ラジオDJであり、韓国大衆文化ジャーナリストであり、韓流ファンミーティングMCのパイオニアである古家正亨さんの連載コラム『古家正亨の韓々学々』!
第3回目は『ファンミーティングイベント』についてのその2をお送りします。
韓国で韓流MCデビューを果たした古家さんから見た、日本と韓国のMCの在り方について。ここにも文化の違いが如実に表われています。

アンニョン! 古家正亨です。今回は前回の続きです。ファンミーティングについてMCの立場からこんなことについて考えてみたいと思います。

MCの立ち位置について考えてみる

前回は、日韓それぞれの立場の人が考える、ファンミーティングのとらえ方の違いについてお話させていただきました。今回は、MCとしての立ち位置のお話です。僕は第1回の記事でもお話した通り、2003年に初めて、韓流スターと呼ばれる方と一緒にお仕事をさせていただき、それがありがたいことに“ヨン様”ことペ・ヨンジュンさんだったんです。しかも、韓国で行われたイベントでのお仕事でした。

(関連記事)ファンミーティングから日本と韓国の違いを考えてみる~その1(古家正亨の韓々学々 Vol.2)

MCの持つ役割とは‥

MCの持つ役割とは?(画像出典:pixabay)

当然、異国の地でのMCの仕事。相手は日本でも人気のスーパースター。当然、緊張しますし、韓国におけるイベントのMCの立ち位置というものが、いまいち理解できていませんでした。というのも、韓国では、僕のようなMCという仕事を生業にしている方は非常に少なく、ギャクマン(いわゆるコメディアン)だったり、俳優や声優を目指している人だったり、タレントだったり、何か自分の核になる職業を持ち、プラスアルファでMCの仕事をしている人が圧倒的に多いようです(もちろん、MC専業の人も中にはいるようですが、極めて少ないようです)。ですから、MCとしての立ち振る舞いが、そもそも日韓では違うということは、ある程度理解できていましたが、こうも違うとは思いませんでした。

その後何度か、自分にとっては研修の目的で、韓国で行われるファンミーティングにファンの立場から、客観的な目線で参加したことがあったのですが、その際、すごく感じたのが、韓国のMCは自身の存在感を妙にアピールするなぁということ。

いつかまた日本に来てくれますか?

ヨン様は、いつかまた日本に来てくれるでしょうか‥?(画像出典:ペ・ヨンジュン 公式Instagram)

これは僕自身のスタイルなのかも知れませんが、MCはあくまで進行役であり、イベントの主役はスターであり、ファンの皆さんだと思うんです。でも、韓国のファンミーティングに参加してみると、MCの自己主張がすごく強いんですよね。あくまで自分のショーにゲストで来たのが、本来主役であるはずのスター‥っていう感じの、そんな進行をする人が圧倒的に多いんです。

それについて現地の関係者の人に聞いてみたところ「放送人の血が騒ぐのかなぁ」と笑っておっしゃっていました。

たぶん聞きなれない言葉かと思いますが、韓国語で「放送人(방송인)」というのは、業界関係者、スタッフという意味もありますが、基本メディアに顔を露出しているタレントのことを指します。つまり「テレビに出ている人だから、自分が目立たないとって、思ってしまうんじゃない」っていうことなんですね。

「なるほど、そういうことなのか」

2017年で更新が止まったまま

ヨン様のインスタグラムは2017年以降、更新がストップしている。(画像出典:ペ・ヨンジュン 公式Instagram)

確かに自分自身が主人公としてメディアで活動していると、自分がこの場をしっかり盛り上げ、自分のリードによって、最高の時間を提供したいっていう気持ちでMCに臨んでしまうのかもしれません。でも時にそれは、自己主張が強すぎて、ファン目線ではなく、自分目線の進行になりがちで、ファンが置いてけぼりな雰囲気、空気感を作ってしまいがちになってしまうんですよね。

でも、現地のファンはやはりメディアに出て、顔なじみの人がMCとしているだけで、何かこう安心感があるんでしょうか。高級なイベント、価値あるイベントと感じてしまうんでしょうか。意外と満足度は高いようなんです。ただ、韓国語のわかる僕が観ていて、日本では厳しいスタイルだなぁと感じてしまいました。

MCの正解とは

僕は常日頃MCをする際、できることなら、自分の存在を感じさせないような、そんなMCでありたいと思っているんです。つまりその場の空気でありたいんですね。なぜなら、本来スターだけでイベントの進行まで出来るはずなんです。ただ、日本で行われるファンミーティングに関しては、主に言葉の問題で日本語を使ったサポートが必要なだけだと思うんですね。ですから、最低限の投げかけに対して、スターからたくさんの言葉や表情を引き出したい・・・そう思って、僕はMCの仕事に臨んでいますが、でも、それが本来のMCのあるべき姿じゃないかと(個人的には)思うんです。

もちろん、引き出しのアプローチ方法には正解はないでしょう。何が正しいのか、その答えを僕は今も模索しながら、見つけられずにいます。ただ僕は、スター自身がステージで好きなことを自由にしてもらって、それをエンディングというゴールまで時間通りに導いてあげる、そんな雰囲気を作っていけるMCでありたいと思っています。そして、そんな僕なりのアプローチの方法で、いつか韓国ファンのためのファンミーティングのMCを務めてみたい‥それが僕のMCとしての最終目標であり、それを達成してこそ、ようやく日韓のエンタメ界の懸け橋になれるような気がするんです。



『古家正亨の韓々学々』の筆者-古家正亨

コラム『古家正亨の韓々学々』の筆者-古家正亨

古家正亨(ふるやまさゆき)
ラジオDJ /テレビVJ /MC /韓国大衆文化ジャーナリスト
レギュラー:
NHKラジオ第1「古家正亨のPOP★A」(毎週水曜 21:05 – 21:55 生放送)
FM northwave「Colors Of Korea」(毎週土曜 11:00 – 11:30)
CROSS FM「深発見!Korea」(毎週土曜 18:30 – 19:00)
InterFM897「TALKIN’ ON SUNDAY」(毎週日曜 朝7:00 – 8:00)

Twitter:@furuyamasayuki0
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