- 韓国では、平均視聴率が20%超えでも「大コケ」とされるドラマ枠がある。
- 約40年間、お茶の間の喜怒哀楽を描いてきたKBS週末ドラマは、数々のヒット作とスター俳優を輩出してきた。
- 最近では、似たような泥沼ストーリーが繰り返され、陰りが出ているという。
韓国ドラマファンにとって、本国の視聴率は気になる指標の1つだろう。
数多い作品の中で「次に観てみたいリスト」作成に参考になるためだ。
ただし「本国で高い視聴率=面白いドラマ」という公式が成り立たない場合も多く、日本人が選ぶ名作ドラマのランキングには、本国では1桁視聴率で幕を閉じたドラマがランクインしているケースも少なくない。
2020年、日本で一大ブームとなったドラマ『愛の不時着』も、本国では平均視聴率12.9%、最高視聴率23%と、決して国民的ヒットドラマとは言えない。
近年は、日本のファンの間でも、韓ドラの“視聴率事情”は、広く知られおり「第1話が5%超えだと、好スタート。平均視聴率2桁だと成功、最高視聴率20%超えだと、大ヒット」と認識する人も多いようだ。
ということで、前出の『愛の不時着』は、大ヒットドラマとカテゴライズされている。
平均視聴率27.5%が大コケ?
しかし、平均視聴率が20%超えでも「30%を超えていない」と、あたかも惨敗に終わったような扱いをされるドラマ枠がある。
KBSの週末ドラマ枠(土・日/夜8時~)だ。
3月19日、同枠で最終話を放送したドラマ『三兄弟が勇敢に』の視聴率は27.5%。全51話の平均視聴率22%で、世間一般的に言う“大ヒット作”である。
他局のドラマであれば、お祭りムードに包まれるほどの高視聴率であるが、何故かKBSでは、最終成績表に泣き顔になっているというのだ。
ましてや韓国メディアも「KBS週末ドラマが30%の壁を超えられなかった」「続いている不振」「コンクリート視聴率にひびが入った」など、祝福はおろか、不安を煽る見出しを掲載している。
一体なぜ、20%台の視聴率という結果と向き合うKBSの雰囲気は、他局とは違うのだろうか?
約40年の歴史を持つKBS週末ドラマ
KBSにも、20%という視聴率は決して簡単に達成できる数字ではない。
しかし、この週末枠だけは違った。
1980年9月にスタートし、約40年間、お茶の間の喜怒哀楽を描いてきた同枠は、数々のヒット作とスター俳優を輩出してきた。
韓国ドラマ史上最高視聴率、65.8%を叩き出したドラマ『初恋(1996)』も同枠で放送された名作ドラマである。
本作に出演したぺ・ヨンジュンとチェ・ジウは、以降韓国を代表する人気俳優へとステータスアップに成功する。
他にも、視聴率40%を超えるヒット作を多数手がけ、名実ともに、韓国ドラマの最高峰として君臨してきた。
2010年以降、テレビ局全体が低迷期を迎えるも「30%は保証されている」と言われるほど、健在ぶりを見せ続けていた。
KBS週末ドラマ、高視聴率と陰りのワケ
ではなぜ、ここまで高い視聴率をキープできたのだろうか。
その理由は、KBS週末ドラマのターゲットが、中高年女性であるため。かねてより「週末夜のリモコンはお母さんが握る」と言われる韓国では、40代以上の女性向けの“泥沼劇”が高い人気を博してきた。
同枠は、財閥の横暴、記憶喪失、出生の秘密、裏切り、不倫、夫婦問題など、泥沼劇に欠かせない要素を駆使し、中年女性の“怒り”と“嘆き”を引き出してきたのだ。
しかし近年、似たような泥沼ストーリーが繰り返され、新鮮味が落ちはじめたのが、同枠に陰りが出た原因として挙げられる。
また、長編ドラマであるため、陳腐なストーリー展開や、多すぎる登場人物が、ドラマへの没入感を落としているとの分析も。
とはいえ、週末の夜になると、習慣のように、KBSにチャンネルを変える中高年女性が多い限り、しばらく20%台の視聴率はキープしていくと思われる。
『三兄弟が勇敢に』の後続作は、アン・ジェヒョン、ペク・ジニ主演の『本物が現れた(3月25日放送スタート)』。シングルマザーと、非婚主義者の男性が交わした偽ロマンス契約を巡るファミリードラマである。
KBS週末ドラマは、『三兄弟が勇敢に』で体得した教訓を生かして、過去の栄光を取り戻す事ができるのだろうか。
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