- VOD(動画配信サービス)利用者が増え続け、韓国では“テレビ離れ”が加速している。
- これまでテレビドラマの人気を支えていた中高年世代も、最近はスマホでドラマを楽しむ人が急増中。
- 視聴率低下に頭を抱える地上波のテレビ局は、ドラマ枠の編成を減らすなど対策を取り始めている。
日本同様、韓国でも“テレビ離れ”が加速している。
その影響が顕著に表れているのが、テレビドラマの視聴率。韓国ではVOD(動画配信サービス)でドラマを楽しむ人が多く、最近は視聴率1桁のドラマが大半となっている。
そのため、視聴率2桁を達成した作品は“まぁまぁ成功”、20%を超えれば“大成功”に分類されるという。
これまでテレビドラマの人気は、中高年世代が支え、視聴率もそこまで低くはなかった。
しかし、2020年のコロナ禍以降、テレビではなくスマホでドラマを見るようになった、お父さんお母さんが激増。
上半期に大ヒットしたNetflix(ネットフリックス)オリジナルシリーズ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』など、配信でしか見られない作品が増えていることもあり、“テレビドラマ離れ”が進み、視聴率確保に苦戦するテレビ局が増えているのだ。
この状況を、韓国メディアのエコノミスト(Economist)が、『“毎日Netflixだけを見るママとパパ” OTT視聴、中高年の年平均60%ずつ増加』という見出しで報じている。
紹介されている情報は、韓国のクレジットカード大手BCカードの新金融研究所が、2019年1~5月から2023年1~5月までの計5年間のOTT・映画館および公演場業種で発生した売上データを分析した結果で、中高年層顧客のOTT使用は、年平均60%ずつ増加しているのだという。
この5年間でOTT利用顧客は4倍増加、COVID-19が頂点に達した昨年(2022年)は、2019年に比べ4.5倍近く増加したことが確認された。
また、ここ数年間で成長したOTTサービスの主な利用顧客層にも変化が見られる。
2019年当時、72%を占めていた若いMZ世代は今年に入って55%まで減少。一方で、中高年層の割合は45%まで上昇した。
売上高も同様で、2019年対比2023年のMZ世代の売上高は3.7倍の上昇に留まった反面、中高年層では7.7倍増加している。
中高年層のOTT使用は今後も増え続け、“テレビ離れ”がさらに深刻化すると予想されている。
しかし、OTT台頭による、テレビドラマ不振の状況は思った以上に深刻のよう。韓国の地上波3社は「水木ドラマ」を廃止するなど、すでにドラマ枠を減らす措置を取り始めている。
6月21日には、SBSが「月火ドラマ」の編成を暫定中断することが明らかになった。
韓国メディアのSPOTV NEWSは「ドラマ編成の中断には、巨大な製作費に比べて効率が落ちるというSBS内部の計算があった」と報じている。
SBSは、5月16日に放送を終えた『コッソンビ熱愛史(2023)』を最後に月火ドラマ枠を暫定的に止め、当初この枠での編成が有力だった新ドラマ『国民死刑投票』を、木曜日編成に変更した。
同ドラマは、8月10日の1、2回連続放送を皮切りに、毎週木曜日午後9時の週1回放送の予定が組まれた。
SBS側は「週1回、密度の高い編成で、より強力な没入度で視聴者を魅了する見通し」と伝えている。
ただし、「月火ドラマ」が完全に廃止されるわけではないよう。
当分の間、“プライムタイム”である月火の夜の時間帯は、バラエティーが引っ張っていくが、状況によっては流動的にドラマが復活する可能性もあるという。
SBSドラマでいえば、今年上半期に放送された『模範タクシー2』は好評で、最終回の視聴率は21.0%と自己最高記録を更新した。
しかも、全話を通して、視聴率が2桁を切ることもなかった。つまり、“ヒット作”として認められる立派な数字である。
それでも、局としてドラマ枠を減らすという対応を見ると、それだけテレビドラマ全体の人気が低迷しており、収益が得られない厳しい状況であることを想像させる。
SBSの新ドラマ『国民死刑投票』は、パク・ヘジン、パク・ソンウン、イム・ジヨンといった実力派俳優が揃う期待作。
若者だけではなく、お父さんお母さん世代の“テレビ離れ”も加速し、韓国の地上波ドラマの力が弱まっている中、週1回放送という編成は功を奏するのだろうか。テレビドラマの奮闘に注目だ。
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