日本と同じく、コロナ禍で苦しんでいる韓国の映画界。新作の韓国映画の公開もままならぬなか、驚異的な興行を見せている作品が海外アニメーション映画だ。特に勢いを増しているのは、日本でも社会現象を巻き起こした『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。この作品が劇場を救うとともに、日韓友好の糸口をつかむものと期待されている。
新型コロナウイルスの第3波により、日本と同じく感染者数が増え続けてしまった韓国。
これにより大打撃を受けているのが韓国の映画界だ。新作の韓国映画も公開は延期され、大手動画配信サイトを通じての公開になるなどし、この影響により映画館は観客の足が途絶えてしまい、閑古鳥が鳴き続けるといった厳しい状況になっている。
このようななか、劇場に一筋の光が差し込んできた。それは、海外のアニメーション映画だ。
今期、ディズニー&ピクサーによる長編アニメーション『ソウルフル・ワールド』をはじめ、日本アニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(以下、鬼滅の刃)と『名探偵コナン 紅の修学旅行』(以下、名探偵コナン)といった強力なラインナップが揃い、今月12日に旧正月(ソルラル)を控えた韓国では、劇場街に活気が戻るのではと期待されている。
先月10日に封切られた『ソウルフル・ワールド』は2日現在まで、累積94万4000人の観客を動員。早ければ3日、遅くても4日には累積100万人の観客を突破する見通しだ。これによって新型コロナウイルスの蔓延以後、初の観客100万人を超える作品になる。
また、これと並ぶ勢いで興行成績を伸ばしているのが、映画『鬼滅の刃』だ。
日本でも爆発的な人気を博し驚異的な興行を記録した本作は、先月27日に韓国で公開され、公開初日だけで17万人もの観客を動員する大ヒットを巻き起こした。
本作は、シネマコンプレックスなどで上映館を増やし、2日現在までで22万7000人余りの観客を動員。コロナ禍であるにもかかわらず、同じく日本アニメ映画『名探偵コナン』とともにアニメーションの興行力を増している。
特に、映画『鬼滅の刃』は、日本と同じく若者から中年世代まで老若男女問わずに人気を集めている作品だ。
韓国の映画情報サイト”NAVER Movie”に掲載された評価を見ると、ほぼ満点と言っていいほど。またコメントも
「作画、映像美、ストーリーすべて最高でした。戦うシーンは本当に歴代級」
「これを見なければ 人生の半分を後悔することになります」
「映画を見て泣いたことがほとんどないのに、煉獄さん‥愛してます(泣)」
「40代のオヤジですが、劇場で涙を流してきました」
「アニメを普段見てない人なのに、唯一原作の完結まで探させてくれた作品。コミックも感動的だったけど、アニメ化された作品は作画がすごくて没頭度も良かった! 次のエピソードのアニメ化をどのように待つべきか」
「コミックとして表現された演出の限界をアニメが飛び越えています」
「コミックで見た時に想像した声と違って不思議だったけど、各キャラクターの演技に感動を受けました」
「強い者は弱い者を守ってあげなければならない。この短い一言を117分間も守っていく姿から涙が出た」
など、日本の鬼滅ファンも共感するような称賛の声ばかりが届けられている。
一昨年(2019年)、日本による韓国への輸出厳格化措置に反発するため、日本製品不買運動が発生した韓国。ターゲットにされたのは、日本産のビールやユニクロの衣料品、日本への旅行などだ。
政治的な理由から日韓関係にこのような冷ややかな空気が流れていたことを記憶している方も多いだろう。
しかし、今回の『鬼滅の刃』の驚異的なヒット、そして観客からの称賛の声を見れば、冷ややかな状況も終わりを迎えているように見える。
コロナ禍で無ければ、もっと多くの観客を動員し感動を届けていたとも予想され、また、これまで続いてきた不買運動を終わりへと導いている、映画『鬼滅の刃』。このような素晴らしいコンテンツは、政治的であり回顧的な思惑とは関係ないようだ。
これを機に、劇場街とともに日韓関係にも再び春のような暖かさに包まれることが期待されている。
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