• 映画『勝負』でユ・アインが共演の大先輩イ・ビョンホンの前で寡黙を貫いたのは、役作りの一環だったようだ。
  • 本作は囲碁界の師弟関係とライバル関係を描き、公開までに4年を要した。
  • ユ・アインの沈黙は「石仏」イ・チャンホを演じる上での内面的な準備だったと評価されている。

画像出典=©BY4M STUDIO

韓国映画『勝負』が、韓国国内興行収入ランキングで初登場1位を記録し、話題を集めているようだ。

本作は、韓国囲碁界における伝説的な二人――チョ・フンヒョン(趙治勲)とその弟子イ・チャンホ(李昌鎬)との関係を描いた作品であり、劇中でこの二人を演じたのがイ・ビョンホンとユ・アインである。

イ・ビョンホンはインタビューの中で、二人の人物像について「チョ・フンヒョンが攻撃的で思ったことをはっきり言うタイプなら、イ・チャンホはまるで石仏のように沈黙を守る人物だった」と語っており、そのキャラクターの対比がスクリーン上でも明確に表現されているという。

その一方で、現場でのユ・アインの姿について、イ・ビョンホンは「撮影中は寡黙で、ほとんど口をきかない人だった」と振り返っている。

一見すると、芸能界の大先輩を前にして礼を欠いたようにも見えるその態度は、状況によっては不遜ともとられかねないものだったのかもしれない。

だがイ・ビョンホンは「今になって思えば、それもすべて役作りの一環だったのだろう」と理解を示し、「イ・チャンホというキャラクターを作るために、現場でも感覚を失わないようにしていたようだ」と語っている。

ユ・アインにとって『勝負』は、演技人生において特別な意味を持つ作品であるはずだった。しかし、その後に発覚した薬物吸引事件によって、完成から約4年もの間、公開の目処が立たないという困難な状況に陥った。もともとはNetflixを通じて公開される予定だったが、最終的には映画館公開という形でようやく日の目を見た。

イ・ビョンホンもこの点に触れ、「映画に参加したすべての人が『もしかしたらこのまま公開されないのでは』と苦しんだと思う」と述べており、特に「監督が一番大変だったのではないか」と語っている。そして「何よりも監督の笑顔をとても見たかった」という言葉からは、作品の公開がもたらした安堵と喜びが感じられる。

『勝負』の劇中で描かれるのは、師匠でありながら最大のライバルでもある二人の対峙である。

かつて韓国囲碁界を背負って立ったチョ・フンヒョンと、彼の背中を追いながらもやがて追い越していくイ・チャンホ。実際のイ・チャンホは、14歳で国内タイトルを獲得し、メジャー世界大会では17回の優勝を果たすなど、その功績は囲碁界の歴史に刻まれている。

彼に与えられた「石仏」という異名もまた、その風格を象徴するものだ。

慎重で揺るがぬ打ち筋、感情を表に出さぬ静けさ。中国トッププロ棋士である常昊(Cháng Hào)は「韓国のすべての棋士を倒しても、イ・チャンホが残っていれば、そこからが本当の勝負だった」と語っており、AlphaGo(人工AI)と戦った事で知られるイ・セドル棋士は「囲碁の神のような存在だった」と評しているという。

このような人物を演じるにあたって、ユ・アインが現場で寡黙を貫いたという事実は、単なる偶然ではないようだ。作品の完成度を高めるために、言葉を控え、静かに役を内面化していく。その態度は、まさに「石仏」のごときイ・チャンホの存在と重なっていたのかもしれない。

映画『勝負』は、華やかな勝敗の物語ではない。師弟という関係のなかに潜む葛藤、尊敬と嫉妬、そして乗り越えられぬ影に挑む静かな闘志を描いている。演技に沈黙を重ねたユ・アインの姿勢は、その物語の奥深さを支える、もう一つの勝負であったのかもしれない。


映画『勝負』公式予告編




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