ENA(Netflix)ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で、主人公ウ・ヨンウの父親役を演じた俳優のチョン・ベス。これまで数多くの作品に出演してきたベテランであるが、本作での演技は「難しかった」と語る。自閉スペクトラム症である娘、ウ・ヨンウとのシーンで、彼が感じた“困難”とは。
惜しまれつつも幕を閉じた、ENA(Netflix)ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌(以下、ウ・ヨンウ)』。
放送がスタートした当初0.9%だった視聴率は、第9話で15%を突破する飛躍的な曲線を描いた。さらに、7週連続で韓国のテレビ話題性ドラマ部門の1位を占めただけでなく、主演俳優のパク・ウンビンとカン・テオが、出演者部門の話題性で最上位圏を維持。
共演者のカン・ギヨン、チュ・ジョンヒョク、ハ・ユンギョンも名を連ねた。
これに加えて、Netflix(ネットフリックス)のグローバルランキングで2位、非英語圏ドラマ部門で週間視聴時間1位を記録。シンドローム級の人気を得た本作は、シーズン2への期待につながるほどの大成功を収めた。
世界中を熱狂させた本作の中で、どんな状況でも娘のことを真っ先に考える父親、ウ・グァンホ役を引き受けた俳優のチョン・ベスが、韓国メディア・10ASIA(tenasia.hankyung.com)とのインタビューで、『ウ・ヨンウ』を次のように振り返っている。
「まるで壁に向かって話しているようだった」演技の難しさを実感した瞬間
チョン・ベスが演じたウ・グァンホなるキャラクターは、大学の法学部に通う前途有望な学生から未婚の父という険しい道を選んだ人物。彼は常に娘のことを思い、ウ・ヨンウのためなら何でもする惜しみない愛情を見せた。
そんな“親バカ”な父親役を好演し、視聴者へ感動を届けたチョン・ベスであるが、演じる上で「難しい」と感じたシーンがあったと話す。
それは、自閉スペクトラム症を持つウ・ヨンウとの会話で声のトーンを決めることだという。
チョン・ベスは「こちらがどんなに感情を込めて話しかけても、ウ・ヨンウは一定のトーンで話す。ワントーンで返されるのは、まるで壁に向かって話しているようだった」と言い「カメラの配置を変えて、同じシーンを撮る時、自身のトーンの見当がつかなくなった」と説明し、演技面での難しさを語った。
一方で、大学の後輩でありウ・ヨンウの勤める法律事務所の代表、ハン・ソンヨン(ペク・ジウォン扮)や、ウ・ヨンウの実母であるテ・スミ(チン・ギョン扮)とのシーンでは、感情のキャッチボールができるため、自然な演技が楽にできたという。
つまり、パク・ウンビンがウ・ヨンウを完璧に演じ切っていたからこそ、彼は困難を極めてしまったようだ。
キャラクターになりきるため、彼がしたこと
そのような中、チョン・ベスはいつの間にか”ウ・グァンホ”に憑依され始めた。
彼は当初、”自閉症を持つ子を育てる父親の心境はどのようなものか”ということを想像をし、キャラクターと向き合っていた。実際に演技をしてみると、本当に壁と会話するような感じを受け、彼はウ・グァンホの心に共感するようになったという。
役を演じるにあたり、自閉症の子どもを育てる親に会ったりもしたそうだ。障害を持つ子どもを育てる親たちはみな、余程のことではびくともしない”非常に強い人間”だと感じたという。そうでなければ、この社会で我が子を育てることはできないからだろう。チョン・ベスが演じたウ・グァンホも、彼らと同じく”親の強さ”を感じさせるキャラクターだった。
難しい内面の演技に加え、”海苔巻き屋”としての演技も(?)大変だったと語る彼は、キンパを巻く練習をたくさんしたという。
キャラクターになりきるため、あらゆる準備をしてきたチョン・ベス。そのおかげで、父親の愛がふんだんに盛り込まれた作品となったのだろう。
名バイプレイヤーから、愛される”国民の父”へ
これ以前、Netflixオリジナルドラマ『今、私たちの学校は』でも責任感の強い消防隊員であり、娘を男手ひとつで育てる父親役を演じていた。そんな彼は『ウ・ヨンウ』を通じて”国民の父”と呼べる存在となった。
“国民の父”になったことで、彼の周りが賑やかになったそうだ。以前は”ただの町のおじさん”だったが、『今、私たちの学校は』に出演してからは”チョン・ベス大俳優”と呼ばれ、今は”ウ・ヨンウパパ”と呼ばれているという。自宅近くには小学校があるそうで、そこに通う子ども達が遊びに来ることもあるのだとか。
また、小学5年生になる実の娘が通う小学校でもドラマは大人気だという。『ウ・ヨンウ』を見ないと学校での会話についていけず、放送日はドラマのために宿題を早く終わらせる子が多いそうだ。
大人だけでなく子どもも魅了した『ウ・ヨンウ』。チョン・ベスは人気の理由を「全体的に軽快で簡潔、テンポもよく、作為的ではなくセンスがある」とし「それぞれのキャラクターが主人公たちをサポートするのではなく、個性があり、エピソードとして出てくる方々も演技がとても上手だ」と語っている。
視聴者から見れば、まさにそれがチョン・ベスだと思うはずだ。彼こそが、ドラマを成功に導いた張本人でもあるのだから。
(構成:星野沙)
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