Netflix(ネットフリックス)にて配信中のドラマ、JTBC『グリーン・マザーズ・クラブ』。このドラマは、”ママ友”という不思議な関係を背景に、究極的な女性たちの友情を描いている。視聴者が見慣れてきた、親たちの教育熱や女性キャラクターらが殴り合う非論理的な世界ではなく、私たちの身近にある”現実”そのものを描き出している。そこから見えてきたもの、それはママ友という世界にある”序列”と”虚像”だ。
Netflix(ネットフリックス)にて配信中のドラマ、JTBC『グリーン・マザーズ・クラブ』。
最終回(5月26日)を目前に控え、韓国だけでなく日本でもじわじわと人気を集めている。
『グリーン・マザーズ・クラブ』は、”緑の母の会(旗振り当番)”という小学校コミュニティーの素顔と、その保護者の危険な関係を描いたドラマ。主な保護者役を韓国の実力派女優たちが務め、それぞれ教育観や育て方、環境の異なる母親役を演じている。
韓国ドラマのお家芸ともいえる題材をベースに、私たちの身近な問題を浮き彫りにしてくれた本作。
そこには、生々しい程に”ママ友”という不思議な関係の”序列”と”虚像”が描かれていた。
ママ友の序列を決めるのは、子どもの成績
まずは、ママ友の序列だ。
ストーリーを辿ると、どうやら自身の”ステータス”でその序列が決まってしまうようだ。
それは主要キャラクターらが住む”家”からして、すでに神経戦は始まっている。
マンションの上層階、いわゆるペントハウスに住む人。
彼女の住まいは、数多くある部屋はどれも広々とした間取りだ。さらに開放的な窓からは街を一望でき、夜になれば輝くような夜景を独り占めにできる。
一方、その階下に住む人は、広くきれいな部屋であるものの、見慣れた間取りで親近感の湧く家だ。
つまり、彼女たちが住む”家”は、その人の人生そのものを現わしている。
だが、子どもが生まれると、そのステータスを築くものが”子ども”へと移っていく。
彼女たちが欲しがるものは、子どもの優秀な成績だ。子どもを介して出会った”ママ友”界の序列は、自身のあれこれではなく、子どもの成績ですべてが決まってしまう。
ママ友コミュニティーが創り出した、虚像
本作の主人公イ・ウンピョ(イ・ヨウォン)を見ると、それがよく分かる。
ウンピョは、自己感情を表現できなかった人物だ。
そのためか、社会生活で無駄足を踏む場合が多い。急発進してはならない瞬間に急発進し、肝心な時に尻込みしてしまう。
また、自分の信念が強いようだが、絶体絶命の危機に長男であるドンソクを前面に出す。
ドンソクは数学オリンピックをはじめ、さまざまな数学競技大会で1位を席巻する天才児。そのおかげで彼女は、ママ友界のトップに君臨し、”教育の第一人者”として羨望の眼差しを浴びることになる。
しかし、彼女も他の母親のように、ドンソクの持つ心の声に耳を傾けられない。彼の成績にばかり目が行き、子どもがどれほどの苦しみを抱えているのか、求めているものが見えなくなってしまった。その結果、ドンソクは失語症にかかってしまう。
他人から見ると、子どもの成績がグンと伸びる様子から、ケアが万全に出来ている良い母親に映るだろう。しかし実際は、子どもの心には耳を傾けずに、ただ彼らを追い詰めてしまっている。
傍から見ると完璧に見える、そんな母親の姿こそ、まさに虚像と言えるだろう。
子どもの成績はもちろん大事だ。彼らの将来を豊かにする手段の1つでもある。
しかし、子どもの成績ばかりを見ることが、果たして”子育て”と言えるのだろうか。
もちろん、子どもの成績が上がることは純粋に嬉しい事であるだろう。だが、それと同時に、母親の持つ「ママ友という世界で認められたい」という欲求が、このような結果を招くようになったのでは‥?
主人公の行動こそ、ありのままの現実そのもの
ある事件をきっかけに、第1人者の虚像が明らかになり、ドラマは引き続きすべての人物の虚像が現れる。
しかし、思ったよりもストーリーはスッキリとしていない。
よくある展開であれば、主人公が何かを解決したり悟るなどし、ストーリーの鍵を握って走っていただろう。
だが、彼女は結局何もしていない。主人公でありながら主人公の役割を果たすことなく、ありのままを受け入れる姿を見せた。
これこそが、私たちが生きている”現実”そのものの行動ではないだろうか。
子どもの成績をはじめ、夫の職業、住んでいる家。これらで、”ママ”となった女性のステイタスが決まってしまうことも、現実世界そのもののようだ。
本作は、母親たちの教育熱だけを扱う明らかな話ではない。究極的に女性たちの友情を描いているが、その方式が視聴者たちに慣れている優しいヒューマニズムでもない。
遠くから見れば”ママ”ヒューマニズムかもしれないが、その中に深く入ってみると、見知らぬ人との微妙な神経戦と決してばれたくない人生の憂鬱さが隠されている。
韓国や日本で見られる学歴社会で子育てをする母親にとって、本作は身近なエピソードであり、深く共感できるストーリーのように思う。
(投稿:星野沙)
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