近の個人会社を買収し、アウトソーシングしていたと知られる。
これは、かつてイ・スマン氏が自らが設立した個人会社にプロデュース業務をアウトソーシングしていた手口を連想させるため、「目クソ鼻クソ」という議論に巻き込まれているという。
イ・スマン氏を追い出した新経営陣が、先代からの不透明な経営を踏襲しているという疑惑にカカオ側は監査委員会を開き、経営陣と理事会にメスを入れると報じられた。
新経営陣に対する不満は、アーティストからも聞こえている。SHINeeのメンバーテミンは、自分のライブ配信で「SM社員の処遇が改善されていない」と嘆いた事が話題(2023年11月)となった。
また、SMを支えていたスターアイドルたちが、契約更新に臨まず、会社を去ってしまった。
アマチュアリズムが呼んだ災い
SMの内部に起きる一連の騒動に対して、韓国の経営、投資専門家は「経営哲学を持っていないアマチュアリズムが呼んだ災い」と舌を打つ。
ここまで来ると、生みの親であり、育ての親であるイ・スマン氏を慕い、彼の帰還を望む声も聞こえてきそう。これは、かつて自身が設立した会社(アップル社)から追い出され、経営難に陥った1997年に同社に復帰した故スティーブ・ジョブズ氏を連想させる。
スティーブ・ジョブズ氏は、自身の経営哲学を貫き、製品ラインアップを減らし、必要ではない事業から撤退するなど、果敢な構造改革を進めて、アップル社のV字回復を先導する。
そして、iPodやiPhoneを世に送り出し、“時代の寵児”となる。
スティーブ・ジョブズ氏の快進撃は、アップル社の創業者として明確な所信と哲学を持っていたためと呼び声高い。それは、アメリカ留学当時、MTVに魅了され「いつかビジュアル音楽の時代が来る」と所信を持ってSMを設立したイ・スマン氏と相通じる点でもある。
イ・スマン氏のSM復帰‥現実味は?
しかし、彼の復帰は容易ではない。昨年HYBEとの株式売買契約を締結した際に、一定期間内に同業他社に努めてはならないという、いわば“競業禁止条項”を設けたためだ。
現在イ・スマン氏は、HYBEに対してこの条項を解除するよう求めたが、HYBE側は拒否しているという。
これも、スティーブ・ジョブズ氏のエピソードと似通った点が。1997年、スティーブ・ジョブズ氏のアップル社復帰を知った最大のライバル、マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏がアップル社のCEOギル・アメリオに連絡し「彼を呼び戻したら、絶対失敗するし、後悔する」とけん制したという。
現在皮肉にも、自分が作り上げた世界観の“広野(KWANGYA)”に下ったイ・スマン氏。新経営陣のアマチュアリズムに憤る株主とアーティストたちにとって、SMの成長動力となる所信と哲学を植え付けてくれる、イ・スマン氏のようなプロが必要なのだ。
暗雲が立ち込めるSMを救う適任者として、彼の名前が浮上するのは、一見当たり前なのかもしれない。
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