俳優のチソンが主演を務めるtvN『悪魔判事』が、最終回で最高視聴率を記録し有終の美を飾った。称賛を浴びるその一方で、視聴者からは様々な意見が寄せられている。放送前から話題性も高く、スカッと痛快な展開を期待していた視聴者たちは、ストーリーが展開にしていくにつれ少々物足りなさを感じてしまったようだ。その理由とは。
俳優のチソンが主演を務めるtvN『悪魔判事』が、今月22日に最終回を迎えた。最終話となった第16話では最高視聴率(全国平均7.9%)をマークし、有終の美を飾った。
このドラマは、仮想ディストピアの韓国を背景に、全国民が参加するライブ法廷ショーを通じて、正義に対するメッセージを投げかけるストーリーだ。ここに登場する悪魔判事、カン・ヨハンのエピソードを描いている。
チソン演じるカン・ヨハンは、人間を平等に忌み嫌う示範裁判部の裁判長だ。仮想ディストピア”韓国”の最もホットなスター判事で、貴族的な外見と優雅な趣きを持つ彼には、常に”大富豪の悲劇の相続者”という肩書が付いてまわり、ミステリアスな雰囲気を呼び起こしている。
悲惨な幼少時代を経験した彼は、自分に”やり返す力”があることを悟り、10年間本能を抑えながら、誠実で優秀な判事の仮面をかぶって生きてきた人物だ。
そんなカン・ヨハンは、みんなが望むヒーローなのか、それとも裁判官の仮面をかぶった悪魔なのか。
彼を軸に、ストーリーは痛快さを持って展開され、いま韓国で人気の”サイダードラマ”として注目を浴びていた。
“サイダードラマ”とは、主人公が痛快なやり口で巨悪を倒していくもの。サイダー飲料を飲んだ時のような”スカッと”感を味わえる作品のことをいう。
最近で言えば、俳優のソン・ジュンギが主演を務めた大ヒットドラマ、tvN(Netflix)『ヴィンチェンツォ』がそうだ。
『悪魔判事』は放送以前、あらすじから”第2のヴィンチェンツォ”との呼び声が高かった。
まるでコミックのようなファンタジー要素が高い設定、トップスターが演じる魅力的なキャラクター、さらにストーリーには痛快なひねりが加えられていることなど、2作品にはいくつもの共通点があったからだ。
しかし、共通していない点が1つだけある。それが、作品の”人気”だ。
Netflixで配信されていた効果ももちろんあるが、『ヴィンチェンツォ』は韓国でも最高視聴率16.5%を記録し、動画配信サービスのランキングでは上位の常連になるなど、国内外で高い人気を博していた。
一方、『悪魔判事』は、国内で話題性と確実な人気を得ているものの、『ヴィンチェンツォ』には及ばなかった。
なぜ”第2のヴィンチェンツォ”になれなかったのか。
まず、「現実性がない」という批判だ。
『悪魔判事』は、アメリカのように3桁にまで及ぶ懲役が存在することや、シンガポールのようにむち打ちの処刑が存在し、裁判が視聴者投票バラエティー番組のように行われるなど、韓国の現実とはかけ離れた仮想のディストピア世界観を扱っている。
このようなドラマの特性上、「現実性がない」という批判を避けることは不可避だろう。だが、これに加え、法廷ドラマの仮面をかぶった代理満足ファンタジードラマという評価が続けられている。
次に、後半に入ってからは展開に対する意見も見られている。
だらだらとした展開で蓋然性も落ちており、もどかしい展開だという意見だ。シーズン2の制作を前提にしたのか、悪役たちの結末と関連した敍事(ストーリーテリング)を曖昧に解いているうえ、劇中の主要キャラクターたちの敍事についても批判的な意見が寄せられてしまった。
視聴者掲示板やSNSなどでは「シーズン制の可能性を生かしておくのもいいが、テーマ意識の説得力と劇的な完成度を最優先にすべきではないか」といった展開に対する批判の声が多く見られている。
序盤から中盤まではテーマ意識とメッセージ伝達に集中していた劇的な展開が、しきりに後続作の制作の余地を残そうとしたため、曖昧にこじれてしまったという評価のようだ。
ある専門家は、シーズン制を意識した結果、”サイダードラマ”にしては痛快感が薄れてしまったという分析をしている。
なかなか手厳しい意見が揃ってしまったが、シーズン2が制作されるのであれば、本作以上に”スカッと”させてくれる内容であることを期待したい。
『悪魔判事』1話予告(動画出典:YouTube tvN DRAMA)
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