ドラマ人気のバロメーターの1つとして、視聴率が挙げられる。しかし最近、韓国では話題性はあるものの、それが数字に結びつかないという現象が起きている。それは一体なぜなのだろうか。
一般的な日本人の思う”韓国ドラマあるある”と言えば”復讐・記憶喪失・腹違いの兄弟”など、ドロドロした内容を思い浮かべる人が多いだろう。
そして現在の韓国でも、それらのジャンルは変わらず人気である。最近で言えば、JTBC『スカイキャッスル』『夫婦の世界』、SBS『ペントハウス』などが高視聴率をマークしている。

放送されるたびに最高視聴率を更新している『ペントハウス』。(画像出典:SBS)
泥沼系ドラマは”マクチャンドラマ”と呼ばれ、いわゆる非日常的な出来事が展開される物語を指す。日本で『水戸黄門』が予定調和でも人気があるように、お決まりのパターンであっても、ついつい観てしまうのが”マクチャンドラマ”のようだ。
これらのドラマは、日本で放送される機会が比較的少ない。その理由として、出演者の知名度や人気度が日本では低いためとも言われている。日本を含め、海外で放送される韓国ドラマは有料チャンネルが多く、スター俳優の名前が少なくとも1人はいなければ、宣伝効果や視聴率が見込めないからである。
しかし韓国では最近、先に述べたような作品が好調な一方で”人気俳優出演作=高視聴率”とはならない現象が起こっている。

パク・ボゴムの入隊後に放送が始まったtvN『青春記録』。(画像出典:青春記録 公式Instagram)
俳優のパク・ボゴムが今年8月に入隊し、その1週間後に放送がスタートしたtvNドラマ『青春記録』は、パク・ボゴム入隊前最後のドラマ出演作であることや、映画『パラサイト 半地下の家族』で一躍アカデミー女優の仲間入りを果たしたパク・ソダムが、約4年ぶりにドラマ出演するという触れ込みで、放送前から注目を集めていた。
『青春記録』の視聴率は、tvNとしては悪くない数字であり、同時間帯ドラマの視聴率としては常にトップを走っていた。しかし、同じチャンネルで爆発的ヒットを放った『トッケビ』(2016)や『愛の不時着』(2019)の視聴率を思えば、彼らの知名度に対して満足のいく数字ではなかったように見える。
また、現在放送中のtvNドラマで、miss A出身のスジとナム・ジュヒョクが主演を務める『スタートアップ』の視聴率も、全国基準で4%(ニールセンコリア)を行ったり来たりして、伸び悩んでいる。

現在tvNとNetflixで同時放送中の『スタートアップ』。(画像出典:tvN)
一体それはなぜだろうか。
ある韓国の報道によると、各家庭のテレビのチャンネル権を握っているのが、40代~50代の女性だという。仕事を終えて帰宅し、食事してひと段落した時間に、リアルタイムでドラマを視聴するようだ。対してその世代以下はというと、ほとんどがOTT(通信コンテンツ)に移行していると推測されている。
ここで、日本と大きく違う点がある。それは”録画文化”だ。日本では、テレビそのものが”番組全録画”してくれるという機能が充実しており、近年はもはや視聴率より、録画率のデータの方が有用性があるとも囁かれている。

昨年は『椿の花咲く頃』で地上波ドラマ復活の声も聞こえたが…。(画像出典:KBS2)
対する韓国は”録画文化”に乏しく、ほとんどの番組がネットで視聴できてしまうそうだ。そんな環境も、視聴率に影響を及ぼしている要因のようにも思えるため、視聴率が消費パターンを反映していないのではという懐疑的意見も増えているようだ。事実、近年スター俳優の出演作はNetflix(ネットフリックス)で、世界同時配信という流れができ始めており、若い世代はいつでも観られるネット配信を好んでいる風潮だ。
とは言え、やはり地上波ドラマは幅広い年齢層の視聴率を必要としているわけで、今後若年層の心をつかむ作品作りが、大きな課題となりそうだ。
パク・ボゴム
2011年映画『ブラインド』でデビュー。
以降、映画『コインロッカーの女』(2015)、ドラマ『君を憶えてる』(2015)などに出演。
『恋のスケッチ~応答せよ1988~』(2015-2016)で天才棋士チェ・テクを演じブレイク。2016年8月より放送されたドラマ『雲が描いた月明り』で地上波初主演を果たし、爆発的人気を得る。
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