ラジオDJであり、韓国大衆文化ジャーナリストであり、韓流ファンミーティングMCのパイオニアである古家正亨さんの連載コラム『古家正亨の韓々学々』!第5回目は、古家さんご自身の職業でもある『ラジオDJ』について。韓国のラジオ文化について、知らないことがたくさんありました!

アンニョン! 古家正亨です。最近、いろんな方から“韓流ドラマによく出てくるラジオDJ”のことについて質問されることが増えています。そこで、ラジオDJの立場から含めて、この韓国のラジオDJについてお話させていただこうと思います。

韓国ドラマの中で確かによくラジオDJが登場しますよね。そして、ロマンティックなポエムを朗読している姿がよく描かれると思います。ちょっと日本では考えられない設定かもしれません。ただ、僕も韓国のラジオ局で仕事をしたことがありますし、現場に何度か携わった経験から言うと、確かにあの描写は“事実“なんです。

ラジオも日韓で文化が違うとは!

ラジオも日韓で文化が違うのですね。(写真提供:pixabay)

とは言っても、韓国のラジオの番組、すべてがそういう構成であるわけではありません。その前に韓国と日本のラジオ事情について解説する必要があるかと思います。

韓国には日本と同じようにAM、FM、短波という3つの波によって、一部を除き基本24時間放送されています。皆さんがご存じの地上波テレビ局のKBS、MBC、SBSがそれぞれチャンネルを持っているほか、1990年に入って民主化が進み、放送法の改正によって民間放送が続々と開局し、日本と違うところでは宗教(PBSなど)や交通情報(TBCなど)などの専門チャンネルがFMで開局。実に多くのラジオ局が存在します。ただ、専門放送といっても、テレビのJTBCやテレビ朝鮮のような総合編成チャンネルのように、番組自体はそれに特化した番組だけを放送しているだけでなく、番組編成自体は通常の番組を基本放送していて、番組構成でその専門性を出しているところがほとんどです(ここがユニークですよね)。しかもFMは音楽メイン、AMはトークメインという日本的な役割分担はなく、あえて分けるならば、FMはエンターテインメント(でもAMのFM波放送もあり)、AMは時事という感じでしょうか。

しかも韓国のほぼすべての放送局では、各番組とも日曜から月曜の毎日、各2時間番組、しかもできる限り生放送というルールがあり、DJを務めることになると、このラジオだけで他の仕事が出来なくなるほど大変な仕事ですし、でもその分、その局の“顔”的イメージが強くなります。日本だとこういったルールはないので、番組編成が各放送局全く違いますし、曜日と放送時間のイメージがつきにくいですが、韓国はすべての放送局、すべての番組が同じフォーマットに則って作られているので、わかりやすさは断然違ってきます。そして、DJを務めている方は、AMの方はほとんどがアナウンサーや時事評論家の方ですが、FMの方はタレント、ギャグマン、そして皆さんの大好きなK-POPアイドル! というパターンがほとんどでDJ専業の方は、日本のようには皆無と言っていいでしょう。

2018年に放送されたドラマ『ラジオロマンス』では2018年に放送されたドラマ『ラジオロマンス』ではキム・ソヒョンがラジオ作家に扮した。

2018年に放送されたドラマ『ラジオロマンス』ではキム・ソヒョンがラジオ作家役を担った。(Licensed by KBS Media Ltd. ©2018 KBS. All rights reserved)

そして韓国のラジオはそのほとんどがネットで同時に配信されています。日本がいろいろと限定的な状況でradiko.jpで聴けるようになりつつあるのが最近の出来事。でも韓国では、ほとんどの番組で“見えるラジオ”が放送されていて、生放送の様子はかなりクリアな映像とともに視聴可能です。なので僕がK-POPアイドルに自分の番組に出演してもらうときに、ほぼほぼ100%の確率でスターたちから「どこにカメラはありますか?」と訊かれます。海外からは日本のradiko.jpの視聴はできませんが、韓国の場合は、スマートフォンの無料アプリ(KBS kong、SBS 고릴라、MBC miniなどがあります)で日本からも視聴可能なところも良いですよね。

さて、韓国のラジオについての解説が長くなりましたが、ドラマの中でラジオDJがよく出てくるのは、やはりかつては花形の職業だったからということが挙げられます。日本以上に韓国におけるラジオの存在はとても身近なものでした。バスやタクシーに乗っても耳にする(日本だとお客様への配慮からかけませんよね)、街角や食堂でも耳にする‥など、日本以上にラジオからの声を耳にすることが多かった90年代。ところが2000年代に入ると、ネットメディアに圧され、ラジオの力は徐々に衰退していきます。そこで2000年代の早い段階からネット配信を解禁し、見えるラジオでラジオの見える化を推進していった結果、今も一定の力を維持するに至っています。ですから、ラジオDJが登場する設定のドラマは、ドラマの設定自体が90年代から2000年代前半のものが多いはずです。

そしてもう1つ、なぜラジオDJに限らずラジオの世界がテレビ以上にドラマで登場するかといえば、女性が圧倒的に多い現場であることが挙げられます。日本の場合は(最近でこそ女性も増えてきましたが)男性が多いラジオの制作現場ですが、韓国では圧倒的に女性が多くて驚かされます。構成、ディレクター、ADのほとんどが女性で、エンジニアさんとPDぐらいが男性でしょうか。つまり、女性の登場キャラクターの活躍場所として、活かせる方法がいろいろ考えられるのです。

トッケビに登場するチ・ウンタクもいつもラジオを聴いていた。

トッケビに登場するチ・ウンタク(キム・ゴウン)もラジオDJになることを夢見ていた。(画像出典:tvN)

さらに言えば、日本のラジオではもはや少なりつつあるリスナーとのコミュニケーションが、韓国の場合はかなり“蜜”であるということが挙げられます。番組構成でリスナー参加型企画も多く、生放送が主流のため、リスナーの生声を活かすことも少なくありません。つまり、リスナーの代弁者としてのDJの姿が、日本よりもより色濃く、その分、語り部としてドラマで機能させることが可能なんですね。その最たる姿が、ドラマでもよく描かれるDJがポエムを朗読するシーン。日本ではほぼ無くなってしまったこのある種の“くさい”演出が、本当に韓国で行われているのかということですが、本当です。僕も最初にこのポエムをラジオで聴いたときは、衝撃でした。すべての番組とは言いませんが、夜の番組のオープニングとしては、当たり前の演出になっています。ところが‥不思議なんですが、韓国でこのオープニングのポエムを聴くと、韓国の街の風景、空気感に実にピッタリあっているんですね。

「外は雨。カラフルな傘の花が咲く今夜。あなたは今、どこにいますか?」

的なポエム。ちょっと日本で、今ラジオでこれやると、何を言われるかわかりません。でも韓国では、急に外の雨がロマンティックなものに見えてくるんです。きっとそれは番組全体が持つ優しい雰囲気のせいもあるかもしれません。そして、構成作家さんが圧倒的に女性で占められていることも、理由としてあると思います。そして、そもそも韓国の人たちはポエム(詩)を好む文化がありますよね。韓流ドラマのロマンティックなセリフの数々も、もとはと言えば、そこに源流があるような気がします。

どうでしょうか? 少し韓国のラジオについて見えてきました? 僕自身も韓国のラジオの現場にいて、学んだことは多いんです。もちろん、日本のラジオの良さもあります。ただ、韓国の場合は人と人とがつながるツールとしてのラジオが、今も存在している気がします。きっとそれが濃密な人間関係を描写する韓国ドラマの世界と合っているのかもしれませんね。



コラム『古家正亨の韓々学々』の筆者-古家正亨

コラム『古家正亨の韓々学々』筆者-古家正亨

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古家正亨(ふるやまさゆき)
ラジオDJ /テレビVJ /MC /韓国大衆文化ジャーナリスト
レギュラー:
NHKラジオ第1「古家正亨のPOP★A」(毎週水曜 21:05 – 21:55 生放送)
FM northwave「Colors Of Korea」(毎週土曜 11:00 – 11:30)
CROSS FM「深発見!Korea」(毎週土曜 18:30 – 19:00)
InterFM897「TALKIN’ ON SUNDAY」(毎週日曜 朝7:00 – 8:00)
Twitter:@furuyamasayuki0

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