爆発的なヒットとなった韓国ドラマ、ENA(Netflix)ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』。ドラマの話題に加え、本作を通じて”ドラマの制作費”にも注目が集まった。トップスターの出演や海外ロケもなかった作品であるが、その制作費は莫大な金額だという。その理由を韓国メディアが興味深くまとめていたので紹介したい。
去る18日に最終回を迎えた、ENA(Netflix)ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌(以下、ウ・ヨンウ)』。早くもインターネット上では”ウ・ヨンウロス”の声が聞かれている。
世界規模の人気を誇ったドラマだけに、その制作費も気になるところ。
韓国ドラマと言えば、日本とはけた違いの制作費がかかることでも有名だが、近年、その額は天井知らずに跳ね上がっているという。
現在のドラマ制作費について、韓国メディア・韓国日報に興味深い記事があったので紹介したい。
同メディアによると、韓国ドラマの平均制作費は、2022年現在、120億ウォン(約12億円)台(1話当たり7億5000万ウォン(約7千600万円)/16話基準)と言われてる。
そのような中、『ウ・ヨンウ』の制作費は、それを上回る150億~200億ウォンの費用がかかったという。これは日本円に換算すると、15億円から20億5000万円という莫大な金額だ。
ソン・ヘギョやソン・ジュンギといった韓流スターが出演し、ギリシャをはじめ海外撮影が行われた、ドラマ『太陽の末裔 Love Under The Sun(2016)』の制作費が130億ウォン(約13億円)であったことをみれば、『ウ・ヨンウ』がいかに高額なのかが分かる。
ドラマを企画する業界関係者によると「『ウ・ヨンウ』には1回当たりの出演料が億単位である韓流スターが出演しない」とし「それほど最近のドラマ制作費が全般的に上がっている」とのことだ。
制作費急騰!? その背景にあるものとは
同メディアによると、制作費の上昇要因は多様だという。 俳優の出演料をはじめ、労働環境改善によるスタッフ人件費の値上げ、さらにコンピューターグラフィック(CG)等の強化による作業費などが増えた。
これを受け、今年下半期以降は200億ウォン(約20億円)以上が投入された作品が相次いで公開される予定だ。
来年にシーズン2の放送を予定しているtvN(Netflix)『還魂』をはじめ、9月に公開されるNetflix(ネットフリックス)新シリーズ『スリナム』、秋以降に放送予定のKBS『カーテンコール(原題)』、JTBC『財閥家の末息子』、そして400億ウォン(約41億円)規模で製作される、tvN『星たちに聞いてみて』などだ。特に、Disney+(ディズニープラス)で放送される『ムービング』は500億ウォン(約51億円)を投入したとし、話題になった。
これを見ると、NetflixやDisney+など、グローバルOTTの国内進出で市場が大きくなり、ドラマ制作費も一緒に跳ね上がったという背景が分かる。『ウ・ヨンウ』をはじめ、韓国ドラマは今、リアルタイムで楽しめる時代だ。その需要とのバランスも関係しているのだろう。
地上波が真似できない理由
この一方で、地上波放送局はこの波に乗ることが難しいよう。
特に、公共放送であるKBSは、国民からの受信料で制作費を捻出している。その為、企業とタッグを組み、スポンサーとすることは難しい。よって、ケーブルチャンネルのような莫大な金額を投入することは出来ないだろう。
最近の話題作を見ると、多くを占めているのがtvNやJTBC、ENAといったケーブルチャンネルで放送されたもの。制作費はもちろん、自由な戦略を組めることで、人気作を多く輩出しているのではないだろうか。
韓国日報の記事によると、KBS副社長は「『ウ・ヨンウ』が大ヒットしているが、そのようなドラマを私たちはできない」とし、「高すぎる制作費により、SBSでも抱えることはできずに返したと聞いている」と話しているそうだ。
『ウ・ヨンウ』は当初、SBSで放送される予定だったが、最終的にはケーブルチャンネルENAで編成された。ENAの親会社が『ウ・ヨンウ』を買収するため、132億ウォンを賭けたという。
これが結果的に大きな成功を収めることになり、ドラマ制作費の上昇傾向は当分続く見通しだと、同メディアは見解を示している。
上昇傾向を懸念する声も‥
だが、制作費の急騰を懸念する声も聞かれている。
制作費上昇と共に、幅を利かせた市場価格が果たして適切な金額なのか、国内市場が受け入れられる規模なのかを考慮しなければならない、というのが理由だ。
しかしこの一方で、韓国のドラマ制作費はアメリカに比べて1/5にも満たない水準だとの声も聞かれている。
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韓国日報が報じた”ドラマ制作費”急騰の理由。同メディアは「多くのお金が投入されれば、SFなどドラマジャンルの多様化と高まった完成度を期待できるが、プラットフォーム業者間の過多競争で制作費バブルが発生し、後遺症を産む恐れがあるという憂慮も出ている」と語っている。
人気作が誕生した一方で、重い課題も残してしまったようだ。
(構成:星野沙)
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